第2567回 準々決勝でウェールズと対戦(1) メンバー編成のテストの機会を失い、決勝トーナメントへ
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、この度の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■豪州を倒したウェールズと準々決勝で対戦
台風ハギビスの影響で10月12日のニュージーランド-イタリア戦とフランス-イングランド戦はラグビーワールドカップ史上初の試合中止となった。
この試合中止はフランスにいくつかの影響を与えた。まず、プールの順位が2位にとどまり、決勝トーナメントはプールD首位のウェールズと対戦し、勝利した場合に準決勝では日本-南アフリカ戦の勝者と対戦する。準々決勝について言えば、今大会に入って調子の出ない豪州よりもウェールズの方が手ごわい相手であろう。
■休養よりも欲しいイングランドレベルのチームとの試合の機会
一方、フランスとの対戦が中止になったイングランドのエディー・ジョーンズが1試合分休養が与えられたことに感謝していたが、フランスの場合は素直に喜ぶわけにはいかない。なぜならば、若く、キャリアのないチームにとって、イングランドレベルのチームとの試合を重ねることがチームにとって成長の原動力となる。
■九州シリーズで評価をあげたアリベルティ・ラカ
また、フランスの日程は米国戦とトンガ戦は中3日であり、この変則日程用に選手選考を行い、アルゼンチン戦に出場した選手はこの2試合は交代で休息を取るというローテーションを組んだ。米国戦もトンガ戦も内容的には満足のいくものではないが、個別には評価を高めた選手がおり、メンバーのテストの機会が失われたことである。
例えばウイングのアリベルティ・ラカ、フィジー出身のラカはアルゼンチン戦はメンバー外、米国戦は右ウイング、トンガ戦は左ウイングで先発出場し、過密日程の格下相手の試合要員であった。しかし、米国戦では前半に代表初トライをあげるとともに、後半もカミーユ・ロペスのキックパスをキャッチし、トライをアシストしている。トンガ戦ではフランスは相手を下回る2トライしか上げることができなかったが、いずれのトライもラカが絡んでおり、1本目は最後はビリミ・バカタワがトライをしているが、ゴール直前までボールを持って突進したのはラカであった。そして2本目のトライはクイックスタートからパスを受けたラカがボールを持って突進、ショートパントをあげて、そのボールをキックして自らがキャッチし、そのままゴールラインを越えてトライをあげる。九州シリーズでチームのあげた6トライのうち2トライをマークし、1トライをアシストしただけではなく、そのトライがフレンチフレアと呼ぶにふさわしいものであり、ぜひともベストメンバーの一員として強豪相手の試合でどこまで通用するかを見てみたかったが、イングランド戦でその姿を見ることはできなかった。
■フルバックの代役、スクラムハーフも懸案のポジション
さらにラカのポジションについては悩ましい問題が発生した。それはフルバックのリザーブのトマ・ラモスの離脱である。ラモスの負傷によって呼び寄せたのは本職がウイングのバンサン・ラッテスであり、本職のフルバックはチームにはマキシム・メダールだけとなる。ラッテスはフルバックもこなすことができるので、ラカよりもラッテスを推す声もある。
また、ウイングでいうならば、アルゼンチン戦で活躍しながら負傷退場したダミアン・プノーは米国戦はメンバー外となり、トンガ戦には先発フル出場したが、動きは良くなく、キック処理のミスからトライを許している。
一方、フランスのラグビーにおいてスタンドオフ以上に司令塔としての役割が期待されるスクラムハーフはアルゼンチン戦はアントワン・デュポンが先発し、後半にマキシム・マシュノーが交代出場、米国戦はマシュノーからバティスト・サランにつなぎ、トンガ戦はサランが先発、デュポンが最後のタッチキックで勝利を決めた。このように3試合異なるスクラムハーフを起用したが、決勝トーナメントに向けて、強気のデュポンか、ベテランのマシュノーか、才能のサランか、ファンの意見は分かれるところである。
このようなメンバー編成のテストの機会を失ったまま、大分で行われる決勝トーナメントに向かうのである。(続く)