第2769回 6か国対抗に向けてフランスラグビー始動(1) 9年ぶりに6か国対抗で2位になったフランス
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■新型コロナウイルスの感染拡大で春から夏は試合ができず
新型コロナウイルスの感染拡大はスポーツの世界、特にいわゆるコンタクトスポーツに大きな影響を与えた。その中でトップレベルのナショナルチームが試合をこなしてきたのがラグビーである。
ラグビーの代表チームの活動は6月と11月、そして欧州の場合は2月から3月にかけての6か国対抗、南半球の場合は7月から8月にかけてラグビーチャンピオンシップ(以前のトライネーションズ)が行われる。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した3月から影響を受け、北半球に関しては3月の6か国対抗の終盤戦は延期となった。また、南半球に関しては感染者の多かった南アフリカがラグビーチャンピオンシップに出場できなくなった。
■秋から冬にかけて北半球、南半球で開催された大会
主に南半球で行われる6月の国際試合は行われなかったが、北半球、南半球で秋から冬にかけて国際試合が行われた。
北半球では6か国対抗で未消化だった4試合を10月末に行って、イングランドが優勝した。さらに6か国対抗のメンバーにジョージアとフィジーが加わった8か国でオータムネーションズカップを開催し、6か国の8会場で試合が行われた。4チームずつに分かれたグループリーグで全勝したイングランドとフランスが決勝を争い、イングランドが延長戦のペナルティゴールでサドンデス勝ちしている。なお、決勝のみ2000人の観客の前で行われ、それ以外の試合は無観客で行われた。またフィジーは事前合宿中に新型コロナウイルスの感染者が発生したために、グループリーグは3試合とも棄権、グループリーグでは最下位となったが順位決定戦には出場し、ジョージアを破って7位になっている。
一方、南半球では10月末から12月にかけてニュージーランド、豪州、アルゼンチンの3か国が豪州に集まってトライネーションズとして戦い、アルゼンチンがニュージーランドに史上初めて勝利するという快挙はあったが、2勝2敗のニュージーランドが優勝している。
このように世界の主要国は秋に戦いを再開したが、前回のワールドカップで優勝した南アフリカと、次回大会の優勝候補である日本のみが試合から遠ざかっている。日本はオータムネーションズカップ出場の予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大のため出場を断念、代わりにジョージアが出場している。
■6か国対抗では惜しくもイングランドに優勝を譲ったフランス
そしてフランスであるが、2019年のワールドカップは準々決勝で敗れたものの、手ごたえをつかんだ。2020年の6か国対抗は開幕戦でイングランドを破ったことは本連載の第2620回で紹介したが、その後、イタリア、ウェールズを破り、スコットランドに敗れる。10月に行われたアイルランド戦には勝利し、イングランドと勝ち点で並んだが、得失点差で優勝を譲った。フランスの2位は9年ぶりのことである。
■オータムネーションズカップで再燃したクラブと代表の関係
続くオータムネーションズカップでは、いかにもフランスらしい問題が生じた。それはクラブチームと代表チームとの関係である。フランスのラグビーでは常にクラブの試合か代表の試合か、という問題が付きまとう。例えば6か国対抗はリーグ戦の期間中であり、代表の試合の前日あるいは翌日に通常のリーグ戦が行われている。クラブとしては有力選手を代表の試合に拠出したくない。また、代表チームに送り出してもさほどの出場機会がないのであればクラブからクレームがつく。
今回のオータムネーションズカップ、そしてそれに先行したテストマッチのウェールズ戦、6か国対抗の未消化試合のアイルランド戦もリーグ戦たけなわの期間に行われた。このため、フランスリーグは秋に予定されている代表戦は6試合(テストマッチのウェールズ戦、6か国対抗アイルランド戦、オータムネーションズカップのグループリーグ3試合、オータムネーションズカップの順位決定戦1試合)であるが、各選手は最大で3試合までしか代表の試合に出場できないという取り決めとなったのである。(続く)