第2802回 接戦の続く6か国対抗(7) トライの奪い合い、残り30分でウェールズが10点リード

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■21世紀になってもコンスタントにグランドスラムを達成したウェールズ

 ここまで4連勝のウェールズはフランスに引き分け以上で優勝である。ウェールズが勝利してグランドスラムを達成すれば、13回目となる。また、ウェールズは通算の優勝回数でも39回でイングランドと並んでおり、ここで優勝すれば最多優勝となる。ウェールズというと日本の読者の皆様は初訪日した1970年代の印象を強くお持ちかもしれない。確かにウェールズは1970年代に1971年、1976年、1978年と3回のグランドスラムを達成している。しかし、2000年代に入っても2005年、2008年、2012年、2019年とグランドスラムに輝いている。これだけの実績を持つ国がワールドカップでは決勝に一度も進出したことがないのは不思議である。

■経験値の高いメンバーのそろったウェールズ

 ウェールズは経験豊富な選手で構成され、先発フィフティーンの平均キャップ数は66、フランスのそれが22であるからちょうど3倍となる。中でも主将のアラン・ウィン・ジョーンズのキャップ数は150に届かんとする勢いである。2006年に代表入りし、ワールドカップにも2007年大会以降4大会に出場し、グランドスラムもこれまでに3回も経験している。
 フランスにとっては2019年ワールドカップ、大分での準々決勝での1点差の敗退は悔しい思い出である。フランスの先発メンバーで大分の試合でも先発したのはフォワードのグレゴリー・アルドリットとシャルル・オリボン、バックスではアントワン・デュポン、ガエル・フィクー、ダミアン・プノーの5人だけであるが、ウェールズはフォワード5人、バックス5人の合計10人が大分でも先発した。

■フランスが2度リード、いずれもウェールズが追いつく

 キックオフ直後からフランスがボールを支配、ウェールズのゴールラインに迫る。そして先制したのはフランス、7分にロマン・タオフィフェヌアが先制トライをあげ、マチュー・ジャリベールのキックも成功、フランスが7-0と先行する。序盤の守りの堅いウェールズは今季初めて開始10分以内の失点であるが、早速反撃に転じ、12分にダン・ビガーがトライ、自らがコンバージョンも決めて7-7の同点に追いつく。
 ところがフランスもすぐさまジャリベールがウェールズのキックをキャッチして前進、ウェールズのディフェンスを引き付けてデュポンにパスし、デュポンはゴールポスト直下に走り込む。ジャリベールはゴールをたやすく決め、14-7とする。そしてこの後、非常に長い時間のプレーの後、19分にウェールズのジョシュ・ナビディがトライ、ビガーのゴールも決まり、14-14とハイスコアの接戦の予感を漂わせる。

■手堅くリードを奪ったウェールズ、トライを決めて10点差

 接戦で禁物は反則である。25分にフランスはノットロールアウエーの反則、ビガーがペナルティゴールを決めて、この試合初めてウェールズがリードする。
 そして、30分にフランスはロマン・エンタマックを負傷したジャリベールに代えて投入する。期待の若手がようやく今年の6か国対抗に初出場である。そのエンタマックは34分にハイタックルで得た40メートル近いペナルティゴールを決めてフランスは同点に追いつき、17-17というスコアで両チームは後半を迎えた。
 エンドが変わって最初にスコアしたのはビガー、フランスがゴール前でオフサイド、ウェールズはトライを狙わず、3点ではあるが、リードを奪う。そしてリードされたフランスにはミスが出た。プノーがキックをキャッチミス、これをウィリアムスに奪われ、最後はアダムスがインゴールに持ち込む。ディラン・クレタンがトライを阻止したかに見えたが、イングランド人主審のルーク・ピアス氏はトライを認め、ゴールも決まったウェールズは残り30分となった時点で27-17と10点差とする。
 近年のこのカードは接戦続きである。直近の対戦となる昨秋のテストマッチこそ38-21とフランスが勝利したが、昨年の6か国対抗は27-23でフランス、さらにその前はワールドカップ準々決勝を含み、ウェールズが3連勝しているが、1点差、5点差、1点差である6か国対抗で7点以上差がついたのは2016年が最後である。そしてこの試合も接戦となったのである。(続く)

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