第366回 ワールドカップ予選初戦のメンバー(2) 経験不足の守備陣で臨む秋の陣

■9月、10月に行われる4試合

 9月4日からワールドカップ予選が始まる。フランスはイスラエル、フェロー諸島、アイルランド、キプロス、スイスと同じグループ4に入った。9月4日にホームでイスラエル戦、続いて8日にはアウエーでフェロー諸島戦、そして10月に入ると9日にホームでアイルランド、13日にアウエーでキプロスと戦う。この1か月半の間、親善試合を組む日程的な余裕はなく、ボスニア・ヘルツェゴビナとの親善試合を行った後でいきなり公式戦を4試合連続して戦うことになる。ボスニア・ヘルツェゴビナ戦はドローという結果だけではなく、低調な内容に終わっている。

■初戦白星、準備期間1年でも予選を勝ち抜けなかった30年前

 前回の本連載で紹介した1973年9月8日のギリシャとの親善試合には7人の選手が代表にデビューしたが、それでも3-1と完勝している。そして翌年の秋から始まる1976年欧州選手権予選に向けて精力的に親善試合をこなしたものの、欧州選手権予選グループ7での成績は1勝3分2敗、ベルギー、東ドイツに及ばず3位に終わり、低迷から抜け出すことはできなかった。30年前の事例を考えてみれば、今回、大量5人の新人を加えて初戦がドロー、しかもメンバーの半数以上が代表歴10試合以下という経験不足のチームが2週間後から集中的に開催される予選に挑むということはファンにとって不安以外のなにものでもない。

■ボスニア・ヘルツェゴビナ戦で代表入りした7人中5人がメンバー入り

 そのような不安の中でイスラエル戦の1週間前の8月26日にイスラエル戦とフェロー諸島戦に臨む20人の選手が発表された。ボスニア・ヘルツェゴビナ戦の際はイタリアならびにスペインのクラブに所属する選手はリーグが開幕しておらず、体調が不十分なため招集を見送っているが、今回はそのような事情もない。その結果、今回のメンバー選考は国外のビッグクラブに所属する中堅選手の中にどれだけレイモン・ドメネク監督が育てた国内の若手選手が入り込むかが注目の的となった。
 ボスニア・ヘルツェゴビナ戦の際は21人の選手が招集されたが、メンバーに3人が加わり、4人が外れ、今回の20人のメンバーとなった。代表に加わったのは守備的MFのクロード・マケレレ、攻撃陣のダビッド・トレゼゲ、ルドビック・ジウイーである。トレゼゲはイタリアのユベントス、ジウイーはスペインのバルセロナに所属することからボスニア・ヘルツェゴビナ戦のメンバーから外れ、マケレレは戦術的な理由から外れていた。一方、メンバーから外れたのはDFのアントニー・レベイエール、MFのリオ・アントニオ・マブーダ、FWのピエール・アラン・フローとシドニー・ゴブーである。このうちマブーダとフローはボスニア・ヘルツェゴビナ戦で代表にデビューしている。逆に言うと8月18日の試合で初めてフランス代表入りし、ピッチに立ったエリック・アビダル、パトリス・エブラ、ガエル・ジベ、セバスチャン・スキラッチと、ベンチで戦いを見たアルー・ディアラの5人は、サンドニのスタジアムでブルーのユニフォームを着用することになる。
 ポジション別にメンバーを紹介するとGKはファビアン・バルテスとグレゴリー・クーペ、DFはジャン・アラン・ブームソン、ウィリアム・ガラス、ベルナール・メンディ、アビダル、エブラ、ジベ、スキラッチの7人、MFはブルーノ・ペドレッティ、ロベール・ピレス、ジェローム・ロタン、パトリック・ビエイラ、マケレレ、ディアラの6人、FWはジブリル・シセ、ティエリー・アンリ、ペギー・リュインデュラ、トレゼゲ、ジウイーの5人である。

■経験不足のメンバーばかりになったDF陣

 この中で注目すべきはDF陣であろう。選出された7人のうち半数以上の4人はボスニア・ヘルツェゴビナ戦で代表デビューしたメンバーである。また残る3人の代表歴はメンディが2試合、ブームソンは7試合、ガラスが21試合という状況である。すなわち代表歴は7人あわせてもわずかに34試合、今回引退したビシャンテ・リザラズ、マルセル・デサイー、リリアン・テュラムの出場数が100前後であったことを考えれば経験不足を心配しないほうがおかしい。一方の攻撃陣はトレゼゲ、ジウイーを復帰させるなどある程度の経験をつんだ選手が名を連ねている。一昨年のワールドカップではジネディーヌ・ジダンの不在時の攻撃、今年の欧州選手権では守備陣の高齢化が話題となった。守備陣では3人のベテランが一気に引退したが、その後任との間にあまりにも差があるのではないだろうか。心配は尽きないが、キックオフは待ったなし、9月4日からの4試合で審判が下されるのである。(この項、終わり)

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