第3456回 秋の陣に臨むラグビーフランス代表(2) 相次ぐ事件、アルゼンチンに8年ぶり敗戦
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■メルバン・ジャミネ、人種差別発言をSNSに投稿
昨年のラグビーワールドカップの準々決勝で南アフリカに敗れてから初めての南半球勢との対戦となった7月6日のアルゼンチン戦、フランスは大量の新人とカムバック組の活躍で28-13と勝利した。しかし、この試合の後、事件が相次いだ。
まず、FBのメルバン・ジャミネが自身のSNSにアラブ人を差別する発言をしている動画を投稿した。この投稿が地球の反対側のフランス本国では炎上した。所属するトゥーロン、フランスラグビー連盟、」フランスプロラグビーリーグはそれぞれジャミネの行為は許されないと表明、ジャミネは代表チームから追放され、帰国の途に就くことになった。
■ウーゴ・オラドゥとオスカル・ジェグが女性への暴行で逮捕
さらに衝撃は続く。アルゼンチン戦でデビューを果たしたウーゴ・オラドゥとオスカル・ジェグが試合の日の夜にホテルで女性に暴行したと訴えられた。この事件に関しては現地当局の動きが速かった。フランス代表チームは7月10日にはテストマッチではないがウルグアイと試合を行うため、アルゼンチンをいったん出国する。したがって、国外逃亡の可能性があるため、ウルグアイへ出国する前日の8日の月曜日に2人を逮捕した。
遠征先での代表選手の逮捕という事件に対し、フランス側も対応が早かった。逮捕された日にはフランスラグビー連盟のフローリアン・グリル会長がパリから駆け付ける。アルゼンチンラグビーのレジェンドであり、フランスリーグのスタッド・フランセやラシン92でも活躍したアウグスティン・ピチョットと連絡を取り、現地で弁護士を手配した。
この事件は被害者女性は激しい暴行を受けて複数個所を負傷したと訴えたが、2選手は合意の上での行為であり、負傷の後は認められないと主張は対立した。2選手はアルゼンチンとの第2テストの直前の12日に訴追され、代表チームが帰国した後もメンドーサに拘留された。
■暴行で逮捕された2人の罪は棄却、ジャミネは34週間出場停止
事件は思わぬ方向に展開した。8月末に裁判が行われたが、被害者女性は自殺未遂を起こして、裁判を欠席する。そして9月3日に現地の裁判所は女性の訴えは説得力不足ということで、裁判は結了していないが、2選手の出国を認め、同日、2人はブエノスアイレスから帰国の途についた。事件は10月4日に終わる。アルゼンチンの検察は2人の暴行に関する罪の棄却を勧告したのである。オラドゥは5日には所属するポーのペルピニャン戦に出場している。一方、ラロッシェルに所属するジェグは昨年もコカイン陽性で出場停止処分を受けた前科もある。いまだに今季の出場は認められていない。
一方、人種差別発言をしたジャミネはフランスラグビー連盟から3万ユーロの罰金を科され、34週間出場停止処分となっている。
■ウルグアイには勝利したが、アルゼンチンには逆転負け
このような激震が7月6日の第1テストの後に襲ったフランス代表であるが、10日にウルグアイのモンテビデオで行われたテストマッチ対象外のウルグアイ戦を迎える。この試合もフランスはノンキャップの選手が7人先発、主将はSHのバティスト・クイユーが務める。精神的なショックがあり、トライ数は両チームとも4本であったが、フランスが43-28と勝利した。
地力に差があるウルグアイは押し切れても、アルゼンチンには通用しなかった。13日にブエノスアイレスで行われた第2テストでフランスはいかなかった。フランスは女性に対する暴行で逮捕された2人以外の13人は第1テストと同じメンバーで臨む。主将を務めるバティスト・サランが第1テストに続いてトライをあげてフランスは先制したが、アルゼンチンに5トライを奪われる。フランスは3トライにとどまり、25-33と敗れてしまう。フランスがアルゼンチンに敗れたのは2016年6月19日以来8年ぶりのことであるが、フランスチームで8年前のこの試合にも出場したいたのはサランだけ、そしてこの試合でサランは初キャップを獲得した。
ピッチ外の事件が相次いだとはいえ、代表デビューの地で主将を任された遠征は苦い経験となったのである。(続く)