第383回 アイルランドと5度目の対戦 (4) 痛恨のスコアレスドロー

■フランスの最大のライバル、アイルランド

 ワールドカップ予選の組み分け抽選以降、フランスにとって最大のライバルはこの第2シードのアイルランドであることはサッカーファンならずとも万人の認識が一致するところである。アイルランドと予選で同グループになってから、アイルランドの対する関心が高まり、今年の夏はルバロワに住むことができるような高所得者層を中心にアイルランドでバカンスを取ることが流行した。またかつて東京で活躍したマリー・ロール・セルブールが今季からダブリンにその活動の中心を移したことは日本の皆様ならばよくご存知であろう。

■メンバーを入れ替えたレイモン・ドメネク監督

 アイルランド戦、キプロス戦に向けて、レイモン・ドメネク監督は20人のメンバーを9月30日に発表した。これまでの苦戦の経験から、ドメネク監督は経験の多い選手を重用し、シルバン・ビルトール、ダビッド・トレゼゲ、オリビエ・ダクール、ミカエル・シルベストルを復帰させ、ジェローム・ロテン、ルイ・サア、ペギー・リュインデュラをメンバーから外した。しかしなんと言っても直前のフェロー諸島戦で主将を務めたパトリック・ビエイラは退場処分となり、20人のリストの入ってはいるものの、アイルランド戦は出場停止であり、アイルランド戦は19人のメンバーで戦うことになる。

■唯一代表出場歴のないジョナタン・ゼビナ

 この20人に代表経験のない選手が1人だけ入った。ユベントスの巨漢DFのジョナタン・ゼビナである。ユベントスというよりはかつてASローマで中田英寿のチームメートとしてリーグ優勝を果たした中心選手であるといえばよくお分かりであろう。最近のフランス代表の多くはパリ近郊の出身であるが、彼らがパリの北部出身が多いのに対し、ゼビナのパリ南部のマッシー・パレゾーの出身である。駅前の広大な駐車場はまさにパリの南の玄関であることを象徴している。ゼビナは初等教育を受けるとジネディーヌ・ジダンを輩出したASカンヌでプロを目指す。ところがカンヌで1部リーグの試合にデビューしたものの、20歳になっても国内の他のクラブから声がかからず、結局イタリアのカリアリに1998年に移籍するが、翌年にはセリエBにチームは降格してしまう。セリエBのフランス人ストッパーに目をつけたのがASローマのファビオ・カッペロ監督であった。チームがセリエAで優勝争いを繰り広げていた2001年4月には念願の代表入り、スペイン戦に招集されるが、結局試合に出場することはできず、今日に至っている。

■緑の軍団が試合を支配、フランスようやく勝ち点1

 10月9日は東京でアイルランドトロフィー、パリでアイルランド戦とさながら東西の花の都がセントパトリックデーになったようであったが、東京のイベントは台風により延期になった。チケットも代表の試合としては3年ぶりに前売りで完売し、7万8000人以上の観衆がスタッド・ド・フランスに集まり、その3分の1はアイルランドの応援団であった。
 キャプテンマークはGKのファビアン・バルテス、フェロー諸島戦と同様の4バックシステムで、ストッパーにはシルベストルとセバスチャン・スクラッチを起用しゼビナはベンチスタート。ビエイラが不在となった守備的MFはダクールがその穴を埋めた。左右の攻撃的MFはロベール・ピレスとビルトール、トップにはジブリル・シセとティエリー・アンリとほぼベストと言える攻撃陣。ところが、キックオフ直後からスタッド・ド・フランスは完全に緑の軍団に支配される。フランスは防戦一方となり、得点の気配は感じられない。主将のバルテスの活躍ばかりが目立ってしまってはホームチームの面目は丸つぶれである。結局この試合は0-0のスコアレスドロー。アイルランドは値千金のドローであり、フランスにとっては負けに等しいドローとなる。唯一の救いは他の2試合もドローで全チームが勝ち点1ずつを積み上げたにとどまったことであるが、フランスはまたもドイツで行われるビッグトーナメントに出場できないのであろうか。(この項、終わり)

このページのTOPへ