第93回 アジアで活躍したフランスのクラブの選手(5) 南米の両雄、ブラジルとアルゼンチン

■北中米・南米の代表選手の7人がフランスのクラブに所属

 今回のワールドカップに出場したフランスのクラブに所属する選手の国別の分布はアフリカ(35人)、欧州(14人)が大多数を占めるが、欧州に並ぶ二大勢力である南米と3か国中2チームが決勝トーナメントに進出した北中米・カリブ海地域に残りの7人が分布している。南米については、優勝国のブラジルに2人、優勝候補だったアルゼンチンに2人、連続出場となったパラグアイに1人、フランスのクラブに所属している選手がいる。北中米・カリブ地域の常連である米国とメキシコには、フランスのクラブに所属している選手がそれぞれ1人いる。

■個人技が印象的なロナウジーニョとエジミウソン

 今回はそのうち南米の二大勢力であるブラジルとアルゼンチンの選手でフランスのクラブに所属している4人を紹介しよう。
 ブラジルはロナウジーニョ(パリサンジェルマン)とエジミウソン(リヨン)が優勝の原動力となった。19歳で代表入りしたロナウジーニョは代表に入って3年目の昨年夏、生まれ故郷のポルトアレグレのグレミオからパリサンジェルマンに移籍し、攻撃の軸となった。エジミウソンは代表入りした直後の2000年夏にサンパウロからリヨンに移籍し、2シーズン目にはリーグ制覇を果たした。2人とも勢いのあるフランスのチームで活躍する機会を与えられ、欧州での生活がまだ浅いこともあり、実に「ブラジル的」なプレーを見せてくれる。特にパリサンジェルマンは1990年代の初めにバウドやリカルド・ゴメスを獲得して以来、優秀なブラジル人選手を獲得する伝統が根付き、ロナウジーニョもその系譜を引き継いでいる。
 ロナウド、リバウドと並び3Rの1人であったロナウジーニョの準々決勝イングランド戦での卓越した個人技は強烈な印象を残した。前半ロスタイムの見事なドリブルがリバウドの同点ゴールにつながり、後半早々には30メートルのFKを直接ゴールに決め、これが決勝点となった。この試合ロナウジーニョは57分に危険なプレーで退場処分を受けてしまったことは残念である。準決勝は出場停止となったものの、決勝では背番号11が復活し、王座に輝いた。マンチェスター・ユナイテッドやバルセロナが触手を伸ばしていると言うが、本人もパリサンジェルマンを気に入っており、来季もパリでの活躍を期待したいものである。
 一方のエジミウソンは守備の中心として中国戦以外でフル出場した。大型DFとして守備を支えただけではなく、コスタリカ戦では得点をあげ、今大会爆発的な得点力を誇ったブラジルチームの中で唯一DFとして得点を記録している。エジミウソンは欧州のビッグクラブへの移籍を視野に入れており、本人はレアル・マドリッドを希望している。

■無念の敗退、マウリシオ・ポチェッティーノとマルセロ・ガジャルド

 グループリーグで姿を消した優勝候補・アルゼンチンの守備の要となったのがロナウジーニョのパリでの同僚、マウリシオ・ポチェッティーノである。ブラジルの若い2人に比べて年齢が30歳であるだけではなく、1994年にはアルゼンチンのニューウェルス・オールドボーイズからスペインのエスパニョ-ルに移籍する。エスパニョ-ルには日本代表の攻撃の中心である西澤明訓が所属していたことから、日本の皆さんもよくご存知であろう。エスパニョ-ルでの5年目の1999年に代表入り、2001年の初めにパリサンジェルマンに移籍し、守備の中心となっている。アルゼンチンの守備の中心としてフル出場したが、健闘空しく死のグループを勝ち抜くことができなかった。しかし、パリではルイ・フェルナンデス監督の信望も厚く、来季は元フランス代表のフレデリック・デウに代わり主将を任されることになっている。フェルナンデス監督は「11人のポチェッティーノがいれば」と発言しているように監督と選手を結ぶ重要な役割を任されたのである。また、昨年パリサンジェルマンの選手は給与に関する報道を巡り、1か月間プレス対応を拒否したと言う事件があったが、ポチェッティーノの主将就任により、プレスとの関係も改善されるであろう。
 アルゼンチンからもう1人選出されているマルセロ・ガジャルドはモナコに所属している。リバープレートに所属していた前回大会は日本戦こそ出場しなかったものの、3試合に出場している。1999年にモナコに移籍し、移籍初年に活躍し、リーグ制覇の原動力となった。今大会は前大会と同じ背番号20を背負ったが、出場機会に恵まれず、日本を去った。モナコ優勝の立役者の姿を日本の皆さんがご覧になれなかったのは残念である。(続く)

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