第3293回 フランスの至宝、ビクトール・ウェンバンヤマ (2) NBAに衝撃を与えた新人
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■全体1位でサンアントニオ・スパーズに指名されたビクトール・ウェンバンヤマ
フランスでも強豪とは言えないメトロポリタンズ92に所属するビクトール・ウェンバンヤマが世界の注目を集める日がやってきた。2023年6月22日にニューヨークで行われたNBAのドラフトである。 NBAには30チームが所属しており、各チームが2人ずつ指名する。シカゴ・ブルズとフィラデルフィア・76ersは不正取引を行ったため、2巡目の指名権がなく、全体で58人が指名される。1巡目の指名順は5月に抽選が行われ、サンアントニオ・スパーズが全体で1番目、2番目にシャーロット・ホーネッツ、3番目にポートランド・トレイルブレイザーズとなる。この全体1番目で指名されたのがウェンバンヤマであった。
■歴史的な全体1位指名となったウェンバンヤマ
NBAのドラフトでフランス人が全体1位で指名されるのは初めてのことであり、外国人が全体1位となるのも2018年にフェニックス・サンズから指名されたディアンドレ・エイトン(バハマ)以来のこととなる。ただし、エイトンも米国のアリゾナ大学に所属しており、米国以外のチームに所属している選手の全体1位指名は2006年にイタリアのベネトン・トレビーゾに所属していたイタリア人のアンドレア・バルニャーニをトロント・ラプターズが指名して以来17年ぶりのことになった。サンアントニオ・スパーズはかつてフランス人のトニー・パーカーが所属していたが、パーカーもドラフト順位は全体28位であった。 また、全体2位指名はアラバマ大学のブランドン・ミラー、そして前回の本連載で紹介したGリーグのイグナイトに所属するスクート・ヘンダーソンは全体3位であった。なお、全体7位にはウェンバンヤマのメトロポリタンズ92のチームメイトのビラル・クリバリーがインディアナ・ペイサーズに指名され、同日にワシントン・ウィザーズに移籍した。1巡目に米国以外のチームから複数人が指名されるのも快挙である。
■ウェンバンヤマの出場した開幕戦に異例の注目
さて、米国に渡ったウェンバンヤマ、身長は2メートル24センチ、両手を開いたときのウィングスパンは2メートル44センチと規格外を誇る。ビッグマンでありながら俊敏性も兼ね備えた逸材には注目が集まる。デビュー戦は10月25日、サンアントニオのフロストバンクセンターにダラス・マーベリックスを迎える。試合開始のオープニングティップに競り勝つ。23分間出場し、15得点、5リバウンド、2アシストを記録する。 新人としては十分な数字であるが、この開幕戦で記録を作ったのはウェンバンヤマ自身ではなく、ファンである。スポーツ専門チャネルのESPNで放映されたが、平均視聴者数は298万人、これは昨年の開幕カードと比べて83%も多く、ESPNは開幕初日の試合としては歴代2位の視聴者数となった。さらにこのデビュー戦でウェンバンヤマの着用していたユニフォームがサザビーズのオークションにかけられ、76万2000ドルで落札された。当初の落札価格は8万ドルから12万ドルと想定されており、ウェンバンヤマ人気が尋常ならざるものであることがわかる。
■弱小チームで規格外の活躍を続けるウェンバンヤマ
そしてウェンバンヤマの実力は本物である。デビュー戦以来12月1日のアトランタ・ホークス戦まで全試合に出場、2日のニューオーリンズ・ペリカンズ戦は欠場したが、その後は復帰、12月12日までに21試合に出場している。1試合平均で30分間出場、18.6得点、10.6リバウンド、2.6アシスト、2.8ブロックという数字を残している。個別の試合を見ると11月3日のユタ・サンズ戦では38得点を記録する。そして12月8日のシカゴ・ブルズ戦では21得点、20リバウンドを記録する。1試合で20得点20リバウンドを史上最年少で達成した。さらにこの試合は4ブロックの記録し、新人で20得点20リバウンド4ブロックという数字は1992年のシャキール・オニール以来である。 ウェンバンヤマの活躍にもかかわらず、チームは3勝19敗で西カンファレンスで最下位に沈んでいる。将来、ウェンバンヤマの移籍が実現すれば、大谷翔平の数字を抜くことも可能であろう。(この項、終わり)