第2434回 2019年ラグビーワールドカップ展望 (1) 手ごたえをつかんだ6か国対抗
読者の皆様、あけましておめでとうございます。連載を開始して18回目の新年を迎えました。
8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、すべての日本の皆様に激励の意を表します。
本年もよろしくご愛読のほどお願いいたします。
■過去8回のワールドカップですべて決勝トーナメントに進出したフランス
今年最大のスポーツイベントはラグビーワールドカップであろう。1987年開始とその歴史は浅いが、夏季オリンピック、サッカーワールドカップと並んで世界三大メガスポーツイベントと称されている。
個人主義の国フランスとは言われているが、これまでの本連載で紹介してきたテニスのデビスカップ同様、ラグビーのワールドカップにおいてもフランスは代表チームが好成績を残してきた。フランスなど欧州の強豪国の国際試合は冬から春にかけての6か国対抗、ウインドウマンスの6月には南半球遠征、11月には南半球勢を迎えてテストマッチを行う。フランスの場合、これらの成績に比べてワールドカップでは良い成績を残している。第1回大会では決勝に進出し、その後も優勝こそないものの、これまでの8回の大会すべてで決勝トーナメントに進出している北半球で唯一の国である。特に最強チームであるニュージーランドを本大会で2回破ったことは特筆に値する。
■6か国対抗で4年ぶりにイングランドに勝利
しかし、このフランスが今年の秋に日本で行われるワールドカップでは苦戦を強いられるのではないかという悲観的な見方が強い。ワールドカップイヤー最初の連載ということでワールドカップに臨むフランス代表について紹介しよう。
本連載がラグビーについて最後に取り上げたのは第2287回から第2297回までで一昨年の夏の南半球遠征から昨年の6か国対抗の序盤戦までを紹介した。
結局昨年の6か国対抗は全勝優勝したアイルランドに13-15と競り負けて始まり、アウエーのスコットランドにも26-32と惜敗する。マルセイユで行われたイタリア戦には34-17とダブルスコアで勝利し、スタッド・ド・フランスでのイングランド戦には22-16、6か国対抗では4年ぶりの勝利となり、久しぶりにファンは溜飲を下げた。最終戦のウェールズ戦は接戦となり、13-14で惜敗した。結局、この年の6か国対抗はアイルランドが5戦全勝、3勝2敗がウェールズとスコットランド、フランスとイングランドは2勝3敗、イタリアが5戦全敗となった。各種のポイントで勝ち点が決まり、1位アイルランド、2位ウェールズ、3位スコットランド、4位フランス、5位イングランド、6位イタリアとなった。
■接戦を繰り返し、手ごたえを感じたジャック・ブルネル新監督
2位から5位までは僅差であり、フランスも最終戦のウェールズ戦で勝利していれば2位になっていた。フランスは順位こそ下位であったが、他の欧州の国との差は紙一重であり、特にこのところ無敵であったイングランドを破るなど、試合内容に関しては好意的な印象を持つファンも多かった。一昨年は南アフリカ遠征で屈辱的な3連敗を喫し、秋には日本とホームで引き分けるというこれまでにはない悪い成績でギ・ノベス監督が解任された。新監督となったジャック・ブルネル体制が膨らみ、チームは6月のウインドウマンスの戦いに駒を進めた。
■6月にはニュージーランドとテストマッチ3連戦
6月の南半球遠征はニュージーランドとの3連戦である。6月9日にオークランド、16日にウェリントン、23日にダニーデンで3試合を行う。また、テストマッチの間にフレンチ・バーバリアンズというチームとしてクラブチームのクルセイダーズとハイランダースとも試合を行う。ちょうどこの時期はシーズン終了直後である。同じくサッカーもシーズンが終了し、フランスだけではなく世界中のスポーツファンがロシアで開催されるサッカーのワールドカップに注目していたが、代表チーム以外のフランスのラグビーは好調である。まず、欧州のクラブナンバーワンを決める欧州ラグビーチャンピオンズカップでは準々決勝に進んだ8チームのうち4チームがフランス勢、そしてラシン92が決勝に進出し、アイルランドのレンスターに12-15で惜敗している。また、20歳以下のワールドカップがフランスで行われ、フランスは準決勝で南アフリカに勝利し、決勝に進出している。
6か国対抗で手ごたえを感じ、フランスラグビー界も好調な中でファンは代表チームがニュージーランドで素晴らしい試合を見せてくれるのではないかと期待したが、前年と同じ結果になってしまったのである。(続く)