第1018回 最後の関門、プレーオフへ(2) 初めてのホームアンドアウエー方式のプレーオフ

■本大会出場枠、予選出場国の増加によってプレーオフが導入

 前回の連載では1950年のブラジル大会予選と1962年のチリ大会予選においてフランスがプレーオフで敗れたことを紹介した。しかし、これらは同点になったため決着をつけるためのプレーオフであった。
 1980年代から1990年代半ばまで、ワールドカップ予選は原則として各グループの2位までが本大会出場、グループ内のチーム数の少ない場合は2位チームが欧州内外のチームとプレーオフを戦うと言う形式であった。本大会出場枠の少ない欧州選手権の予選は首位チームが本大会に出場していた。
 1996年の欧州選手権から、出場チームがそれまでの倍の16になる。また予選に参加するチームも東欧の自由化による分離・独立により、それまでの30チーム前後から50チーム前後に増加する。このように予選参加国数と本大会出場国数の増加、そして一方でチャンピオンズカップがチャンピオンズリーグに変わったことによるトップレベルのクラブの試合数の増加があった。これらの要因が重なり、欧州選手権の予選形式が変わり、プレーオフが導入されたのである。1996年欧州選手権予選に出場したチームは47チーム、開催国のイングランドを除く15の椅子を争った。5チームあるいは6チームずつの8つのグループに分かれて予選を戦い、首位は本大会出場、8つの2位チームのうち成績のよい6チームも本大会出場となるが、成績の悪い2チームが中立地でプレーオフを戦った。イングランドのリバプールのアンフィールド競技場でオランダとアイルランドが戦い、オランダが2-0で勝利している。フランスはこの予選は苦しんだが、首位で本大会出場を決めた。

■1998年ワールドカップ以降はプレーオフが定着

 1998年のワールドカップは開催国のフランスは予選免除となったが、プレーオフの範囲は拡大する。欧州では49チームが14枚のフランス行きのチケットを目指して、5チームあるいは6チームの9つのグループに分かれる。首位9チームに加え、2位チームの中で最も成績のよいチームが本大会出場、そしてそれ以外の2位となった8チームがホームアンドアウエー方式でフランス行きを争い、クロアチア、イタリア、ベルギー、ユーゴスラビアが競り勝った。
 2000年の欧州選手権予選はオランダとベルギーの共同開催のため、予選の出場枠は14となり、1998年のワールドカップ予選同様の形式で行われた。この予選もフランスは苦戦したが、最終戦でウクライナを交わし、首位を確保、プレーオフを経由せずに本大会に出場した。
 2002年のワールドカップは前大会優勝と言うことでフランスは予選を免除されている。欧州からの出場枠は前回優勝のフランスを含み14.5となり、50チームが9つのグループに分かれて予選を戦った。フランスを除く13.5の出場枠は各グループの首位9チーム、そしてプレーオフが4.5チームである。この予選では2位チームの中の優劣と言う考え方が消えた。9つの2位のうち1チームはアジア4位とプレーオフ、それ以外の8チームはホームアンドアウエー方式でのプレーオフとなった。

■2位チームが同条件でプレーオフに臨んだ2004年欧州選手権予選

 2004年欧州選手権予選が最も完成された大会形式であったと言えよう。2002年ワールドカップ予選は2位チームの中の優劣はなくなったが、1チームだけがアジア4位と戦うと言う不公平なところは残った。この予選は50チームが参加、15の出場枠を争った。5チームずつの10のグループに分かれ、首位は本大会出場、2位となった10チームがプレーオフを戦った。
 2006年ワールドカップ予選はこれまで最多の51チームが参加したが、欧州からの出場枠は開催国のドイツを含めて14にとどまった。8つのグループに分かれ、首位8チームに加え、最も成績のよい2位チーム2チームが本大会出場、そしてそれ以外の6チームがプレーオフでドイツ行きを決めた。フランスはこの予選は対戦相手に恵まれ、首位突破をしている。

■プレーオフがなかった2008年欧州選手権予選

 2008年欧州選手権予選では、フランスはイタリア、スコットランドと同じグループとなり大苦戦、ようやく2位に滑り込んだ。しかしながらこの予選は1994年ワールドカップ予選以前の大会方式に戻り、各グループの上位2チームが本大会出場権を得た。 このようにフランスは決定戦以外のプレーオフを今まで経験しておらず、初めてホームアンドアウエー方式のプレーオフを経験するのである。(続く)

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