第1014回 最終章を迎えたグループ7(3) 唯一の地方開催、ギャンガンで初めての試合
■フランスカップの町、ブルターニュのギャンガン
最終章を迎えたワールドカップ予選、その第一幕となる10月10日のフェロー諸島戦はギャンガンのルドルー競技場で行われる。2部に所属するギャンガンの本拠地であるが、2年前に競技場の色をチームカラーの赤と黒のツートンカラーにするなどの改装がなされた新しい建造物である。ギャンガンでフランス代表の試合が行われるのは初めてのことである。ギャンガンでの開催が決まったのは昨年のことであるが、このフランス代表を迎えるという知らせが功を奏したのか、ギャンガンは昨季のフランスカップでは快進撃を続け、2部チームとして50年ぶりにフランスカップを獲得している。このフランスカップの決勝の相手は同じブルターニュ勢のレンヌであり、ブルターニュでフランス代表が試合をするのも2004年のレンヌでのボスニア・ヘルツェゴビナ戦以来2回目のことである。
■人口の2倍以上の収容人員を誇るスタジアム
このルドルー競技場の収容人員がわずか1万8000人であるが、ギャンガンの人口はわずか7,500人、すなわち人口の2倍以上の収容人員を誇るスタジアムが存在することになる。スタジアムの収容人員の人口に対する比率はフランスのプロチームとしては最も大きく、欧州全体を見回してもこれに比肩するケースは珍しい。このように小都市に大スタジアムが建設されたのは、フランス協会副会長、フランスリーグ会長などフランスサッカー界の要職を歴任し、ギャンガンの市長を昨年まで務めていたクラブの元会長のノエル・ルグラエの存在が大きい。
■今予選で唯一スタッド・ド・フランス以外での試合
今回のワールドカップ予選でフランスはホームゲームを5試合行うが、このフェロー諸島戦以外の4試合はサンドニのスタッド・ド・フランスで開催される。主催者であるフランス協会としても地方開催で地方のファンにフランス代表を知ってもらい、ファン層を開拓したいと考えている。しかし、その一方で、観客動員の見込まれる試合、大一番となる強豪との試合は本拠地であるスタッド・ド・フランスで行いたい。
今回の予選の相手はシードの上位から並べるとルーマニア、セルビア、オーストリア、リトアニア、フェロー諸島であり、第6シードのフェロー諸島戦だけを地方開催としている。しかもその地方開催であるが、マルセイユのベロドローム競技場のようにワールドカップを開催したような大規模な競技場で行うのではなく、2部に所属するチームの本拠地で収容人員がわずか1万8000人の小規模な競技場で開催すると言うのは、相当フェロー諸島とは力の差があると言うことを意味しているであろう。
■近年、スタッド・ド・フランス以外で開催された試合
最近のフランス代表の欧州選手権やワールドカップの予選における地方開催の歴史を振り返ってみよう。2008年の欧州選手権の予選の場合、ラグビーのワールドカップ開催と重なったこともあり、終盤の2試合はスタッド・ド・フランスを使用することができず、ナントのボージョワール競技場(リトアニア戦)、地方ではないがパリのパルク・デ・プランス競技場(スコットランド戦)を使用した。それ以外にオセールのアベ・デシャン競技場(グルジア戦)、ソショーのボナル競技場(フェロー諸島戦)と予選6試合中4試合をスタッド・ド・フランス以外で開催している。
2006年ワールドカップ予選と2004年欧州選手権予選の際はそれぞれ1試合のみ、スタッド・ド・フランス以外で試合を行っている。いずれもランスのフェリックス・ボラール競技場で行われた。2006年ワールドカップ予選はフェロー諸島、2004年の欧州選手権の際はマルタが相手であった。
今回を含めて過去4回の予選における地方開催の歴史を振り返ると、力に差のある相手との試合で地方開催を行っており、7試合のうち3試合はフェロー諸島が相手であるということは特筆すべきであろう。また今回だけではなく、2008年欧州選手権予選で前回対戦したソショーも初めてフランス代表を迎えたのであった。
このように力の差があると目されているフェロー諸島であるが、9月9日にはリトアニアに勝利し、勝ち点3を獲得している。すでに本大会出場の望みは絶たれたが、最下位脱出の可能性はまだ残っているのである。(続く)