第591回 ワールドカップ回顧(6) フランス勢が13人と最多のコートジボワール

■フランスで育った最大のスター、ディディエ・ドログバ

 今回のワールドカップでフランスのクラブに所属する選手が一番多かったのがコートジボワールである。コートジボワール最大のスターはディディエ・ドログバである。首都アビジャンで生まれ、5歳のときにフランスに移住してきた。元サッカー選手のおじの家に身を寄せ、ブルターニュのクラブからルバロワ・ペレに移籍した。初めてのプロ契約は現在日本の松井大輔の所属する2部のルマン、そして1部のギャンギャンへとキャリアを高める。ここでフローラン・マルーダとコンビを組み、ゴールを量産、2003年の夏にはフランス国内のビッグクラブが争奪戦を行い、マルセイユへ移籍する。
 マルセイユでもさらに活躍し、UEFAカップ決勝進出、そしてフランスリーグ最優秀選手という栄光を手にしたのである。こうなると国外のビッグクラブも黙っているわけには行かない。2005年夏には当然のごとく世界で最も裕福なクラブであるチェルシーの一員となったのである。マルセイユ、チェルシーのメンバーとなっても重圧に負けることなく期待に応えているが、それはルバロワ・ペレでの経験が大きく影響している。ルバロワ・ペレは欧州を代表する高級住宅地、スタッド・ド・フランスなどの貴賓席の半数はこの町の住民で埋まり、バーキンの購入者のほとんどはルバロワ・ペレに住んでいる。そのような町での経験がドログバを変え、ビッグクラブでも動じないような精神力をつけるきっかけとなったのである。

■過半数の13人がフランスのクラブに所属

 さて、最大のスターであるドログバはドーバー海峡を渡ってしまったが、今回のコートジボワール代表にはメンバーの過半数に当たる13人がフランスのクラブに所属している。そして指揮官も 13人の選手のうち11人は1部のクラブに所属しており、各クラブで主力として活躍している選手が大半である。レベル的には前回のセネガルとよく似ていた。

■強豪アルゼンチン、オランダにわずか及ばず

 しかし、コートジボワールが戦ったのは死のグループと言われたグループCであった。アルゼンチン、オランダ、セルビア・モンテネグロという順で競合と戦わなくてはならなかった。初戦のアルゼンチン戦にはフランスのクラブに所属する選手のうちアルツール・ボカ(ストラスブール)、ディディエ・ゾコラ(サンテエチエンヌ)、ボナバンチュール・カルー(パリサンジェルマン)、アブドゥライエ・メイテ(マルセイユ)、カデル・ケイタ(リール)の5人が先発した。2002年大会では優勝候補でありながら不本意な敗退をしたアルゼンチンも初戦から気合十分であり、前半にエルナン・クレスポ、ハビエル・サビオラがゴールを決めてリードする。コートジボワールの監督はかつてフランス代表の選手としてワールドカップで活躍したアンリ・ミッシェルである。ミッシェル監督は後半に入り、アルナ・ディンダン(ランス)、バカリ・コネ(ニース)を投入し、フィールド上の過半数の選手がフランス勢となる。そして主将を務めるドログバは82分にコネとのコンビで反撃の1点を返すが、2点目はならず、初出場初勝利とはならなかったのである。
 コートジボワールの第2戦は、前回大会では予選で姿を消しているオランダとの対戦、この試合に最低限引き分けなくては決勝トーナメント進出が不可能となる。ミッシェル監督はメンバーを入れ替え、第1戦で出番のなかったロマリック・エンドリ(ルマン)を含む、5人のフランス勢を先発メンバーとして起用した。しかし、この試合もアルゼンチン戦と同じ展開となる。23分にロビン・ファン・ペルシが先制点、27分にルート・ファン・ニステルローイが追加点と2点のビハインド、コートジボワールは苦境に立たされる。38分にコネがスピードとパワーあふれるプレーで1点を返すが、2点目は遠く、グループリーグ敗退となってしまった。

■最終戦で見事な逆転勝利、全得点をあげたフランス勢

 コートジボワールは最終戦のセルビア・モンテネグロ戦も開始20分で2点のリードを許す。37分にディンダンが1点を返す。ここまでは同じ展開だが、雨が降り、セルビア・モンテネグロの選手が前半終了間際に退場と荒れ模様の試合となる。後半に入って67分にディンダンがケイタのクロスをヘッドで同点ゴール、さらに86分にはPKを得て、カルーが決めて見事な逆転劇で初勝利をあげたのである。
 コートジボワールはグループリーグで敗退したものの、大会であげた5得点すべてがフランスのクラブに所属している選手だったということは特筆に価するだろう。(続く)

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