第1035回 ワールドカップ予選回顧 (3) 運に恵まれてプレーオフを突破
■最終節を待たず順位が確定したセルビアとフランス
フランスは、9月初めのルーマニアとセルビアと言う東欧勢との連戦を、いずれも引き分けで終えた。東欧勢との天王山で連勝できなかったフランスは、この段階ですでにプレーオフ出場が最も想定されるシナリオであると覚悟した。
10月には各チーム2試合ずつ試合を行う。フランスと首位セルビアとの勝ち点の差は4、フランスはホームのフェロー諸島戦とオーストリア戦を残していたが、セルビアが10日に行われるホームのルーマニア戦あるいは14日に行われるリトアニア戦で少なくとも1勝すれば、セルビアの首位が確定する。第2シードであり、昨年の欧州選手権でフランスと引き分けた実績を持つルーマニアは、前半こそ無失点に押さえたが、後半一気に崩れ、0-5と大敗する。フランスはフェロー諸島に5-0と大勝したが、セルビアがルーマニアに勝利したために、残り1試合の段階で首位セルビア、2位フランスと順位が確定したのである
■メンバーを大幅に入れ替えながら最終戦はオーストリアを一蹴
したがって、最終戦は消化試合となった。フェロー諸島戦が行われたのは今大会唯一の国内の地方都市での試合となったギャンガン、そして最終戦は開幕戦で苦汁をなめさせられたオーストリアが相手である。オーストリア戦には開幕戦のリベンジを果たしたいところである。相手のオーストリアもすでに予選落ちが決まっていることから、立ち上がりこそ攻めたものの、その後はフランスの一方的な試合となる。オーストリアに対し1点を許したものの、攻撃陣の活躍により、3-1と快勝したのである。
なお、この試合で、レイモン・ドメネク監督はメンバーをがらりと変え、フェロー諸島戦と比べると先発メンバー11人のうち9人を入れ替えた。このオーストリア戦に先発したメンバーのうち、アイルランドとのプレーオフの第1戦にも連続して先発したメンバーは3人だけである。結果的にはプレーオフを意識して控えメンバーをテストしたと言うよりは過密日程の中で連戦となったメンバーに休養を与える形になった
このように8月のフェロー諸島戦から始まり、10月のオーストリア戦で終わった第2ステージは3勝2分と言う成績であったが、最後の2試合は大量点を奪って勝利したのである。
■第2戦の延長戦だけ優勢だったフランス
そして第3ステージに相当するのがアイルランドとのプレーオフである。すでにティエリー・アンリの手を使ったアシストによるウィリアム・ギャラスの決勝ゴールに関しては様々なところで議論され、再試合も行われない。明らかな誤審であると言えるが、これもサッカーである。ただ、筆者としてはあの疑惑のハンドによるゴールが認められなくても、結局はフランスが南アフリカ行きを獲得したのではないかと信じている
その根拠は試合の流れである。スタッド・ド・フランスでの試合、前後半の90分間は圧倒的にアイルランドが優勢であった。そして延長戦に入ると一転してフランスが猛攻勢をかける展開となった。事実ギャラスのゴールの直前にもオフサイドで認められなかったが、フランスのシドニー・ゴブーがゴールネットを揺らす。ダブリンでの第1戦、そしてサンドニでも第2戦と180分間攻め続けたアイルランドであったが、プレーオフのプレーオフとも言うべき延長戦で足が止まった。ギャラスが得点をあげてから延長戦の終了までロスタイムを入れると20分近くあり、もしもあのゴールを認められなくてもフランスが決勝点を奪った可能性は高い。
■スーパーセーブを連発したウーゴ・ロリス
さらに、もしも延長前後半で決着が付かなかった場合はPK戦で南アフリカ行きを決めることになるが、フランスのGKはウーゴ・ロリスである。ロリスは4日前のダブリンでの第1戦でも鬼神の如くスーパーセーブを連発し、この第2戦でもロビー・キーンのゴール以外は得点を許していない。PK戦はそれまでの戦いの中でシュートを多く浴びて、セーブし続けてきたGKが有利である。シュートをことごとくはじいてきたロリスが、PK戦でもアイルランドのPKをはじき返したであろうと想像するに難くない
そして何よりもこのプレーオフでフランスには運があった。第1戦もとても勝てる内容ではなく、唯一の得点はラッキーなゴールであった。そして第2戦も90分の間に2点目を奪われなかったのが不思議なくらいであり、まさに運に恵まれた結果となったのである。(続く)