第67回 連覇を目指す23人(3) ジブリル・シセ、本大会直前に電撃代表入り
■期待のシセ、ついに代表入り
連覇を目指す23人の代表選手の中で最大の注目選手はフランスリーグ得点王と最優秀若手選手に輝いたオセールのジブリル・シセである。1981年8月12日生まれのシセは弱冠20歳。昨年アルゼンチンで開催されたワールドユースで6得点をあげる活躍したことはよくご存知であろう。その後代表選手が発表されるたびに話題になり、フランスのクラブに所属する若手選手の代表入りを期待したが、ファンの思いは伝わらず、シセがフル代表入りすることはなかった。
■極めて異例な本大会直前の代表入り
そのシセに朗報が届いたのはリーグ最終節を前にした5月初めのことである。リーグ終了後から開始されるフランス代表のティーニュでの合宿に招集されることになったのである。ワールドカップ本大会直前の代表メンバー入りは極めて異例のことである。過去のワールドカップを振り返ってみよう。前回のフランス大会の際に本大会の年に代表デビューしたのはダビッド・トレゼゲただ一人であった。当時、トレゼゲはティエリー・アンリと同じく20歳で現在のシセと同じ年である。しかし、トレゼゲはスタッド・ド・フランスの柿落としとなる1998年1月28日のスペイン戦でデビューしてから親善試合で経験を積み、ワールドカップ初戦となる南アフリカ戦はすでに代表6試合目であった。もう一人の20歳のアンリもワールドカップ前年の秋に代表デビューし、フランスワールドカップまでに3試合でブルーのユニフォームを着ている。
■本大会での代表デビューはわずか6人
シセはすでにベルギー戦で代表デビューしているが、代表デビューがワールドカップ本大会、というケースは長いフランス代表の歴史を振り返っても非常に数少なく、過去にわずか6人しかいない。しかもその半数はいわゆる消化試合での代表デビューである。最近では1986年メキシコ大会のアルベール・ルスト、1978年アルゼンチン大会のドミニク・ドロプシーという2人のGKがワールドカップで代表デビューしているが、ルストは3位決定戦、ドロプシーは一次リーグで連敗し、二次リーグ進出が絶望となった一次リーグ最終戦でデビューしており、それまで出番のなかった控えのGKを消化試合で起用している。さらにルストは代表デビュー時の年齢が32歳8か月という代表デビュー最年長記録を更新した。また、1958年スウェーデン大会の3位決定戦の西ドイツ戦でもモーリス・ラフォンが代表にデビューしている。
一方、大会初戦で代表デビューというのは1938年フランス大会1回戦のベルギー戦のジャン・バスティアン、1954年ブラジル大会のグループリーグ初戦のユーゴスラビア戦でのレイモン・カールベル、1966年イングランド大会のグループリーグ初戦のメキシコ戦でのガブリエル・ド・ミッシェルの3人である。
しかし、これらの古い事例とシセを比較することはあまり意味がないと思われる。むしろ代表歴が少ない段階でワールドカップ本大会を迎え、その大会で活躍した選手の姿をシセに重ね合わせるべきであろう。(続く)