第504回 2006年ワールドカップ展望(2) ファンの理解を得るために直接対決を重視
■チャンピオンズリーグで問題となった同勝ち点の際の順位決定方法
前回の本連載では今回のワールドカップの大会方式と大会規定の変更、すなわちグループリーグで同じグループとなったチームは決勝トーナメントでは決勝戦まで顔を合わせないことと、グループリーグにおいて勝ち点で並んだ場合は直接対決の結果が優先されることを紹介した。
グループリーグで勝ち点が並んだ際に直接対決の成績を優先する方法もようやく導入された感がある。前回の本連載で紹介したとおり、チャンピオンズリーグでは前回のワールドカップ開催前である2001-02シーズンからこの方式は導入されていた。チャンピオンズリーグも2000年前後から人気が低下し、主催者側はその大会方式について腐心してきた。その解決策の1つがこの同勝ち点の際の順位決定方法である。欧州のクラブの頂点を争うタイトルとはいえ、まだまだ出場チームに力の開きはある。以前のチャンピオンズカップ時代はすべてノックアウト方式のカップ戦で行われていたため、問題とならなかったが、リーグ戦方式になってから問題は生じた。国内外の戦いで過密日程の強豪チームは、グループリーグで弱小チームと対戦した際に、ある程度点差がついた段階で攻撃の手を緩めることがあった。ファンもチャンピオンズリーグよりも国内のリーグ戦を重視することから、納得した上での手抜きである。ところが、従来の大会規定では、ライバルの強豪チームと互角あるいは互角以上の戦いをしても、同勝ち点となった場合、得失点差で順位が決められるため、弱小チーム相手の戦いぶりで順位が決定してしまい、納得のいかないファンも少なくなかった。チャンピオンズリーグの位置づけを考えるならば、同勝ち点で並んだ場合に得失点差よりも直接対決の結果を優先させることがファンの理解を得やすい。
■新ルール適用第一号はマンチェスター・ユナイテッドとデポルティーボ・ラコルーニャ
前回の本連載で今季のチャンピオンズリーグでリールとマンチェスター・ユナイテッドが同勝ち点で並び、直接対決で1勝1分と勝ち越したリールが上位になったことを紹介したが、ちなみにチャンピオンズリーグでこの方式の最初の適用となったのもまたマンチェスター・ユナイテッドである。マンチェスター・ユナイテッドは2001-02シーズンの1次リーグでデポルティーボ・ラコルーニャと勝ち点10で並び、得失点差はマンチェスター・ユナイテッドが+4、デポルティーボ・ラコルーニャが+2であったが、直接対決でデポルティーボ・ラコルーニャが2勝していることからデポルティーボ・ラコルーニャがグループ首位、マンチェスター・ユナイテッドは2位として2次リーグに進出した。ちなみにこの両チーム、決勝トーナメントの1回戦で再戦し、今度はマンチェスター・ユナイテッドが連勝している。
なお、フランス勢ではリヨンが2002-03シーズンのグループリーグでアヤックスと勝ち点8で並んで2位となり、得失点差(リヨン+3、アヤックス+1)で上回りながら、直接対決で連敗(アウエーで1-2、ホームで0-2)しており、決勝トーナメント進出の夢を断たれている。
■従来の方法を守っているUEFAカップ
一方、同じ欧州カップでもUEFAカップについては、グループリーグをホームアンドアウエーではなくどちらかの本拠地で1試合のみ行っているため、大会規定は異なる。直接対決の結果を優先するとなると、その直接対決はどちらかのホームゲームとなるため不公平であり、こちらは従来どおりの得失点差で同勝ち点の場合の順位を決定することとしている。
■大会規定を変えた出場国数の増加、決勝トーナメントの組み合わせ
ワールドカップについても出場国を増やすことに伴い、チーム間の力の差が明白になってきた。グループリーグではその傾向が強い。また、決勝トーナメント出場国が決定してから決勝トーナメントの組み合わせを決める欧州カップと異なり、ワールドカップの場合はあらかじめ決勝トーナメントの組み合わせが決定している。したがって、意図的にメンバーやモチベーションを落とした戦いが散見された。そのような試合を少なくするためにも直接対決の結果を重視することは歓迎すべきである。予選段階から低迷気味である今回のワールドカップが、直接対決の結果を重視することにより、本大会ではかつての盛り上がりを取り戻すことに期待したい。
読者の皆様、本年もご愛読ありがとうございました。よいお年をお迎えください。(続く)