第1030回 アイルランドとのプレーオフ(4) 敵地ダブリンでフランスが先勝

■欧州相手のプレーオフでは勝ち抜いたことがない両チーム

 11月14日、いよいよプレーオフ第1戦の日がやってきた。本連載でこれまで紹介してきたとおり、フランスはワールドカップ予選で2回プレーオフを経験しているが、2回とも同点となった相手と雌雄を決するための中立地での試合で、2回とも敗れている。
 一方のアイルランドであるが、これまでにワールドカップ予選では5回プレーオフを経験している。このうち、同点となってプレーオフを行ったのは1966年大会予選でスペイン相手にパリ近郊のコロンブ競技場で行っているだけで、それ以外の4回のプレーオフは1990年代半ば以降に定着したグループ2位同士の戦いである。しかしながらこの4回のプレーオフでアイルランドが勝ち抜いたのは2002年大会予選のイランとの戦いだけであり、欧州相手の残り3回のプレーオフではいずれも敗れている。
 つまり、フランスもアイルランドも欧州のチーム相手のプレーオフでは一度も勝ちぬいたことがなく、今回のプレーオフでワールドカップ行のチケットを獲得すれば、伝説のイレブンとして名を残すことになるのである。

■名将ジョバンニ・トラパットーニ効果、無敗のアイルランド

 紹介が遅れたが、アイルランド代表の監督はイタリア人のジョバンニ・トラパットーニである。日本の皆様には1985年にユベントスを率いインターコンチネンタルカップを獲得した監督として印象深いであろう。ACミランの名選手として2度リーグ優勝、監督としてはACミラン、ユベントス、インテル・ミラノ、フィオレンチーナで指揮をとり、国内では7度のリーグ優勝を経験している、欧州三大カップすべてで頂点に立っている。そしてイタリア代表を率いて2002年のワールドカップにも出場している。2008年からアイルランド代表監督を務め、南アフリカ行きを狙っている。
 アイルランドはグループ8でイタリアに次ぐ2位であったが、イタリアとは2戦2分と互角の成績、10試合で4勝6分と無敗でイタリア人監督のトラパットーニ効果があったといえるだろう。ちなみに首位のイタリアも7勝3分と無敗である。この両国以外に、今回の欧州予選で無敗だったのはオランダ、スペイン、そしてドイツだけであり、ビッグネームの中にアイルランドも名を連ねている。

■ラグビー代表にあやかりたいサッカー代表

 ダブリンでの舞台はこれまでラグビーやサッカーのフランス代表が何度も戦ってきたランズダウン・ロードではない。ランズダウン・ロードが改修中のため、本来はゲーリック・フットボールの競技場であるクローク・パークである。
 ラグビーのフランス代表は2007年からこの競技場で試合をしている。同年2月11日の対戦では終了間際のバンサン・クレルクの逆転トライで勝利する。アイルランドからクローク・パークで勝ち星を奪った最初のチームとなった。そしてラグビーのフランス代表は前日にトゥールーズで世界王者の南アフリカに逆転勝ちしている。そのラグビー代表にサッカー代表もあやかりたいところである。

■秘蔵っ子ニコラ・アネルカ、劣勢の中で決勝点

 さて、フランス代表は4-2-3-1システムに戻り、メンバーはほぼ予想通りとなった。GKはウーゴ・ロリス、DFは右にバカリ・サーニャ、左にパトリス・エブラ、中央はウィリアム・ギャラスとエリック・アビダル、守備的MFは右がラッサナ・ディアラ、左がアルー・ディアラ、そして攻撃的MFは中央にヨアン・グルクフ、右はニコラ・アネルカ、左にティエリー・アンリ。そして1トップはアンドレ・ピエール・ジニャックである。負傷でフランク・リベリーが外れていることを除けばベストメンバーであることは間違いない。
 試合はホームのアイルランドが終始優勢に進める。第1GKとなったロリスが好守を見せる。フランスは11分のジニャックのゴールはオフサイドの判定、28分にはアイルランドが決定的なチャンスを外す。アイルランド優位のままハーフタイムとなる。後半になってもフランスのピンチは続き、ロリスの活躍ばかりが目立つ。しかし、この試合唯一の得点はあっけなく決まった。ラッサナ・ディアラ、グルクフとつなぎ、グルクフが右サイドのアネルカへパス。これをアネルカがシュートする。アイルランドのストッパーの足に当たり、さらにそれがゴールポストに当たり、内側にコースを変えてゴールイン。レイモン・ドメネク監督の秘蔵っ子であるアネルカは十分にその信頼にこたえた。
 フランスは、試合内容は今一つであったが、敵地での先勝により、優位な立場で18日の第2戦を迎えることができるのである。(続く)

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