第3534回 2025年6か国対抗優勝 (7) 驚異的な得点力を誇るフランス
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■アイルランドの3連覇を阻止したフランス
前回までの本連載で紹介した通り、今年の6か国対抗はフランスが3年ぶりの優勝を果たした。アイルランドは3連覇を狙い、開幕から英国圏のチーム相手に3連勝し、トリプルクラウンを早々に達成し、今季も優勝かと思われた。しかし、そのアイルランドを第4節でアウエーでフランスが倒したところから、大きく状況が変わり、最終節は試合ごとに首位が入れ替わるというスリリングな展開となった。このような順位争いという観点からファンが興奮する内容であったが、試合内容に関しても今回の大会は大きな意味のある大会であった。今年の6か国対抗のまとめとして、今大会で生まれた記録や数字を紹介しよう。
■大会史上最多得点、最多トライとなった今大会
ラグビーはルール改正がしばしば行われている。競技の特性上、選手の身体を守るという安全上のルール改正も少なくないが、競技の普及のために、よりエキサイティングな競技となるようなルール改正も存在する。その結果として、得点が多くなるようなルール改正も行われている。
今大会は15試合で829得点、108トライが生まれた。いずれも6か国対抗となってからの最多記録となった。これまでの記録は得点に関しては2000年大会の803得点、トライに関しては2023年大会の91トライであった。2000年大会は従来の5か国にイタリアが加わって6か国対抗として最初に行われた大会であったが、初参戦のイタリアは初戦でスコットランドに勝利したが、5試合で228失点を喫しており、これが多くの得点が生まれた理由である。これに対して今大会は全敗のウェールズの総失点は195点にとどまったが、優勝したフランスが30トライ、2位のイングランドが25トライと上位チームの攻撃力は特筆すべきものがあった。
このフランスの30トライも1大会での最多トライ記録となった。従来の記録は2001年大会のイングランドの29トライであった。
■5試合連続、1大会で歴代最多の8トライをあげたルイ・ビール・ビアレイ
この30トライのうちの8トライをあげたのがトライ王となったルイ・ビール・ビアレイである。この1大会8トライも新記録である。これまでの記録は7トライであり、2018年大会のアイルランドのジェイコブ・ストックデールが記録している。また、8トライという記録は5か国対抗以前の時代でも1914年のイングランドのシリル・ロー、1925年大会のイアン・スミスまでさかのぼらなくてはならず、100年ぶりの偉業となった。
また、ビール・ビアレイは今大会の5試合すべてでトライをあげている。本連載第3532回で紹介した通り、イングランドのトミー・フリーマンも同様に5試合すべてで1トライずつ記録している。6か国対抗となってから5試合すべてでトライを記録したのはこれまで2001年大会のフランスのフィリップ・ベルナ・サレスだけであり、ウェールズ戦で24年ぶりのヒーローとなったフリーマンとイングランド代表チームであるが、その数時間後、フランス代表のビール・ビアレイに主役の座を奪われてしまった。
■3年連続の得点王となり、フランス代表史上通算最多得点を記録したトマ・ラモス
そしてラグビーにおいてトライと並んで得点源となっているのがキックである。フランスでキッカーを務めていたのがトマ・ラモスである。もともとフルバックの選手であるが、スタンドオフもこなし、ピッチに立っている間はキッカーを務めていた。今回の6か国対抗でも全試合に出場し、1トライ、21ゴール、8ペナルティゴールとあわせて71点をあげている。2位がイタリアのトンマーゾ・アランの45点ということから、その得点力の高さがわかる。ラモスは昨年も63点、一昨年も84点を上げ、3年連続で6か国対抗の得点王に輝いている。
そのラモスはスコットランド戦では2年ぶりのトライをあげるとともに、7本のキックのうち6本を成功、20点を上積みして、代表通算得点を450点に伸ばし、フレデリック・ミシャラクの持っていた代表通算得点記録の436点を大幅に更新した。
このように驚異的な得点力でフランスは3年ぶりの優勝に輝いたのである。(この項、終わり)