第474回 ドイツ行きへの天王山(2) 52年ぶりにダブリンでアイルランドを下す

■ライバルとアウエーの試合が続くフランス

 混戦となったワールドカップ予選のグループ4であるが、前回の本連載で説明したように、上位の4強(スイス、フランス、アイルランド、イスラエル)と下位の2弱(キプロス、フェロー諸島)との間は大きな力の差があるとともに、これまでの4強間の試合は全て引き分けと4強の間の力は拮抗している。したがって4強の間の試合で勝つことが、ドイツ行きへの鍵となる。
 現在勝ち点13で並んでいるのがスイス、フランス、アイルランドであり、残り3試合、4位のイスラエル勝ち点12で残り2試合である。しかし、イスラエルの残り2試合はアウエーとホームでのフェロー諸島戦である。スイスはアウエーのキプロス戦、ホームのフランス戦、アウエーのアイルランド戦となる。アイルランドはホームのフランス戦、アウエーのキプロス戦、ホームのスイス戦となる。そしてフランスはアウエーのアイルランド戦、アウエーのスイス戦、そしてホームのキプロス戦である。つまり、イスラエルは4強戦を全て終え、残りの3チームはそれぞれ4強戦を2試合ずつ残しているが、アイルランドは2試合ともホーム、スイスはホーム、アウエーとも1試合、そしてフランスは2試合ともアウエーとなっている。アウエーでの試合しか残していないフランスにとって、さらに不安なことにアイルランドとはアウエーでは1953年以来勝利したことがないと言う気がかりなデータも残っている。
 ホームの大一番でのアイルランドと言うと4年前の秋、2002年のワールドカップ予選でオランダを1-0と下し、イランとのプレーオフに進出したことは鮮烈な印象を残している。

■アウエーの大一番で勝利した10年前のルーマニア戦

 一方、アウエーの大一番でのフランスと言うと、今でも語り継がれるのが10年前の1996年欧州選手権予選のブカレストでのルーマニア戦である。今回のワールドカップ予選同様、中堅国以上にドローが続き、残るはアウエーでのルーマニア戦とホームのイスラエル戦。しかもルーマニアは過去5年間ホームで負けておらず、フランスのイングランド行きは難しく、1994年ワールドカップ予選に続いて予選落ちかと悲観した中でのブカレストでの試合となった。しかし、この試合、フランスはクリスチャン・カランブーが先制点、ユーリ・ジョルカエフが追加点、そして3点目をあげたのは代表まだ7試合目というジネディーヌ・ジダンであり、ジダンは試合終盤にリリアン・テュラムと交代する。この試合に勝利したフランスはイスラエル戦でも勝利し、グループ1位となり本大会に出場、準決勝に進出して1998年のワールドカップ優勝への礎となったのである。

■1トップのアンリが値千金のゴール、52年ぶりのダブリンでの勝利

 アイルランドはベストメンバー、ロビー・キーン、ロイ・キーンというスター選手も名を連ね、必勝の構えである。一方のフランスはフェロー諸島戦で大活躍のジブリル・シセを外し、ティエリー・アンリの1トップを両サイドから主将のジダンとシルバン・ビルトールが支えると言う布陣である。試合は開始早々から両チームの闘志あふれる展開となり、警告が相次ぐ。試合を支配したのはホームのアイルランドであり守備的な体制のフランスには厳しい時間が続く。前半は両チーム得点なく、後半を迎える。
 両チームとも後半開始早々から控え選手がウォーミングアップを始め、総力戦の様相を呈す。そして68分にアンリがついにゴールネットを揺らした。歓喜する青のユニフォーム。その直後、ジダンが負傷のためピッチを離れ、キャプテンマークをクロード・マケレレに手渡す。その後、両チームとも決定的な得点機はなく、試合は2分間のロスタイムへ。このロスタイムも危険なシーンはなく、ついにフランスは勝利する。1953年のワールドカップ予選以来のダブリンでの勝利となるとともに、グループ4の4強の間での試合で初めて勝利を上げ、勝ち点3を上積みした。

■10月8日に首位のスイスとバーゼルで対戦

 イスラエル、スイスと言う残りのライバルも同日に試合を行い、アウエーでそれぞれフェロー諸島、キプロスと言う下位チームに難なく勝利を収めている。この結果、勝ち点16でスイス(得失点差+11)とフランス(+8)が並び、イスラエルが勝ち点15(+4)で追う。4位のアイルランドは勝ち点13のままで後退した。そして次の試合は10月8日に予定されている。スイスのバーゼルでフランスはスイスと対戦する。この試合で勝ったチームは2位以上を確定することになる。アウエーでの大一番の続くフランス代表であるが、バーゼルでの勝利を期待したい。(この項、終わり)

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