第587回 ワールドカップ回顧(2) フランスリーグの選手が活躍したポルトガルとスイス

■前回大会を上回る57人がフランスのクラブから出場

 前回の本連載ではフランスリーグに所属するフランス代表の選手について紹介したが、今回は他国の代表チームで活躍したフランスのクラブチームに所属する選手を紹介しよう。今回のワールドカップに出場したフランスリーグの選手数は実に57人、前回大会の56人を上回る史上最多の数字となった。
 前回大会を上回る要因としてはフランス代表に11人(前回は5人)を送り込んだことがきいている。また、前回大会はフランス以外では9人しか欧州の代表チームに選出されなかったが、今回は11人が選出されている。

■2大会連続でフランスのクラブから出場したパウレタ

 準決勝に進出したポルトガルにはパウレタ(パリサンジェルマン)、ティアゴ(リヨン)、エルデル・ポスティガ(サンテエチエンヌ)の3人が選ばれている。この中で大活躍をしたのがCFを務めたパウレタである。ポルトガル代表において46という通算得点記録を持っているだけではなくフランスリーグの得点王としてドイツに乗り込んだ。初戦のアンゴラ戦で唯一の得点を挙げたのがパウレタである。フランス以外の欧州の国からワールドカップに出場した選手の中で唯一、前回大会も今大会もフランスのクラブに所属している選手である。2002年大会に出場した際はボルドーに所属していた。ポルトガルの2部リーグのクラブに所属していたパウレタポルトガルの1部リーグでプレーした経験のない選手である。23歳でスペインの2部リーグのサラマンカに移籍し、その後、1部のデポルティーボ・ラコルーニャに移る。1999-2000シーズンにはリーグ優勝を果たし、スターダムに躍り出る。ここでボルドーに移籍するが、そのフランスリーグでのデビュー戦が強烈であった。大西洋岸のライバルチームであるナントとの試合でいきなりハットトリック、ボルドーの人々にとってはその6年前のジネディーヌ・ジダンの代表デビュー以来の真夏の衝撃のデビューとなったのである。
 フランスの年間最優秀選手に2度選ばれ、多くのオファーがポルトガル人ストライカーに集中した。しかし、パウレタは決してイタリアやスペインのビッグクラブに移籍することはなかった。2003年の夏にパウレタが選んだのは世界で2番目にポルトガル人の住む都市にあるチーム、パリサンジェルマンであり、準決勝のフランス戦ではパリの街を熱狂させたのである。

■好調リヨンから出場したティアゴ

 そしてパウレタとともに活躍したのがリヨンのティアゴである。昨年夏イングランドのチェルシーから移籍したティアゴは、地元開催の2004年欧州選手権はメンバーに入っていたものの試合出場の機会はなかった。しかし、今回のワールドカップでは5試合に出場している。さらにポルトからサンテエチエンヌに移籍したポスティガも3試合に出場しており、ポルトガル代表に選出された3人のフランスリーグ所属選手はポルトガルの40年ぶりの準決勝進出に貢献したのである。

■大会の歴史を変えたスイスのパトリック・ミューラー

 また、フランスとグループリーグで熱戦を演じたスイスには3人の選手がフランスリーグに所属し、リヨンのパトリック・ミューラーとレンヌのアレクサンドル・フレイが出場している。この試合、38分にフランスのティエリー・アンリのシュートがミューラーの手にペナルティエリアの中で当たったが、審判はこれをハンドの反則とは認めず、試合はスコアレスドローに終わっている。もし、あの反則を審判が取っていたならば、フランスはもっと早くエンジンが全開していたかもしれない。そして首位でグループリーグを突破し、準々決勝でイタリアと対戦していたかもしれない。その結果、今大会の歴史は変わっていたかもしれない。そう考えるとミューラーのあのプレーはこの大会の一つのターニングポイントであったのかもしれない。また、この試合に出場しなかったフランスリーグ所属の選手にオセールのステファン・グリシュタンがいるが、決勝トーナメント1回戦のウクライナ戦で負傷退場した選手に代わって出場している。スイスもまた好チームであり、フランスリーグの選手が活躍したのである。(続く)

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