第382回 アイルランドと5度目の対戦 (3) 1990年以来3度の本大会出場

■英国4協会に遅れを取ったアイルランド

 前回紹介したように、フランスは今までに4回アイルランドとワールドカップ予選で対戦しており、その戦績は4勝1分3敗とほぼ互角であるが、フランスはそのうち3度は本大会出場の切符を手中にしているのに対し、アイルランドは一度も本大会に出場したことがない。アイルランドが長い間ワールドカップに出場できなかった間に、英国の4協会はすべてワールドカップに出場し、老舗のイングランド、スコットランドはコンスタントに出場し、ウェールズも1958年大会に出場している。そして何よりも同じ島の北アイルランドは1958年大会に初出場、1982年大会、1986年大会にも本大会出場を果たしている。英連邦から脱退したアイルランドにとって英国4協会が次々にワールドカップ本大会に出場しており、本大会出場は悲願であった。そのアイルランドがワールドカップ出場を初めて果たしたのが1990年イタリア大会のことであった。

■フランス-スコットランド戦を控えて組まれた親善試合

 アイルランドがワールドカップ初出場を決めた米国予選中の1989年2月7日にフランスとアイルランドは37年ぶりの親善試合を行っている。この親善試合はフランスの苦しい状況が伏線となっている。1988年の欧州選手権本大会出場を逃したフランスは1988年秋から始まったイタリアでのワールドカップ予選が始まっても不振が続く。初戦のパリでのノルウェー戦こそ勝利したものの、アウエーのキプロス戦ではまさかの引き分けとなり、アンリ・ミッシェル監督を更迭、ミッシェル・プラティニを新監督にすえる。しかしながら、アウエーのユーゴスラビア戦でも2-3と敗れ、1勝1分1敗という成績で革命200周年となる1989年を迎える。3月にグラスゴーでのスコットランド戦が予定されており、フランスはスコットランド戦の必勝を期して、英国系のチームと2試合、親善試合を組む。
 その1試合目がダブリンでのアイルランド戦であり、プラティニ監督はパトリック・バチストンをリベロに配し、ストッパーを2人置くという5バックシステムを採用する。またフランク・シルベストル、ローラン・ブランを新たに代表に招集し、心機一転を図るが、結局試合はスコアレスドローとなり、これがフランスとアイルランドの最後の対戦である。アイルランド戦でチームを立て直すことができなかったフランスは続くアーセナルとの試合にも敗れ、スコットランド戦は0-2と完敗してしまう。フランスはその後若手選手の成長もあり、巻き返すが、結局イタリア行きのチケットを得ることはできなかった。

■初出場のイタリア大会でベスト8

 一方のアイルランドは見事にワールドカップ初出場、グループリーグの初戦では宿敵イングランドとの戦いをドローに持ち込み、エジプト、オランダとも引き分けて、決勝トーナメントに進出する。決勝トーナメントでは1回戦でルーマニアを破ってベスト8進出、ローマのオリンピックスタジアムで行われたイタリア戦は惜敗しているが、旋風を巻き起こした。またこのアイルランド-イタリア戦はイタリア遠征中のパリサンジェルマンの選手も観戦しており、ダブリンの試合でチームを立て直すことができれば、観戦ではなく参戦をしていたであろうと悔しさをかみしめたであろう。

■コンスタントに本大会出場、2万5000枚のチケットがアイルランドへ

 イタリアでの戦いで手ごたえを感じたアイルランドはここで上昇気流に乗り、1994年、そして2002年にも本大会に出場している。1990年以降、英国4協会から本大会に出場したのはイングランドが3回(1994年、1998年、2002年)、スコットランドが2回(1990年、1998年)だけであり、3回出場しているアイルランドは母国イングランドと互角の数字を残している。
 今大会予選でも第1戦はホームでキプロスに3-0で勝利、第2戦はアウエーでスイスと1-1のドローであり、得失点差で2位ではあるものの、首位のスイスとアウエーで引き分けていることを考えれば、実質トップであると考えてもおかしくない。フランスと引き分け以上ならば、ドイツ行きに大きく前進するとあって、2万5000枚のチケットがアイルランドに渡っている。天王山とも言うべき一戦、日本でもアイルランドトロフィーが予定されている10月9日の21時にキックオフである。(続く)

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