第2344回 親善試合3戦無敗で本大会へ(3) 予選落ちのイタリア、マリオ・バロテッリが代表復帰

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■60年ぶりにワールドカップで予選落ちしたイタリア

 ワールドカップ直前の親善試合の初戦、アイルランドに2-0とスタッド・ド・フランスで勝利し、代表経験の少ない選手も能力を見せることができた。ディディエ・デシャン監督は第1戦と第2戦は選手のテストに起用する方針である。ニースのアリアンツアリーナで行われる第2戦の相手はイタリアである。今大会の予選の最大の驚きはイタリアの予選敗退であろう。本連載第2271回で紹介したとおり、グループGでスペインに及ばず2位、プレーオフでスウェーデンと対戦し、1分1敗で敗れ、60年ぶりにワールドカップ本大会に届かなかった。そのイタリアは予選敗退後にジャンピエロ・ヴァントゥーラ監督を解任、アンダーエイジの監督のルイジ・ディ・ピアージョが暫定監督として指揮を執って3月にアルゼンチン、イングランドと対戦し、アルゼンチンに敗れ、イングランドと引き分けている。

■5月に新監督に就任したロベルト・マンチーニと3つの親善試合

 ようやく5月に監督が正式に決まり、ロベルト・マンチーニに決定した。1990年代のサンプドリアの栄光を支えた元代表選手で、引退後はクラブチームの監督を歴任している。5月20日に監督に就任したマンチーニには5月末から6月にかけて3つの親善試合が待ち受けている。5月28日にはサウジアラビア、6月1日にフランス、4日にオランダと対戦する。サウジアラビアとフランスはワールドカップに出場するチームであるが、最後のオランダはイタリア同様にワールドカップ出場を逃したチームである。

■代表から外れた悪童マリオ・バロテッリ

 就任間もないマンチーン監督がどのようなメンバーを選ぶかが、注目されたが、その目玉がマリオ・バロテッリであった。悪童と言われるバロテッリはインテルミラノでプロとして頭角を現す。しかしながらピッチ内外で度重なるトラブルを起こし、チームメイトやファンから疎まれ、イングランドのマンチェスターシティに移籍する。この時のマンチェスターシティの監督がマンチーニであった。マンチーニはバロテッリがインテルミラノに所属していた時も監督を務めており、いわばバロテッリの良き理解者であり、良き指導者であった。バロテッリはマンチャスターシティに在籍時にプレミアリーグ、FAカップでの優勝を経験している。マンチーニ監督はバロテッリの能力を高く評価するとともに、精神面から来るトラブルの多発には厳しく対応していた。その後もACミラン(イタリア)、リバプール(イングランド)とチームを変わったが、才能と行動のアンバランスは消えなかった。
 マンチェスターシティ時代の2010年にイタリア代表に初めて招集され代表チームでもクラブチーム同様であり、高い能力とパフォーマンスは示したものの、ピッチでのトラブルは絶えなかった。2012年の欧州選手権、2014年のワールドカップには出場し、4年前のワールドカップを最後に代表から声がかからなくなってしまった。

■復帰初戦で見事先制ゴールを決め、恩師の初陣勝利に貢献

 そのイタリアであるが2014年のワールドカップはグループリーグで敗退、2016年の欧州選手権もベスト8どまりと、勢いを失っている。そして今回の予選敗退となり、ファンの間からバロテッリの待望論が沸き起こってきた。フランス代表の不調時にカリム・ベンゼマを復帰させるべきであるという声が高まるのと同じ構図である。デシャン監督は規律を重んじベンゼマの復帰を認めてこなかったが、イタリアのマンチーニ新監督が規律を重んじないわけではない。マンチェスターシティ時代には厳しく接してきた。しかし、60年ぶりのワールドカップ予選落ちというチーム状況、さらにニースに移籍したバロテッリが所属チームで活躍していることからマンチーニ監督はバロテッリを復帰させたのである。  そしてバロテッリは復帰初戦となるサウジアラビア戦で先制点をあげ、マンチーニ監督の初陣を白星で飾る原動力となったのである。(続く)

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