第2561回 米国から5トライを奪い勝利(2) 米国、トンガとの九州シリーズ

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、このたびの台風15号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■中3日で九州の福岡と熊本で連戦

 10月2日に福岡で米国、6日に熊本でトンガと対戦するフランス、九州シリーズとなったが、九州とフランスといえば経済的にも関係は深い。九州の名門企業麻生セメントにはフランスを代表するセメント会社のラファージュが出資し、フィリップ・プラトンという著名な経営者が日本で手腕を発揮した。また福岡はボルドーの姉妹都市、ボルドー出身の財界人というとローラン・ルノーを忘れてはならない。
 また試合間隔にばらつきのあるフランスは、九州シリーズのように短い試合間隔を乗り切るための選手を選出している。すなわち、この2試合を乗り切るためのつなぎのメンバーというわけである。若手選手を多く選出した狙いの1つは米国、トンガとの連戦で主力メンバーに休息を取らせることもある。

■開幕直前にセンターのウェスレイ・フォファナが離脱、ピエール・ルイ・バラシが加入

 ところが、開幕直前に主力組に新たに問題が発生した。それはンターのウェスレイ・フォファナが負傷によりチームを離脱したのである。スタンドオフのロマン・エンタマックもセンターをこなすことができるが、本職のセンターが欲しい。大会規定により選手を補充できるが、このポジションにはもともとジョフレイ・ドゥーマイルーの負傷によってビリミ・バカタワが選出されており、手薄である。さらに問題なことにすでに今季のフランスリーグが8月に開幕している。リーグ戦で戦っているチームから代表クラスの選手を提供してもらうことは困難である。イングランドのプレミアリーグは10月下旬から開幕するが、フランスの場合は8月に開幕、ファンも地元に密着したクラブの試合に注目し、空席の目立つ代表戦とは対照的にスタジアムは満員である。そういうクラブからワールドカップとは言え、選手を引き抜くのは容易なことではない。
 結局招集できたのはリヨンのピエール・ルイ・バラシ、21歳で、初めての代表チームへの招集が日本で行われているワールドカップとなった。リヨンでも出場機会は多くはない。今季は開幕のスタッド・フランセ戦はメンバー外となったが、第2節のトゥールーズ戦では先発し、今季初トライを決めている。トップレベルでの実績は少ないが、年齢別の代表チームに入ったことがあり、その際にエンタマックとセンターを組んでトンガ戦で活躍したことがある。

■台風18号の影響が心配されたが予定通り試合を実施

 プールCで決勝トーナメント出場を争うとみられるのはイングランド、アルゼンチン、フランスであるが、フランスが米国戦を迎える前にライバルたちは2試合を消化、イングランドはトンガと米国に大差をつけて連勝、アルゼンチンはトンガに前半だけで4トライと勝ち点を重ねている。フランスもこの九州シリーズで連勝するとともに、最終戦のイングランドとの対戦に向けてアルゼンチン戦で露呈した課題を修正しておきたい。
 ところが思わぬ事態が起こる。台風18号の接近に伴い、米国戦が中止になる可能性があると組織委員会が発表した。中止の場合は引き分け扱いとなり、両チームに勝ち点2が与えられるというものである。米国との力関係、イングランドの米国戦の結果を考えるならば、フランスにとってこの中止は非常に大きな痛手となる。しかし、試合の2日前に試合を予定通り行うことになり、フランスは命拾いしたのである。

■アルゼンチン戦とは大きく異なる米国戦の先発メンバー

 そして10月2日、ジャック・ブルネル監督が福岡の博多の森競技場に送り込んだフィフティーンは第1戦とは大きく異なった。FW第一列はシリーユ・バイユ、カミーユ・シャ、エメリック・セティアノ、ロックはベルナール・ルルーとポール・ガブリヤーグ、フランカーはアルツール・イトゥリアとヤクーバ・カマラ、ナンバーエイトはルイ・ピカモール、スクラムハーフはマキシム・マシュノー、スタンドオフはカミーユ・ロペス、センターはガエル・フィクーとソフィアン・ギトゥン、ウイングはヨアン・ウジェ、アリベルティ・ラカ、フルバックはトマ・ラモスという陣容である。(続く)

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