第76回 ウルグアイと引き分け、瀬戸際に(3) 2点差以上の勝利が必要なデンマーク戦
■グループ最下位と苦しむ前回王者フランス
グループAでは各チームとも2試合終了し、デンマークとセネガルが、勝ち点4、フランスとウルグアイが勝ち点1となった。フランスの得失点差は-1でウルグアイと並ぶが、総得点は0でウルグアイの1に及ばず、前回王者は最下位に低迷している。
6月11日の最終戦はフランス-デンマーク、セネガル-ウルグアイという組み合わせである。フランスが決勝トーナメントに進出するためにはデンマークに勝ち、勝ち点を4に伸ばすことが最低条件である。また、デンマークに勝っても1点差の勝利では得失点差でデンマークと並ぶが、総得点でデンマークに及ばないため、デンマークより下位になる。フランスがデンマークに得失点差あるいは総得点で及ばない場合、セネガルが引き分け以上の成績を残して、勝ち点を5以上に伸ばしたり、ウルグアイが2点差以上でセネガルを破り得失点差を+1以上にしたりするとフランスはグループ3位となり、ユーラシア大陸でアジアでのワールドカップを終えることになる。
■デンマーク戦では2点差以上の勝利が必要
したがって、フランスは2点差以上でデンマークに勝てば、セネガル-ウルグアイ戦の結果に関わらず対馬海峡を渡ることができるのである。また、フランスにもグループリーグ1位という可能性が残されている。これはフランスが2点差以上でデンマークに勝ち、ウルグアイがそれ未満の点差でセネガルに勝った場合、4チームが勝ち点4で並ぶが、得失点差でフランスは残り3チームを上回るため、グループ首位となる。参考までに述べるとフランスがデンマーク戦2点差以上の勝利以外で決勝トーナメントに進出するケースは、フランスが1点差で勝ち、ウルグアイもセネガルに1点差で勝ち、フランスの得点がウルグアイの得点よりも2点以上多い場合、例えばフランスが3-2で勝利、ウルグアイが1-0で勝利した時のみ決勝トーナメントに進出するが、あくまでも自力で2点差での勝利を追求するべきであろう。
■出場停止・負傷で3人を欠く布陣
さて、デンマーク戦の2点差の勝利ということは可能なのであろうか。もちろん決して不可能ではないが、まずネガティブな要素を考えてみよう。
デンマーク戦に出場停止となるのがセネガル戦とウルグアイ戦で1回ずつ警告を受けたエマニュエル・プチとウルグアイ戦で退場処分となったティエリー・アンリである。ロベール・ピレスの代役であるアンリならびにCKやFKのキッカーであるプチの欠場は2試合連続して無得点という得点力不足をさらに深刻にするものである。一方、守備陣ではウルグアイ戦で負傷退場したフランク・ルブッフは回復が思わしくなく、前回大会でローラン・ブランの代役として決勝戦のピッチに立っていたベテランを欠くことになる。
■1992年欧州選手権・スウェーデン大会での悪夢
また、決勝トーナメント進出をかけてデンマークとグループリーグ最終戦で対戦する、というのは1992年の欧州選手権スウェーデン大会の悪夢を思い出してしまう。この大会では予選でグランドスラムを達成し、「優勝候補ナンバーワン」という鳴り物入りでスウェーデン入りする。アルゼンチンを優勝候補と推す声の高い今大会以上に期待を集めていた。グループリーグの初戦で開催国のスウェーデン、第2戦で強豪イングランドと引き分け、手堅く勝ち点を重ね、最終戦を迎える。最終戦の相手はユーゴスラビアに対する制裁措置で代替出場し、1分1敗という成績のデンマーク。誰もがフランスの勝利と決勝トーナメント進出を期待していたが、フランスは1-2で競り負け、優勝候補がまさかのグループリーグ敗退となり、ミッシェル・プラティニ監督は辞任、主将のマニュエル・アモロスは代表出場試合82という新記録を打ち立てながら、涙の帰国となってしまったのである。
もちろん、デンマークにとっては1点差以内の敗戦でも、セネガル-ウルグアイ戦で両チームが大量得点し、ウルグアイが1点差勝ちしない限り、決勝トーナメント進出が決まる。精神的に優位に立つデンマークにフランスは2点以上の差をつけて勝つことはできないのだろうか。(続く)