第2426回 最後の王座を逃したフランス(8) シングルスはジョー・ウィルフィールド・ツォンガとジェレミー・シャルディ
7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■決勝後はリールのピエール・モーロワ競技場
4か月前のサッカーワールドカップと同じ顔合わせとなったフランスとクロアチアの決勝、これが両国の3回目の対戦となる。最初は2004年のワールドグループ1回戦、メッスで行われた。この時はフランスが4勝1敗と勝利するが、2回目の対戦は前回の本連載で紹介したとおり、2年前の準決勝である。クロアチアが接戦を制して3勝2敗で決勝に進出している。そして3回目の対戦はフランス国内で試合が行われる番である。フランスは迷うことなくリールのピエール・モーロワ競技場を指定、サーフェスはクレーである。
■クロアチアをリードするマリン・チリッチとボルナ・チョリッチ
クロアチアの選手構成はシングルスのマリン・チリッチとボルナ・チョリッチがチームを牽引する。ナンバーワンのチリッチは30歳、4年前の全米オープンの決勝で錦織圭を下したことは日本のファンの皆様には記憶に新しいであろう。現時点でATPランキング7位、今年の年頭には3位という自己最高位を記録している。今回がデビスカップチームに25回目の選出であり、1回戦のカナダ戦には出場していないが、準々決勝のカザフスタン戦ではシングルスで2勝、準決勝の米国戦ではシングルスで1勝1敗という戦績を残してきた。
チョリッチはまだ22歳、ATPランキングは現時点が自己最高の12位という伸び盛りの選手である。今年はデビスカップは1回戦から出場、カナダ戦ではシングルスで2勝、カザフスタン戦はシングルスで1敗、米国戦はシングルスで2勝しているが、最終第5ラバーをフルセットで制した1戦は単なる1勝以上の価値がある。
一方、ダブルスはカナダ戦はチリッチとイワン・ドディグのペアが勝利、カザフスタン戦はドディグとニコラ・メクティックのペアが勝利しているが、米国戦ではドディグがマテ・パビッチと組んでいるが敗れている。ドディグがダブルスの軸となり、決勝もメクティックとのペアが予想されているが、展開によってはエースのチリッチの出場もある亜もしれない。
■今年初めてメンバー入りしたジョー・ウィルフィールド・ツォンガ
一方のフランス、シングルスにはジョー・ウィルフィールド・ツォンガが今年初めてメンバー入りする。これが20回目のデビスカップチーム入りとなるベテランの経験値に期待しているのであろう。そしてルカ・プイユとジェレミー・シャルディもシングルスのメンバーとなった。またダブルスにはピエール・ユーグ・エルベールとニコラ・マユが入る。
フランスはこの最後の決勝のために3週間の合宿を行い、このシーズンではツアーでは使用されないクレーコートの上で練習を積んできた。この一戦にかけるヤニック・ノア監督の執念が伝わってくるが、それは意外な選手起用にもつながった。
■シングルスにジェレミー・シャルディとツォンガを起用するヤニック・ノア監督
初日のシングルスに起用したのはツォンガとシャルディである。この時点のATPランキングはツォンガが259位、シャルディは40位である。この時点でフランス人選手の上位ランキングを見るとリシャール・ガスケが26位、ガエル・モンフィスが29位、ジル・シモンが30位、ルカ・プイユが32位であり、シャルディはフランス人選手の中でも5番目である。42位のアドリアン・マナリノ、52位のブノワ・ペール、55位にはダブルスプレーヤーのエルベール、84位にはウーゴ・アンベールとフランス男子は9人がトップ100入りしている。ツォンガはフランス男子の中で23番目の選手である。
このように6番目、23番目の選手を選んだのは2人が3週間の合宿の中で最も準備ができているとノア監督が判断したからであろう。先述の通り、クロアチアのシングルスのツートップのATPランキングは7位と12位、フランスは層が厚いとは言っても最高位が26位である。まともに選手をそろえても勝てないと判断したのであろう。
フランスのナンバーワンのATPランキングは40位、これは決勝に進出した歴代のフランスのデビスカップチームで一番低い順位である。ちなみにこれまでの記録は1996年の決勝に出場したセドリック・ピオリーンの21位、スウェーデンのマルモで優勝を果たしたが、「マルモの奇跡」の再現はなるであろうか。(続く)