第1034回 ワールドカップ予選回顧 (2) 9月中にプレーオフ出場に照準を合わせたフランス

■2か月の間に5試合戦ったフランスの後半戦

 前回の本連載では、今回の長丁場の予選の中でリトアニア戦との連戦がターニングポイントとなり、8月に行ったフェロー諸島とのアウエーの試合もそれに次いで大きな意味を持つことを紹介した。このフェロー諸島戦は3つにステージを分けると第2ステージの最初の試合、つまり後半戦最初の試合である。後半戦は8月12日のフェロー諸島戦で始まり、9月5日にルーマニア、9日にセルビア、10月10日にフェロー諸島、14日にオーストリアとわずか2か月の間に5試合も行っている。前半戦の5試合は昨年9月に始まり4月まで半年以上かかっており、前半戦と後半戦では試合間隔に大きな違いがあり、後半戦は短期決戦である。それだけにフェロー諸島戦の勝利には大きな意味があった。

■試合消化のスケジュールの大きな違いのあったフランスとセルビア

 9月初めにはルーマニアとセルビアという東欧勢の連戦があった。予選組み合わせの段階でフランスは第1シード、ルーマニアが第2シード、セルビアが第3シードであった。ルーマニアは予選開始の段階では最大のライバルと目されたが、低空飛行が続き、フランスのライバルではなくなってしまった。
 グループ7を快走したのはセルビアであった。セルビアは昨年9月にフランスに敗れたものの、それ以外の試合は全て勝利し、しかも試合消化が早いこともあり、6月の段階で7試合消化、6勝1敗と言う成績であった。ちなみに試合消化が遅かったフランスは、同時点でまだ5試合しか消化しておらず、3勝1分1敗であった。引き分けや負けによる「落とした勝ち点」を比較すればセルビアとフランスがこのグループ7でリーダーでありその差はわずか2であるが、通常の勝ちや引き分けによって獲得した勝ち点で比較すると8も差があったのである。今予選のグループ7はこのようにチームによって試合消化のテンポに大きな差があったことも忘れてはならない。

■ルーマニア、セルビアと連続ドロー、首位が遠のいたフランス

 フランスにとって6試合目が8月12日のフェロー諸島戦、そして7試合目が9月5日のルーマニア戦であった。セルビアは9月9日のフランス戦まで試合がなく、両チームの直接対決はどちらのチームにとっても8試合目となる。フェロー諸島を下したフランスは、ホームのルーマニア戦で勝利すれば、セルビアと勝ち点2差で直接対決を迎えるという「首位奪還」の希望を持つことができた。しかし、ルーマニア戦は先制したものの、痛恨のオウンゴールで追いつかれて引き分けに終わり、勝ち点4差で直接対決を迎えることになってしまった。
 ベオグラードでのセルビア-フランス戦も引き分けに終わり、勝ち点4の差で10月の2試合を迎えることになった。9月のルーマニア、セルビアとの連続ドローで、フランスの首位突破の可能性はほぼ消えてしまい、選手もファンは2位でのプレーオフを覚悟したのである。フランスのグループ7での最終成績は首位セルビアと勝ち点でわずか1であったが、フランスはすでに9月の段階で首位をあきらめ、プレーオフ出場を受け入れていたのである。

■プレーオフ出場を受け入れた時期の異なるフランスとアイルランド

 最後にプレーオフでフランスと戦うことになるアイルランドはグループ8でイタリアに次ぐ2位であったが、最終的な勝ち点はイタリアが24、アイルランドが18、そして3位のブルガリアが14であった。アイルランドは、フランスとは逆で、9月を迎えた段階で試合消化数が首位イタリアよりも多く、イタリアが勝ち点14(4勝2分)、アイルランドは勝ち点13(3勝4分)と接戦であった。アイルランドは、最終戦の前の試合、すなわち10月10日にイタリアとホームで直接対決が残っており、この直接対決がドローに終わるまで首位突破の希望を持ち続けていたのである。フランスもアイルランドも2位確定は10月10日と同日であったが、すでに9月の段階でフランスがプレーオフを受け入れていたのに対し、アイルランドは10月のダブリンでの直接対決で失意のドローになってプレーオフ出場を意識したという違いもプレーオフの結果に影響を与えたのではないだろうか。(続く)

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