第953回 リトアニアに連勝(3) 三者三様の代役選手たち

■負傷者続出、過半数が代表10試合未満というさらに若いメンバーに

 前回の本連載では3月19日に発表されたリトアニア戦に臨むメンバーのうち半数は代表出場歴が一桁という若いメンバーであることを紹介したが、今回もまた負傷者が出て、メンバーの入れ替えを余儀なくされた。フランス代表は3月23日にクレールフォンテーヌに集合し、24日から練習を始めた。
 しかし、ニコラ・アネルカは3週間前に痛めた怪我が治りきらず、代表を断念し、代わりにパリサンジェルマンのギヨーム・オアローを招集した。また、練習2日目の25日にはジミー・ブリアンが負傷し戦列を離れる。このアクシデントに際し、レイモン・ドメネク監督はニースのロイック・レミとパリサンジェルマンのペギー・リュインデュラを呼び寄せる。この結果、メンバーは24人となり、過半数の13人が代表出場歴一桁になったのである。

■1部1年目で代表入りしたレユニオン出身のギヨーム・オアロー

 この3人はただ単純に代表歴が少ないだけではなく、それぞれが特徴を持っている。オアローは代表初招集である。昨年来、本連載に何度か登場してきている名前であるが、オアローは1984生まれの身長192センチの長身FWである。そしてレユニオンの出身であり、この島を代表するJSサンピエールでサッカー選手としてのキャリアをスタートさせる。このクラブはかつてはカメルーン代表のロジェ・ミラ、フランス代表のジャン・ピエール・パパンも所属したことがある名門であるが、いかんせんフランス本土からは遠い。
 この南半球の島に生まれた才能をフランス本土に呼び寄せたのはフランス最古のサッカークラブであるルアーブルである。ルアーブルは港町であり、マルセイユが南の海の玄関であるならば、北の海の玄関がルアーブルである。北の玄関であるから英国の文化が入ってくるのが早かった。したがって最古のサッカークラブが生まれた。そして港町にあるこのクラブはレユニオンの代表的なチームであるJSサンピエールと提携関係を結んでおり、ルアーブルにオアローが2003年にやってきたのである。ちなみにJSサンピエールからルアーブルというルートは現在スペインのアトレチコ・マドリッドで活躍しているフローラン・シナマ・ポンゴルと同じである。
 ところが、このルアーブルも2部のチームであり、オアローの才能がフランスの1部リーグ戦で見られることになったのはオアローが本土にやってきて7年目になる今季が初めてなのである。パリサンジェルマンに移籍したオアローはリーグ戦、UEFAカップで大活躍し、代表チームに招集され、同じ1984年生まれのシナマ・ポンゴル同様にフランス代表入りしたのである。

■1年ぶりに招集され、初代表を狙うレミ

 ロイック・レミは本連載第828回から第833回で紹介した昨年3月のイングランド戦の際にフランス代表に招集されているが代表出場経験はない。このときはフル代表のメンバーに残ることができず、A’代表のメンバーとしてマリ代表と対戦している。当時はランスに所属していたが、元々はリヨンと契約しており、ランスへはレンタル契約であった。
 ランスの2部落ちをきっかけにニースに移籍、このときに移籍金は800万ユーロと言われており、ニースのクラブ史上最高の移籍金である。そして名門ニースから久しぶりのフランス代表となった。1982年のイタリアとの親善試合で初代表にして初ゴールを決め、イタリア戦60年ぶりの勝利に貢献したダニエル・ブラボー以来のニースからの代表入りであろう。

■最大の驚き、5年ぶりに代表に復帰したペギー・リュインデュラ

 最大の驚きはリュインデュラであろう。リヨン初優勝時のメンバーであり、2004年2月にすでに代表デビューを果たし、代表出場歴は4である。ところが、同年秋を最後に代表から呼ばれることはなく、リュインデュラ自身も移籍を繰り返すが、これといった成果を残すことができなかった。2007年初めにパリサンジェルマンに移籍してからも、地元ファンからブーイングされるありさまだった。しかし、今季はリーグ戦だけではなく、UEFAカップでも活躍し、厳しいパリのファンからも評価されるに至った。ドメネク監督から声がかかり、実に5年ぶりの代表入りとなったのである。(続く)

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