第2554回 天敵アルゼンチンに辛勝(1) 自国籍、自国出身、自国クラブの選手で固めた不振の両チーム
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、このたびの台風15号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■富士吉田で初戦に向けて調整するフランス
9月20日に開幕するラグビーワールドカップ、フランスは9月2日にメンバーを確定し、9月7日に日本に向けて出発した。出発の前日にはエマニュエル・マクロン大統領が合宿を訪問し、選手を激励する。シャルル・ド・ゴールから出発したフランスチームは機内で一泊し、東京の羽田空港に到着、富士山を望む富士吉田市のリゾートホテルを拠点として開幕に備える。ちょうど到着した直後に関東地方を台風15号が通過するが、練習には大きな影響もなく、10数名のジャーナリストが帯同した最終調整が行われた。
■決勝トーナメント進出の最大のライバルはアルゼンチン
フランスの第1戦は9月21日の土曜日に行われる。この週末は特例として国内リーグのTOP14は行われない。その第1戦の相手はアルゼンチンである。フランスの所属するプールCは第1シードとしてイングランド、第2シードがフランス、第3シードがアルゼンチン、第4シードが米国、第5シードがトンガである。この中ではイングランドが頭一つ向けだしていると言っていいであろう。今年の6か国対抗では2位に終わったものの、フランスとの対戦では6トライを奪い44-6と歴史的大勝を記録している。
第2シードはフランスであるが、第3シードのアルゼンチンの方が評価が高い。現時点での世界ランキングはフランスの8位に対して、アルゼンチンは11位、そしてアルゼンチンは現在9連敗中である。昨年9月15日に豪州に勝利して以来、黒星が続いている。アルゼンチンの主な対戦相手がニュージーランド、南アフリカ、豪州という南半球の強国であることから、やむを得ないことであるが、この9つの敗戦の中には昨年11月にリールで対戦したフランス戦も含まれており、直近の対戦ではフランスが勝利している。これまでの通算対戦成績もフランスが36勝2分14敗と大きく勝ち越している。
■今世紀に入ってからは負け越し、屈辱の自国開催のワールドカップ
しかし、2000年代に入ってからの対戦ではフランスが4連敗で始まり、7勝10敗と負け越している。そしてフランスのファンの記憶に残っているのが地元開催の2007年のワールドカップである。結果的にはフランスは準々決勝でニュージーランドを破り、4位になったが、開幕戦のグループリーグ初戦で敗れたアルゼンチンに3位決定戦でも敗れている。まさに天敵といっていい相手であろう。
■自国籍、自国クラブにこだわったフランス、自国出身選手のみで固めたアルゼンチン
この1年間の成績を振り返れば、両国とも不本意の一語に尽きる。フランスがメンバーを固定できず、新人を起用したりベテランを復帰させたり、試行錯誤を続けてきた。結果的には31人全員をフランス国籍を有するメンバーで固め、全員がフランスリーグの所属である。そして国外出身者はわずか4人、幼少の時にアルジェリアから移民としてフランスに渡ってきたソフィアン・ギトゥンヌ、フランスから南アフリカに渡ったユグノー教徒の家庭に生まれたベルナール・ルルーというトップレベルになる前にフランスに居住した2人と、選手となってから3年間の居住資格をクリアして国籍を取得してフランス代表入りしたのがフィジー出身のアリベルティ・ラカ、ニュージーランド出身のビリミ・バカタワの2人である。
アルゼンチンは、昨年8月に就任した監督のマリオ・レデスマが一貫したメンバー起用を続け、31人の全員がアルゼンチン出身のアルゼンチン国籍保持者である。また、所属クラブも26人がジャガーズに所属しており、欧州のクラブに所属している選手は少数である。両チームとも自国籍、自国出身者、自国クラブの選手を多く固めた陣容となった。
しかし、アルゼンチンのわずか3人の国外組のうち、先発のスタンドオフのニコラス・サンチェスはスタッド・フランセ所属、リザーブのスタンドオフのベンハミン・ウルダピジェタはカストル・オランピック所属と司令塔はフランスをよく知る選手であり、鍵を握っているのである。(続く)