第889回 2010年ワールドカップ予選開幕(5) 主将ティエリー・アンリのゴールでセルビアに勝利
■背水の陣、メンバーとシステムを変更
今年6月初めのコロンビアとの親善試合依頼のスタッド・ド・フランスでの試合となったフランス代表、オーストリア戦を落とし、強豪のセルビア相手に真価の問われる試合となった。
勝利が必要なフランス代表の先発メンバーであるが、GKはスティーブ・マンダンダ、DFは右からバカリ・サーニャ、ウィリアム・ギャラス、エリック・アビダル、パトリス・エブラ、MFは守備的な位置にラッサナ・ディアラとジェレミー・トゥーララン、攻撃的なMFは3人を配し、中央にヤン・グルクフ、右にシドニー・ゴブー、左にカリム・ベンゼマという陣容で、FWは1人でティエリー・アンリと言うメンバーである。
4日前のオーストリア戦との違いは大きく2点、まずは最終守備ラインのメンバーの入れ替え、そして攻撃陣のフォーメーションの変更とメンバーの入れ替えである。守備陣については期待されながらミスを連発したフィリップ・メクセスを外し、オーストリア戦では体調が不十分でベンチ入りすらしなかったエリック・アビダルをストッパーの位置に起用した。また、攻撃陣は攻撃的なFWを3人配し、8月のスウェーデン戦で代表にデビューしたばかりのグルコフを起用、ベンゼマを左サイドに配置し、主将のアンリを1トップに据える。アビダルのストッパーと言うと欧州選手権のグループリーグの最終戦のイタリア戦を想起させる。その時も背水の陣であり、イタリア戦では急造ストッパーが失点の原因となったが、今度はしっかり守りたいものである。またグルコフはスウェーデン戦ではわずか40秒の出場、オーストリア戦も終盤の20分しか出場していないが、この背水の陣で攻撃陣のキーマンを任せることになった。
■11人全員が国外組のセルビアの先発メンバー
一方のセルビアであるが、11人全員が国外のクラブに所属している選手である。ナントのステファン・ボバビッチは先発メンバーから外れたが、GKのウラジミール・ストイコビッチは2006-07シーズンにナントに所属し、FWのマルコ・パンテックは1996-97シーズンにパリサンジェルマンに所属し、かつてフランスリーグで活躍した選手が2人いる。
背水の陣であるにもかかわらず、3か月ぶりのスタッド・ド・フランスでのフランス代表の試合に集まったファンはわずか4万5000人、最上階は閉鎖され、観客を入れずに行われた。1998年のワールドカップから10年、それ以来続いた代表人気の陰りがめぐってきた。
■対照的な両チームの主将、デヤン・スタンコビッチとティエリー・アンリ
この試合、両チームの主将が明暗を分けた。まず、セルビアの主将はデヤン・スタンコビッチである。ベオグラードレッドスターで活躍した後、イタリアに移り、ラツィオ・ローマ、インテル・ミラノで活躍してきた守備的MFはチームの中心であり、1998年のフランスワールドカップにもユーゴスラビア代表として出場している。試合開始わずか4分、フランスの主将のアンリと接触し、ひざの靭帯を痛め、ピッチを後にする。1978年9月11日生まれのスタンコビッチにとってはワールドカップにデビューした地であるフランスで20代最後の日を迎えたが、非情の退場となったのである。
チームの要を失ったセルビアであるが、前半はよくフランスの攻撃をしのぎ、0-0でハーフタイムを迎える。そして後半に入って試合は動いた。55分に好調なゴブーからのパスをゴール前で待ち受けていたアンリがゴールに結びつける。このゴールは10年前にオープンしたスタッド・ド・フランスにおけるフランス代表の100ゴール目となったのである。
さらに64分には後半開始時にベンゼマに代わって投入されたニコラ・アネルカが追加点を上げる。ドメネク監督の秘蔵っ子として重用されてきたアネルカが恩師を窮地から救うゴールを上げた。
これに対して、セルビアは76分に1点を返したが、フランスが2-1で逃げ切る。オーストリア戦での敗戦で辞任説が流れたドメネク監督はかろうじて延命した。
■首位はリトアニア、次の試合はアウエーのルーマニア戦
スタッド・ド・フランスでの試合開始時に前半を終了して両チーム無得点だったリトアニア-オーストリア戦は後半にリトアニアが2ゴールを上げ、唯一の連勝チームとなり首位をキープした。ルーマニア、フランス、オーストリア、セルビアが1勝1敗で追い、唯一の連敗チームがフェロー諸島である。
フランスの次の試合は10月15日のアウエーでのルーマニア戦であり、これが年内最後の予選の試合となる。(この項、終わり)