第3036回 ラグビーフランス代表、4回目の訪日(6) 先制したが、逆転を許したフランス
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■10連勝という記録更新のかかったフランス
来日したメンバーの中では経験のあるメンバーで第1テストマッチは圧勝したフランスであるが、前回の本連載で紹介した通り、第2テストマッチもほぼ同じメンバーで戦う。40人以上のメンバーで訪日したフランスが第2テストマッチもほぼ同じメンバーで立ち向かう理由は日本が来年のラグビーワールドカップで優勝候補にふさわしい力を持っていることを改めて認識したことから、ベストメンバーでなければ勝利することができないと考えていることが理由として挙げられる。また、パワーと高さを前面に押し出す日本のようなタイプのチームは現在の北半球には珍しく、このようなラグビーに速さで対応することもチーム強化上のテーマである。さらにこの試合で勝利すれば10連勝ということで代表チームとしての連勝記録を更新することもあり、勝利にこだわりたい。
■試合前には安倍晋三元首相への黙祷
第2テストマッチの前日には安倍晋三元首相が暗殺される事件がベルサイユの姉妹都市の奈良で起こり、試合前には黙祷が捧げられた。フランスの主将のシャルル・オリボンは花束とともに、安倍晋三氏の名前を入れたフランス代表のジャージを日本の主将の坂手淳史に渡している。長期間にわたり総理大臣を務めた安倍元首相が最後にG7、先進国首脳会議に出席したのは2019年のフランスのビアリッツでの会合であり、日仏の外交にも尽力した安倍晋三氏の冥福をお祈りする次第である。
■モールを起点にした攻撃から先制トライをあげたフランス
試合は日本のキックオフで始まる、李承信の蹴ったボールをオリボンがキャッチする。前回のラグビーワールドカップ以降に主将に任命されたが、昨年の6か国対抗を最後に負傷でメンバーを外れ、久しぶりの復帰である。オリボンからパスを受けたマキシム・ルクがタッチに逃げる。ジャミネ不在のこの試合でキッカーを務めるのがルクである。
この試合で最初にスコアしたのはフランスであった。試合開始から試合を支配し、日本の反則も目立ったことからフランスが攻め込む展開となった。9分には日本のゴール前5メートルの地点でマイボールのラインアウト、チボー・フラマンがキャッチし、モールで攻め込む。体格的に互角あるいは上回る欧州勢相手には通用する戦術であるが、体格的に下回る日本相手には第1テストマッチではモールは封印してきた。このモールで押し込んで左サイドに展開、ビリミ・バカタワからマティス・ルベルにパスがつながる。南アフリカ人の巨漢ゲラード・ファンデンヒーファーと一対一になったが、これをかわして先制トライをあげ、ルクのゴールも決まって7-0。パワーとスピードで先制点を奪ったが、この成功体験がこの後の苦戦につながる。
■キックの応酬から反撃のトライをあげた日本、ペナルティゴールで逆転
第1テストマッチと両チームともに大きく変わったのがキックの多用である。キック合戦となった時に、フランスはロマン・エンタマック、メルバン・ジャミネに代わったマチュー・ジャリベール、マックス・スプリングは飛距離、正確性で発展途上である。この試合でキッカーを務めるルクはスクラムハーフであることからキックをする場合は日本の大型FWが目前に迫っており、どうしてもハイパント気味のキックとなり、距離を稼ぐことができない。最初の給水タイムの後の12分、日本のノックオンで得た自陣でのマイボールスクラム、ジャリベールのキックはファンデンヒーファーの胸に入る。そのまま前進したファンデンヒーファーはタッチライン沿いでフルバックの山中亮平にパス。山中はフランスの守備陣を交わしてトライをあげる。
ゴールは失敗してフランスはリードを保ったものの、日本がその後攻め込み、フランスはゴール前で反則を犯してしまう。時間は19分、10メートルの至近距離から李がペナルティゴールを決めて日本が8-7と逆転、個々からフランスは長い時間リードを許すのである。(続く)