第2925回 12年ぶりにオールブラックスを破る(4) ラグビーワールドカップ開幕戦と同一カード
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■秋のテストマッチで勝ち越しを決めたフランス
秋のテストマッチはアルゼンチンにスタッド・ド・フランスで勝利、ボルドーでジョージアに勝利し、最終戦を迎える。昨年の秋はオータムネーションズカップが開催されたためテストマッチは1試合(ウェールズ戦)のみ、一昨年はラグビーワールドカップが開催されたため、3試合を行うのは2018年以来3年ぶりであるが、その時は南アフリカに競り負け、アルゼンチンに勝利したが、フィジーに敗れて負け越している。2017年は4試合行い、日本と引き分けたものの、南アフリカに敗れ、ニュージーランドに連敗している。2016年もサモアに勝利しただけで、豪州、ニュージーランドに敗れている。秋のテストマッチで勝ち越しただけでも快挙なのである。
■2009年以来14連敗、スタッド・ド・フランスでの勝利のないフランス
勝ち越しが決まっている秋のテストマッチの最終戦の相手はニュージーランドである。フランスはワールドカップではニュージーランドと好勝負を繰り返しており、ニュージーランドに対して強いというイメージがあるが、やはりこれまでの戦績を振り返ってみるとフランスの12勝、ニュージーランドの47勝、1つの引き分けとニュージーランドが大きく勝ち越している。ただ、これでも北半球勢ではニュージーランドに対して最もよい成績を残しており、フランスに次ぐのがイングランドの7勝1分32敗である。
数字の上では5回の対戦で1回はフランスが勝利しているわけだが、フランスのニュージーランド戦の勝利は2009年夏の南半球遠征での第1テストマッチ、ドネーデンの27-22が最後である。ウェリントンに舞台を移した第2テストマッチ以来、フランスはワールドカップでの3回の対戦を含み、14連敗を喫している。これは100年を超える両国の対戦歴の中で最多の連敗記録である。
さらにフランス国内での勝利となると2000年秋のマルセイユでのテストマッチが最後となる。今回の対戦会場であるスタッド・ド・フランスは1998年に完成したが、20年余りの歴史の中で、フランスがニュージーランドに勝利したことはない。そればかりか、フランスがニュージーランドにパリで勝利したのも半世紀近く前の1973年が最後である。パルク・デ・プランスは1972年に改装され、ほぼ現在の姿となり、サッカーやラグビーの国際試合が行われるようになったが、現在のパルク・デ・プランスでフランスが勝利したのはこれが最初で最後である。
■フランス戦の前週にアイルランドに敗れたニュージーランド
そのニュージーランドの夏以降の戦いぶりを紹介しよう。ラグビーチャンピオンシップでは5勝1敗で優勝を果たしている。1敗は優勝が決まった後の最終節の南アフリカ戦でのものである。そして10月からテストマッチで北半球勢と対戦、米国に対してワシントンで104-14と大勝してスタートし、大西洋を渡ってイタリアをノートライに押さえて47-9と勝利、ここまでは強いオールブラックスであった。しかし、フランス戦の前週に行われたダブリンでのアイルランド戦は20-29と敗れている。アイルランドにとってはこれがニュージーランド戦では3回目の勝利である。2016年にシカゴで初勝利をあげ、2018年にはホームのダブリンで勝利しており、過去5年間の対戦成績は3勝2敗と勝ち越している。 フランスは今年の6か国対抗ではアイルランドに勝利しており、ここでニュージーランドに勝ちたいところである。
■2年後のラグビーワールドカップの開幕戦で対戦するフランスとニュージーランド
さらに、フランスには今回の対戦は簡単に勝利を譲るわけにいかない理由がある。スタッド・ド・フランスは2007年に続き、2年後のラグビーワールドカップでもメイン会場となる。その自国開催のラグビーワールドカップの開幕戦がフランス-ニュージーランド戦である。おそらくはスタッド・ド・フランスではラグビーワールドカップまでにこのカードは組まれないであろう。したがって、今回は、ラグビーワールドカップの行方にも影響する試合と言え、ファンの関心は高まり、7万9000人を超える観客が集まったのである。(続く)