第1036回 ワールドカップ予選回顧 (4) 最後まで泣かされた「もう1人のストッパー」
■唯一の敗戦となったオーストリア戦
これまでの3回の連載ではフランス及びライバルチームの勝敗と言う観点からワールドカップ予選の振り返ってみたが、今回からはこの12試合を戦った選手たちにスポットを当てたい。
予選12試合に出場した選手はのべ28人にのぼる。まず、第1戦となったオーストリア戦、この試合は1-3と敗れてしまうが、結果的にはこの試合がフランスにとって唯一の負け試合となった。最終的には首位のセルビアは2敗しており、フランスはグループ7の中で最も負けが少ないチームであった。
ちなみに欧州予選を通じて1敗以下だったのは、無敗のスペイン、イタリア、ドイツ、アイルランドの4チームに加え、1敗のデンマーク、ポルトガル、スイス、イングランド、ウクライナ、フランスの6チームという合計10チームであり、このうちアイルランドとウクライナ以外が本大会出場権を獲得している。
■全失点に絡んだウィリアム・ギャラス、フィリップ・メクセスの両ストッパー
また、フランスが1試合で、3点取られたのもこの試合だけであり、12試合を通じての総失点が9であることを考えれば、例外的な試合であったと言えるであろう。この試合のDFラインは左にパトリス・エブラ、右にバカリ・サーニャ、ストッパーがウィリアム・ギャラス、フィリップ・メクセスである。ところが、メクセスは8分にオウンゴール、そしてギャラスは41分にクリアミスしたボールが失点につながり、さらにメクセスは81分に相手の選手をペナルティエリア内で倒してしまい、PKを与えてしまい、ストッパーの2人が全失点に絡んでしまった。
この4人のその後の処遇は大きく分かれることとなる。ギャラスはその後も継続的に試合に出場し、12試合中11試合に出場した。最終戦となったアイルランドとのプレーオフの第2戦、ティエリー・アンリのハンドばかりが話題になるが、ゴールを決めたのはアンリのハンドではなく、ギャラスのヘッドであった。また2人のサイドDFのエブラ、サーニャとも11試合に出場している。
■オーストリア戦以降は予選出場ゼロのメクセス
ところが、メクセスだけはその後の予選では1試合も起用されなかった。メクセスは親善試合では昨年11月19日のウルグアイ戦、年が明けて2月11日のアルゼンチン戦、6月5日のトルコ戦の3試合には起用されている。メクセスは、オーストリアのウィーンでの悪夢のような敗戦以降、親善試合は5試合しか行われていない親善試合のうち3試合に出場しているのに対し、ワールドカップ予選は11試合行われながら1試合も出場していないのである。
明らかにレイモン・ドメネク監督のメクセスの起用方法には疑問を感じる。メクセス自身がドメネク監督の下ではプレーしたくない、と言うのも無理はないであろう。そして、メクセスを親善試合要員と考えているのであるならば、貴重な親善試合の機会をワールドカップ出場権のかかった予選への準備として活用することを、代表監督が放棄しているとしか思えない。
■最後まで固定できなかったギャラス以外のストッパー
ウィーンでの敗戦の4日後にセルビアとの試合が行われたが、ドメネク監督はオーストリア戦の先発メンバーではストッパーのメクセスに代えてエリック・アビダルを起用する。セルビア戦は勝利したものの、新たに先発となったアビダルは本職ではないストッパーであったこともあり、予選全体を通じて5試合の出場にとどまった。しかもアビダルはアイルランドとのプレーオフの第1戦で負傷し、大一番の第2戦には出場していない。2人のストッパーのうち、ギャラスがほぼ不動の位置を占めたが、もう1人のストッパーをなかなか固定することができなかった。
アビダル以外にストッパーとして出場した選手を紹介すると、セバスチャン・スキラッチが4試合出場(うち先発は3試合)、ジュリアン・エスクーデが4試合出場、ジャン・アラン・ブームソンは1試合の出場にとどまった。この中で、第2ステージの最初に相当するフェロー諸島戦から出場し始めたエスクーデはアイルランドとの第2戦は序盤に負傷し、スキラッチにポストを譲っている。このようにフランスは、最後の最後まで「もう1人のストッパー」には泣かされたのである。(続く)