第2438回 2019年ラグビーワールドカップ展望 (5) ベテランをカムバックさせた11月のテストマッチ

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ワールドカップ前最後の欧州勢以外との戦い

 昨年に続き6月の南半球遠征で3連敗となったフランス、ワールドカップまで残された試合は11月のテストマッチ、ワールドカップイヤーになってからは2月から3月にかけての6か国対抗、大会直前の8月のテストマッチだけである。すでにこれらすべての対戦相手と日程が決まっているが、2019年になってからの相手は全て欧州勢である。本大会前に最後に欧州勢以外と対戦することができるのが11月のテストマッチである。

■南アフリカ、アルゼンチン、フィジーと対戦

 11月のテストマッチはすべてフランス国内で行われ、10日にスタッド・ド・フランスで南アフリカ、17日にリールでアルゼンチン、24日にスタッド・ド・フランスでフィジーと対戦する。ワールドカップまで1年を切った11月には本大会を意識した戦いが必要となる。本大会では予選プールでアルゼンチン、米国、トンガ、イングランドと対戦する。アルゼンチンは来年のワールドカップの初戦で戦う相手であり、同じ南太平洋のフィジーは仮想トンガである。そして、南アフリカとの対戦は決勝トーナメントに進出後の対戦相手を考えれば乗り越えなくてはならない壁である。
 11月の3連戦の初戦の相手は世界ランキング5位の南アフリカ、フランスの世界ランキングは9位、米国が12位、トンガが14位であるから、唯一の格上との対戦となる。

■不安を抱えたまま試合を迎えたフランスラグビー界

 ちょうどフランスラグビー界は長年の夢であったトレーニングセンターのメイン競技場を試合の前日にオープンしたばかりである。サッカーのクレールフォンテーヌに相当するマルクシスにピエール・カム競技場が完成し、セレモニーには歴代のフランス代表の名選手が集まり、翌日に試合を控えた代表フィフティーンの練習を不安そうに見守っていた。
 フィフティーンに対する不安は一般のファンも同様であり、週末の試合であるにもかかわらず、スタッド・ド・フランスには5万人しか観客が集まらなかった。

■ベテランのギエーム・ギラド、ルイ・ピカモール、ヨアン・ウジェが復帰

 そして不安を感じているのは指揮官のジャック・ブルネル監督かもしれない。この3連戦のために多くのベテラン選手を復帰させたのである。31人の選手を招集させたが、代表出場歴が10試合以下の選手は15人であり、そのうち2人は代表出場歴のない選手である。一方、30歳以上の選手は6人、この数字自体は驚くべきものではないが、その中にはギエーム・ギラド、ルイ・ピカモール、ヨアン・ウジェというこれまでのチームを支えてきた選手がカムバックし、その中でギラドが主将に任命されているのである。
 フランスの先発メンバーはFWのフロントローは左からジェファーソン・ポワロ、ギラド、セダト・ゴメスサ、ロックはセバスチャン・バーマイナとヨアン・マエストリ、フランカーは左にベンセラス・ローレ、右にアルツール・イトゥリア、ナンバー8にピカモール、ハーフ団はスクラムハーフにバティスト・サラン、スタンドオフはカミーユ・ロペス、スリークォーターバックは左からダミアン・プノー、ジョフレイ・ドゥーマイルー、マチュー・バスタロー、テディ・トマ、フルバックはマキシム・メダールという顔ぶれである。
 このメンバーの代表出場歴の平均は29となり、ブルネル体制になってから最もキャリアを積んだメンバーをそろえた。ブルネル監督の初陣となった6か国対抗のアイルランド戦の先発メンバーの平均代表出場歴は16であり、それと比べると2倍近くになっている。代表チームにおいて出場回数を重ねたメンバーをそろえることは重要なことであり、世界最強のオールブラックスは平均50である。しかし、現在のフランスの場合はベテラン選手をカムバックするにとどまり、6月のニュージーランド遠征では3試合とも同じメンバーで臨んだフロントローとハーフ団は、今回の南アフリカ戦ではそっくり入れ替わっているのである。(続く)

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