第571回 前回4位の韓国と対戦(2) 生きていたアジアの虎、大ピンチのフランス

■2つの記録がかかった韓国戦

 グループリーグ突破に向けて初勝利を狙うフランス代表、初戦のスイス戦のドローは高齢化を含めて数々の問題点を露呈したが、スイス戦の翌日には控えメンバーがハノーバーのユースチームと練習試合を行っている。
 フランスは韓国戦に2つの記録がかかってしまった。まずはワールドカップにおける連続無得点試合記録である。フランスはスイス戦の引き分けで前回のワールドカップでの韓国での3試合と通算して、4試合連続無得点となった。ワールドカップの歴史で最多連続試合無得点はボリビアが1930年から1994年にかけて作った5試合である。その不名誉な記録にならぶことを回避し、得点だけではなく勝ち星を挙げたいところである。
 フランスは高齢化が課題となったが、スイス戦の平均年齢は30歳191日であり、これはフランス代表史上最高齢となる。スイス戦は28歳のフローラン・マルーダが体調不良によりメンバーから外れ、23歳のフランク・リベリーを起用したが、マルーダが復調し、リベリーに代わって出場するならば、スイス戦を上回る最高齢チームとなる。

■平均年齢30歳289日のフランス史上最高齢のメンバー

 さて、スイス戦で国内のマスコミから散々な評価を受けたレイモン・ドメネク監督であるが、韓国戦でもスイス戦同様、4-2-3-1システムで戦いに臨む。予選後半から直前の親善試合まで4-3-1-2というシステムを使用していたが、2トップの一翼を担うべきジブリル・シセが負傷により戦線を離れてしまい、エースのジダンの調子が今ひとつであることから、FWを1人にし、攻撃的なMFを3人にしている。すなわち1人の頼れる10番と2人の頼れるFWがいたのだが、現在のフランスには頼れるFWは1人しかおらず、それを支える10番は1人では役者不足である。韓国戦のメンバーはリベリーとマルーダを入れ替えただけの布陣となった。すなわち平均年齢30歳289日という「フランス代表史上最年長のチームがライプチヒで誕生したのである。
 試合前、ライピチヒの中央競技場の大型スクリーンはブラジル-豪州戦の模様が流れ、選手はこの試合に見入るものもいる。8年前、ブラジルに勝利した試合以来、フランスはゴールがない。また南半球のスポーツ大国である豪州にテニスやラグビーでフランスは何度も苦渋を飲まされてきた。ある選手はブラジルを見てゴールへの渇望を思い起こし、またある選手は豪州を見て他の競技での雪辱を胸に記しているであろう。

■緩やかに世代交代を進めた韓国

 韓国とは前回の本連載で紹介したとおり、2回フランスが戦っているが、参考となるのは前回のワールドカップ直前の親善試合である。スイス戦同様、この時と今回のイレブンを比較すると、フランスの先発メンバーで4年前の試合に出場している選手はGKのファビアン・バルテス、DFではリリアン・テュラム、ビリー・サニョル、MFはジネディー・ジダン、パトリック・ビエイラ、シルバン・ビルトール、FWのティエリー・アンリと実に7人となる。一方の韓国は両方の試合に出場している選手は5人であり、4位に入賞した過去からなだらかに人材を入れ替えていることがわかる。

■アンリのゴールも実らず、痛恨のドロー、ジダンは出場停止

 4年前は欧州勢と序盤は劣勢でありながら、次々と連破した韓国であるが、この日もまた同じ展開となった。試合は立ち上がりから個人技に勝るフランスが優位に立つ。立ち上がりからボールを支配、次々と韓国ゴールを襲う。ゴール欠乏症が深刻なフランスであったが、無得点記録にピリオドを打ったのは韓国でのワールドカップでは1試合半しか出場しなかったアンリである。10分にビルトールのシュートのこぼれ球をアンリがシュート、先制点を挙げる。復調したマルーダの調子がよく、フランスは攻め続け、30分過ぎにはCKを得る。このCKをビエイラがヘッドであわせてネットを揺らすが、ファウルを取られ、追加点はならず。
 後半に入ってもフランスは攻め続け、韓国はロングパス頼みの攻撃となる。10分となった80分に韓国はサイドからのクロスを折り返したところに朴智星がループシュートを見事に決める。2002年に世界中を驚かせたアジアの虎はまだ生きていたのである。フランスの必死の猛攻も実らず、1-1のままタイムアップ、フランスは引き分けてしまった。
 さらにフランスはジダンが85分に警告を受け、累積警告によって最終戦のトーゴ戦に出場停止になった。力が衰えたとはいえ、チームの精神的支柱のジダンを失ったショックは大きい。これで5試合連続勝ち星から見放されたフランス、1位通過は厳しくなったのである。(この項、終わり)

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