第2439回 2019年ラグビーワールドカップ展望 (6) 南アフリカ相手にラストプレーで逆転負け
8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■南半球の3強に11連敗中のフランス
ベテランを復帰させ、ギエーム・ギラドを主将に据えて南半球の国々を迎える11月のテストマッチ、11月10日の南アフリカとの戦いにフランスは臨む。これまでフランスは南アフリカに対し、11勝6分26敗と大きく負け越しており、しかも2009年に勝利して以来9年間にわたって6連敗中である。第2437回でフランスがニュージーランド相手に14連敗と紹介したが、ニュージーランド相手の最後の勝利も2009年である。また、南半球相手でいうならば、豪州とも2014年に勝利した後は1回対戦して敗れている。すなわち、南半球の強豪3国相手に現在11連敗中である。これまでワールドカップで南半球勢に対し、欧州勢で最も健闘してきたフランスからは遠ざかった姿となっている。
ジャック・ブルネル監督の就任以来、すなわち今年に入ってからの戦績は2勝6敗、スタッド・ド・フランスに空席が目立つのもやむを得ないであろう。
■ユニフォームに伝統のトリコロールを復活
フランスはこの秋のシーズンにユニフォームを新調し、32年ぶりにルコックスポルティフがサプライヤーとなり、青白赤の三色を復活させた。このところ、青一色のユニフォームであったが、伝統のトリコロールで再起にかける。
■残り1分までリードしていたフランス
試合はトリコロールのユニフォームのフランスが白いユニフォームの南アフリカに対し優勢に進める。南アフリカ陣内に攻め込んだフランスは7分、11分に相手のオフサイドを誘い、バティスト・サランがともにペナルティゴールを決め、6-0とリードする。これに対し南アフリカも13分、22分、29分にペナルティゴールをハンドレ・ポラードが決めて逆転する。ポラードは現在はブルズに所属しているが、かつてはNTTドコモで活躍したことから日本のファンの皆様は良くご存じの名スタンドオフである。
この日は両チームともキックが多く、南アフリカのポラード、フランスのカミーユ・ロペスの両スタンドオフの蹴り合いとなり、ロペスもポラードに負けじと好プレーを見せる。それが、34分のプレーであり、南アフリカのゴール前5メートルのラインアウトからの攻撃、ロペスがドロップゴールを決めて同点に追いつく。ここからフランスの時間帯となる。37分の10メートルライン付近のラインアウトから始まった攻撃、フランスはモールを形成し、前進する。このモールから最後にトライをあげたのは主将のギラドであった。サランのゴールも決まり、16-9というスコアでハーフタイムを迎える。
後半の立ち上がりの42分、今度はフランスのバックス陣が攻撃を作り、最後は6月のニュージーランド遠征で主将を務めたマチュー・バスタローがトライ、ゴールも決まって23-9とリードが広がる。
しかし、ここからフランスは大苦戦となる。44分にトライとゴールを決められ、16-23、52分、61分にペナルティゴールを続けて決められ、22-23と1点差に詰め寄られる。67分に相手のレイトタックルに対するペナルティ、40メートルの距離のペナルティゴールをサランが決めて4点差となる。
■ラストプレーでトライを奪われ、逆転負け
ここから10分以上スコアは動かず、フランスが久しぶりに強豪相手に勝ち星をあげるかと期待されたが、ここでフランスの弱さが出た。残り1分となった79分にフランスはスクラムからボールをキープしていたが、ポール・ガブリヤーグがペナルティの反則を犯す。南アフリカのペナルティキックはフランス陣深くのタッチを狙うが、これをダミアン・プノーが取れず、南アフリカボールとなって80分が過ぎる。ここで82分、南アフリカのアピウェ・ディアンティが左隅にトライをあげるが、その前にスローフォワードがあり、トライは取り消し、試合終了かと思われた。しかし、主審のマイケル・オーウェン氏はその直前のラックでのフランスの反則を取り、南アフリカのペナルティキックで試合を再開。タッチを蹴って南アフリカは左サイドのラインアウトから右サイドに展開、84分に最後はボンギ・ムボナンビがトライ、ゴールも決まり26-29とフランスは敗れる。ラストプレーでの逆転負けは6か国対抗のアイルランド戦に次いで今年2回目のことである。(続く)