第2617回 ラグビー代表、自国開催に向けて好発進(1) 痛恨の中止となったイングランド戦

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■準々決勝敗退に終わったフランスの1つ目の「たられば」、ウェールズ戦の退場

 昨年最大のスポーツイベントはラグビーワールドカップであった。フランスはグループリーグを突破したが、準々決勝でウェールズに敗れている。スポーツに限らず「たられば」は厳禁であるが、今でもフランスのファンは2つの「たられば」に取り付かれている。
 まず、敗れてしまったウェールズ戦におけるセバスチャン・バーマイナの反則によるレッドカードがなければ、どうなったであろうか、ということである。この退場は1人が減っただけではない。本連載でも指摘した通り、昨年のワールドカップのメンバーに本職のロックはバーマイナ以外には1人しかおらず、結局、本来はバックローのルイ・ピカモールをバーマイナの抜けたポジションに起用しており、最も退場してはならないポジションの選手が退場したことはフランスにとっては不幸なことであった。

■準々決勝敗退に終わったフランスの2つ目の「たられば」、イングランド戦の中止

 もう1つはプール戦の最終戦のイングランド戦である。10月12日に予定されていた試合はプールCの首位決定戦となるはずだったが、台風ハギビスのため中止になってしまった。中止になったため、試合は引き分け扱いとなり、イングランドが首位突破、フランスが2位突破となったが、この試合が行われなかったことによりフランスは2つのチャンスを失っている。まず、イングランドに勝利していれば、首位突破となり、準々決勝で豪州と対戦している。豪州ならば勝てる、という易しい相手ではないが、ウェールズ戦とは異なった展開になったことは事実である。

■開催を願ったフランス、中止を歓迎したイングランド

 そしてもう1つフランスが失ったものは主力選手の温存からくるウェールズ戦のパフォーマンスである。今回フランスは東京でアルゼンチンと対戦し、九州にわたって福岡で米国、熊本でトンガと対戦している。米国戦、トンガ戦は試合間隔も短く、この2試合は主力以外の選手を数多くメンバーを構成し、アルゼンチン戦とイングランド戦はベストメンバーで臨み、決勝トーナメントでは主力で固めたメンバーで戦うという計画であった。それがイングランド戦の中止により、ベストメンバーで戦ったのはアルゼンチン戦だけ、という状況でノックアウト方式の準々決勝を迎えたわけである。仮にイングランドに敗れるか引き分けで、2位通過となったとしても、イングランドという強豪相手に戦った経験は準々決勝以降につながったはずである。フランスの首脳陣はそのような理由でイングランド戦の開催を望んだのであった。
 一方のイングランドは開幕のトンガ戦と第3戦となったアルゼンチン戦の2試合はベストメンバーで臨んでおり、イングランドの首脳陣はフランス戦が中止になったことを歓迎している。そしてイングランドは決勝に進んでいる。

■自国開催、自国優勝への第一歩となるか、開幕のイングランド戦

 このようにフランスのファンは2つの「たられば」を抱えたままワールドカップを終え、4年後の自国開催を待つことになるのである。そのようなファンのフラストレーションを解消する機会が6か国対抗である。今年の6か国対抗は2月1日に開幕するが、フランスにとって初戦は2月2日のスタッド・ド・フランスでのイングランド戦である。6か国対抗でイングランド戦が初戦となるのは5年に一度、さらにホームゲームとなると10年に一度のことである。フランスのファンにとっては昨年のワールドカップ以来のフラストレーションを晴らす絶好の日程となったのである。
 そして4年後は自国開催となる。自国開催は2007年に続き2回目となるが、2007年はアルゼンチンに開幕戦と最後の3位決定戦で敗れるという失態を見せた。1980年代以降、フランスはサッカーワールドカップを1回、サッカー欧州選手権を2回、ラグビーワールドカップを1回開催しているが、その中で最も悪い成績が2007年のラグビーワールドカップである。サッカーでは3回中2回開催国優勝を飾っており、ラグビーも初優勝を願っている。その第一歩がイングランド戦なのである。(続く)

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