第2442回 2019年ラグビーワールドカップ展望 (9) アイルランドが「一生に一度」の優勝か
8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■世界ランキングが9位に落ちたフランス
11月のテストマッチは南アフリカにラストプレーで逆転負け、宿敵アルゼンチンに勝利して連敗を5でストップしたが、フィジーには10回目の対戦で初めての黒星となった。フィジーとの直接対決に敗れたため、世界ランキングが入れ替わり、フィジーが8位、フランスが9位となった。
この秋はベテランを復帰させて勝負に出たジャック・ブルネル監督であるが、ヨアン。マエストリ、ルイ・ピカモールの2人はフィジー戦で代表通算38敗となった。これは1995年から2007年まで代表選手として活躍したファビアン・プルーと並び最多である。しかし、プルーは118試合に出場し、敗戦率は3割である。しかしマエストリは65試合出場、ピカモールは72試合出場で負け越ししている。またギエーム・ギラドも63試合出場で33敗で負けの方が多い。以前はフランス代表の勝率は7割近かったことから、ベテランも心の整理ができないであろう。
■残された機会は6か国対抗と直前のウォーミングアップ試合のみ
昨年の日本との引き分け以来、チームの歯車が狂ってしまっているようである。ワールドカップ開幕まで10か月となり、フランスに残された試合の機会は6か国対抗5試合(2月1日:ウェールズ戦、2月10日:イングランド戦、2月23日:スコットランド戦、3月10日:アイルランド戦、3月16日:イタリア戦)と夏のウォーミングアップ試合3試合(8月17日ならびに24日:スコットランド戦、8月30日:イタリア戦)だけである。
■イングランド、アルゼンチンに敗れてプール戦で敗退か
ワールドカップでは9月21日にアルゼンチンと対戦、10月2日に米国戦、10月6日にトンガ戦、そして10月12日にイングランド戦というスケジュールが待っている。このグループCの力関係としては、イングランドが頭一つ抜け出し、それをフランスとアルゼンチンが追うという構図であろう。初戦のアルゼンチン戦はいきなり決勝トーナメント進出決定試合となる公算が強い。また、この試合で負けたならば、最終戦のイングランド戦での奇跡を期待するしかない。
1987年の第1回大会以来、フランスが北半球で唯一継続してきた決勝トーナメント進出記録がストップする可能性は極めて大きいのである。フランスの所属するプールCはイングランドが首位、スーパーラグビーで日本国内での試合経験を重ねているアルゼンチンが2位と予想する。
■ニュージーランドに過去3戦で勝ち越しているアイルランドが初優勝か
それ以外のプールについてはプールAはアイルランドが首位でスコットランドが2位とみる。ただし、前の試合から中3日で日本と戦うというスコットランドは厳しい日程を組まれているため、日本あるいはサモアが2位に入ることも想定できる。
プールBはニュージーランドと南アフリカの力が抜きんでており、首位はニュージーランド、2位に南アフリカとなる。
プールDは豪州、ウェールズ、フィジーの3か国が優位に立つ。豪州が頭一つに近出ている。ウェールズとフィジーの2位争いとなるが、フィジーもフランス戦のような動きができれば、ウェールズに勝利することも可能であるが、ウェールズは豪州との対戦から中9日でフィジー戦を迎えることからウェールズが有利であろう。
決勝トーナメントはイングランド-ウェールズ、ニュージーランド-スコットランド、豪州-アルゼンチン、アイルランド-南アフリカとなる。この中で注目はイングランド-ウェールズ戦である。11月のテストマッチを終えた時点での世界ランキングはウェールズが3位、イングランドが4位とウェールズがわずかに上回っているが、両国の対戦はこのところイングランドが4連勝中である。しかし、ウェールズの最後の勝利は2015年のワールドカップのプール戦でのことであり、この敗戦でイングランドは初めて開催国がプール戦で敗退という不名誉な記録を作ってしまった。
準決勝はウェールズ-ニュージーランド、豪州-アイルランドとなり、決勝はアイルランドが初めて進出、ニュージーランドに挑戦する。アイルランドはオールブラックスに対し2勝1分28敗と大きく負け越しているが、この2勝は直近3試合のものであり、11月には16-9と勝利しており、これまでベスト8が最高成績だったアイルランドの優勝も「一生に一度」ということで十分にありうるのである。(この項、終わり)