第483回 ワールドカップ予選フィナーレ(5) ジネディーヌ・ジダンの活躍で20年ぶりの予選突破

■大量得点での勝利を狙うキプロス戦

 前回の本連載で紹介したとおり、ワールドカップ予選欧州グループ4は最終日を迎えた段階で3チームに首位突破の可能性があり、4チームにプレーオフ出場の可能性があると言う大混戦となった。ダブリンの試合でスイスが引き分け以下ならば、フランスはキプロス戦勝利でドイツ行きとなる。また、キプロス戦での大量得点差で勝利すれば、ほぼ確実にドイツ行きを決めることができる。
  さて、対戦相手のキプロスは1990年ワールドカップ予選でフランスと引き分けに持ち込み、当時のアンリ・ミッシェル監督を更迭させたと言う歴史はあるが、その後の対戦成績、そして昨年10月13日のアウエーでの2-0の勝利と言う成績を考えてみれば、フランスの勝利はゆるぎないものであろう。また、1982年ワールドカップ予選でもフランスは最終戦でキプロスをパリに迎え、この時も混戦となったが、フランスが4-0と勝利してスペイン行きを決めている。

■大量得点から遠ざかっているフランス

 しかし、現在のフランス代表が5点差の勝利を収めることができるかと言うと、誰しもが疑問を持っている。まず、これまでの予選9試合での総得点はわずかに10点、これは4強の中では最も少ない数字である。上位チーム同士の戦いはロースコアの引き分けが多く、下位チーム相手の得点力の違いが得点力の違いとなっているが、フランスはキプロスとはアウエーは2点差、フェロー諸島とはホームで3点差、アウエーで2点差しかつけておらず、5点差の勝利と言うのは今回の予選で最高のパフォーマンスを残さなければならない。フランスが4点差で勝利したのは昨年5月28日の欧州選手権直前のモンペリエでのアンドラ戦、5点差の勝利となると2003年6月のコンフェデレーションズカップのニュージーランド戦まで遡らなくてはならない。
  逆に単純に予選や近年の成績だけで図ることのできない要因もある。それはジネディーヌ・ジダン、リリアン・テュラム、クロード・マケレレを復帰させた今夏以降の成績である。ジダン復帰以降、フランスはコートジボワールに3-0、フェロー諸島に3-0とある程度の得点力を見せている。また、予選ではアイルランド、スイスと言うタフな相手と対戦したが、いずれも1得点を記録しており、得点力の改善の兆しが見られる。

■大観衆が見守る中でキックオフ

 ワールドカップ出場の瞬間を見ようと、スタッド・ド・フランスには78,864人の観衆が集まった。レイモン・ドメネク体制になってから本拠地ではこれが5試合目となるが、満員になったのは昨年秋のアイルランド戦だけであり、空席の目立つスタンドでの試合が続いてきたが、この試合ばかりは試合の前々日にチケットが売り切れた。さて、先発メンバーは、GKはリヨンのグレゴリー・クーペ、DFラインは右サイドに出場停止処分の明けたビリー・サニョル、左サイドには予選10試合連続出場となったウィリアム・ギャラス、中央にはジャン・アラン・ブームソンとテュラム、そしてマケレレを出場停止で欠く守備的MFにはパトリック・ビエイラとビカッシュ・ドラッソーを起用、攻撃的なMFは中央にジダン、左サイドにシルバン・ビルトール、右サイドにシドニー・ゴブーとなった。そしてトップにはスイス戦の英雄ジブリル・シセを配置した。

■均衡を破ったジダンのゴール、スイスが引き分け、フランスが首位に

 試合は一方的にフランスが支配したが、肝心のゴールが生まれない。今予選のフランスの得点王、シセが大ブレーキで得点のないまま時計の針は30分にかかろうとする。同時刻にキックオフされたダブリンの試合も依然として両チーム無得点、8万人近い大観衆は不安が高まる。その中で均衡を破ったのはジダンである。29分にサニョルからのクロスを豪快にジダンは右足でゴールに蹴りこんだ。そして29分にはビルトール、前半終了間際の44分にはドラッソーが追加点をあげ、3-0とリードして前半を折り返す。ダブリンは両チーム無得点。後半もこの調子でゴールを重ねれば、ドイツ行きが実現する。追加点を狙うフランスは3人の攻撃的MFが高めに位置し、4-2-4システムとなる。しかしながら、追加点がなかなか生まれず、ダブリンでスイスが1点を挙げれば、プレーオフ行きとなる。84分には途中から出場したルドビック・ジュリーが4点目、しかしながら最大の敵はダブリンでのスイスである。
  そしてついにタイムアップ、4-0と言う目標には届かない得点差であったが、スイスも無得点に終わる。この結果、勝ち点で上回ったフランスが、1986年大会以来、実に20年ぶりにワールドカップの予選を突破したのである。(続く)

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