第3504回 2025年6か国対抗開幕 (1) 1か月半の戦いに向けて42人を選出
■1月末に開幕する6か国対抗、イレギュラーな昨年のフランスは2位
チャンピオンズリーグなどの欧州カップの大会形式の変更に伴い、1月にもサッカーの国際試合が行われるようになった。毎年行われるイベントとして、かつてはパリ・ダカールラリーがあったが、ダカールラリーと名称を変更、現在はサウジアラビアでの1国単独開催となっている。その中で、毎年開催される国際スポーツイベントと言えば、ラグビーの6か国対抗である。今年は1月31日に開幕し、3月15日まで戦いが繰り広げられる。
本連載では昨年秋のフランス国内でのテストマッチについて紹介したが、やはりファンの注目を集め、選手、スタッフの意識も高いのは6か国対抗である。
フランスに関しては昨年はパリオリンピックが開催されたため、7人制に出場する主将のアントワン・デュポンが不在、そして本拠地のスタッド・ド・フランスもパリオリンピックの準備のため使用できず、マルセイユ、リヨン、リールでホームゲームを行った。このようなイレギュラーな状態で臨み、優勝したアイルランド戦に初戦で敗れ、3勝1分1敗という成績で2位となった。
■ラバ・スリマニ、2019年のラグビーワールドカップ以来の復帰
今年はデュポンも復帰、スタッド・ド・フランスでホームゲーム3試合を行う。今大会に向けて、ファビアン・ガルティエ監督は1月15日に42人のメンバーを発表した。もちろん主将はデュポンである。この42人のうちから試合ごとにメンバーを選択し、負傷者やチーム事情に応じて選手を入れ替えていくが、1月半にわたる大会に向けた監督のグランドデザインを表したものである。
その中でなんと言っても注目を集めたのはプロップのラバ・スリマニの復帰であろう。2019年のラグビーワールドカップを最後にフランス代表から離れ、35歳となった右プロップであり、もしウェールズ戦に出場するとなれば、実に1914日ぶりの代表復帰となる。プロップ陣には負傷者が相次ぎ、スリマニに声がかかった次第である。スリマニは現在はアイルランドのレンスターに所属、欧州チャンピオンズカップでも活躍している。
■スタンドオフにはロマン・エンタマックが復帰
そして同じく復帰組として期待がかかるのがロマン・エンタマックである。所属チームのトゥールーズでもデュポンとコンビを組むスタンドオフは、2023年の夏以来の復帰となった。エンタマック不在の1年半のフランス代表のスタンドオフは2023年のラグビーワールドカップではマチュー・ジャリベールとアントワン・ハストワでまかない、それ以降は本来はFBのトマ・ラモス、あるいはスクラムハーフのデュポンを暫定的に起用したこともあり、エンタマックの復帰の意味は大きい。
■代表初招集となったダックスのノア・ネネ
一方の新戦力であるが、代表出場歴のない数人のうち、代表初招集はセンターのノア・ネネだけである。20歳のネネは190センチを超える巨漢、スタッド・フランセから2部のダックスにレンタル中であり、2部の選手で唯一代表入りした。また、ダックスと言えば、1985年にフランスと日本が対戦した都市であるから、日本の皆様はよくご存じだと思われるが、1部から陥落して15年たつ。久しぶりの代表選手ということで、協会からの発表の前にクラブはネネの代表入りを告知している。
そして物議をかもしたのが昨年の南米遠征で女性から性的暴行で訴えられたウーゴ・オラドゥとオスカル・ジェグの代表入りである。本連載の第3456回で紹介した通り、原告側の女性の証言に矛盾があったことから証拠不十分ということで事件の起こったアルゼンチンの裁判所は不起訴とし、2人は法的には無罪となった。オラドゥはポー、ジェグはラロッシェルというそれぞれの所属チームでは復帰しているが、2人の代表復帰には疑問を持つ意見も少なくない。2人と同時期に人種差別的な発言で代表から外されたフルバックのメルバン・ジャミネは8か月半の出場停止処分中である。(続く)