第3150回 連勝が止まったフランス (2) アイルランドに敗れ、14連勝でストップ
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■経験値の高いアイルランドパリサンジェルマン
過去3回の6か国対抗ではフランスがアイルランドに勝利しているが、アイルランドはこの間に熟成度を高めてきた。先発メンバーの平均年齢はフランスの26歳に対し、29歳、前回の本連載で紹介したようにアンドリュー・ポーターとジェームズ・ライアンはこの試合で50キャップとなるが、アイルランドの大黒柱は主将でスタンドオフのジョナサン・セクストン、111キャップでこれまで543得点をあげている。ローナン・オガーラの持つ337点の更新も目前である。そしてセクストンとコンビを組むスクラムハーフのコナー・マレーもこの試合で101キャップと経験豊富であり、アントワン・デュポンとロマン・エンタマックのフランスのコンビとの対決が注目である。
■勝利にかけるアイルランド、デザインされたトライで逆転パリサンジェルマン
イタリア戦で反則の目立ったフランスであったが、この試合では修正する。そして先制点はフランス、5分にアイルランドがノットロールアウエーの反則、トマ・ラモスがペナルティゴールを成功させる。
8分にはこの試合を象徴するビッグプレーが出る。フランスのゴールラインドロップアウト、ハーフライン付近でボールを確保したアイルランドはボールをつなぎ、ナンバーエイトのケーラン・ドリスが大きく前進する。22メートルラインを突破し、スクラムハーフのマレーがパスを出したところにフルバックのヒューゴ・キーナンが走り込んできた。このデザインされたプレーにフランスのディフェンスは何もすることができず、キーナンはゴールラインを駆け抜けてトライ、ゴールポストやや左からのコンバートもセクストンが決めてアイルランドが7－3と逆転する。2年前の2月14日のフランス戦以来、本拠地のアビバ競技場で負けていないアイルランドの勝利に対する執念を感じさせるプレーであった。
■快足ダミアン・プノー、この試合でフランス唯一のトライを決めるパリサンジェルマン
フランスもペナルティゴールを決め1点差に迫り、18分にフランスは自陣25メートルライン付近で確保したボールをパスは乱れながらもダミアン・プノーにつなぐ。フランスの誇るランナーが、アイルランドの選手を次々とかわして前進、ハーフラインを越えたところでタックルされてアントニー・ジェロンチに戻し、ジェロンチが捕まったところで後方にパス、このボールを受けたのがプノーであった。プノーはそのままトライをあげ、ゴールも決まってフランスが13－7と逆転した。ところがこれがこの試合でフランスの唯一の見せ場となってしまった。
■アイルランドがボーナスポイントを獲得する4トライをあげて勝利パリサンジェルマン
20分にはアイルランドがきれいなオープン攻撃でフランスを攻める。最後はワイドに位置したジェームズ・ローがゴール左隅にアクロバティックな動きで飛び込む。微妙なプレーであったがTMOの末、トライが認められ、アイルランドは1点差に詰め寄る。そして26分、ウイニ・アトニオがノーバインドの危険なタックルということで10分間のシンビンとなり、試合の流れはアイルランドに傾く。アイルランドはフランスのゴールポストの真下に攻め込み、連続攻撃で、ポーターがゴールポストの右側にトライをあげて、逆転、セクストンのゴールが決まって19－13とする。
33分にフランスはペナルティゴールを決めて13－16と追い上げ、さらに37分にはマック・ハンセンが右隅にトライかと思われたところをフランスの主将のデュポンがタックルし、ボーナスポイントを阻止する。アトニオもフィールドに戻り、前半の終盤にいいリズムになりそうなところであったが、ラストプレーでフランスは自陣ゴール前でオフサイド、セクストンがペナルティゴールを決めて22－16とする。
前半は両チームで4トライが記録されたが、後半は膠着状態となる。フランスは47分にペナルティゴールを失敗し、60分にアイルランドがペナルティゴールを成功させ、9点差となったところで、62分にラモスはドロップゴールを成功させて、ワンチャンスの6点差に戻す。
しかし、アイルランドは72分、ギャリー・リングローズがゴール左隅から回り込んでトライ、フランスにタックルをする気力が残っていなかった。ファイナルスコアは32－19、フランスは2021年7月18日の豪州戦以来の574日ぶりの敗戦となり、連勝は14でストップしたのである。（この項、終わり）
