第1039回 ワールドカップ予選回顧 (7) 対照的なニコラ・アネルカとアンドレ・ピエール・ジニャック
■19歳で代表デビュー、欧州選手権で優勝したニコラ・アネルカ
前回の本連載では第2ステージ、すなわち予選リーグの後半戦の初戦であるフェロー諸島戦で本予選初先発となった選手が4人おり、ウーゴ・ロリスとジュリアン・エスクーデという守備陣の2人を紹介した。
残る2人はニコラ・アネルカとアンドレ・ピエール・ジニャックである。この2人のフランス代表歴は対照的である。今年の3月に30歳の誕生日を迎えたアネルカがフランス代表にデビューしたのは1998年4月のことである。当時19歳のアネルカは、地元開催のワールドカップを2か月後に控えたスウェーデンとの親善試合で代表にデビューした。しかしながらワールドカップのメンバーには選出されず、世界一メンバーになることはできなかった。代表2試合目となったのはワールドカップ後に行われた2000年欧州選手権予選のロシア戦である。この試合でアネルカは先制点をあげ、フランスの勝利に貢献する。そして今でも語り草となっているのが1999年2月にロンドンのウェンブリー競技場で行われたイングランドとの親善試合である。当時イングランドのアーセナルに所属していたアネルカはロンドンっ子の前でゴールを決め、フランスのウェンブリーでの初勝利をもたらしたのである。そして2000年の欧州選手権にも出場、決勝のピッチに立つことはできなかったが、決勝戦以外の5試合に出場、欧州一メンバーとなったのである。翌年に韓国と日本で行われたコンフェデレーションズカップにも出場し、優勝している。
■ワールドカップには3大会連続して落選したアネルカ
ところが、ワールドカップには縁はなく、2002年の韓国・日本大会、2006年のドイツ大会と連続してメンバーから外れている。欧州選手権については2004年大会はメンバーから外れたが、2008年大会は予選、本大会とも出場している。このようにワールドカップに縁のないアネルカが初めてワールドカップに関係する試合に出場したのが、今回のワールドカップ予選の第1戦のオーストリア戦の終盤の79分のことだったのである。つまり、アネルカはフランス代表にデビューしてから10年以上かけ、ワールドカップと名の付く試合に出場したのである。このオーストリア戦はアネルカにとって52試合目の代表戦であった。そしてその4日後のセルビア戦も後半開始から出場し、63分にはヨアン・グルクフとのワンツーからゴールを決めている。
続くルーマニア戦、リトアニア戦では出番がなかったが、アウエーのフェロー諸島戦からホームのフェロー諸島戦まで4試合連続フル出場、消化試合となったオーストリア線は欠場したが、アイルランドとのプレーオフは2試合ともフル出場、ダブリンでの決勝ゴールは値千金である。
■デビュー戦で決勝アシストしたアンドレ・ピエール・ジニャック
一方のジニャックは今年の3月にリトアニア戦で代表に初めて招集された。23歳の春である。4月1日の第2戦、ホームのスタッド・ド・フランスでの試合、後半の69分にデビューする。アネルカとは大きく異なり代表デビュー戦がワールドカップ予選である。ジニャックはこの試合でフランク・リベリーの決勝点をアシストし、アネルカ同様、衝撃的なデビューである。2008-09のフランスリーグでは独走で得点王に輝き、6月に行われたナイジェリアとトルコとの親善試合ではいずれも途中から交代出場している。
■出場10試合中8試合がワールドカップ予選のジニャック
そしてフェロー諸島戦では先発メンバーに選出され、代表初先発が守りを固めた相手とのアウエーゲームとなった。ジニャックは守りを固められた苦しい試合展開の中で代表初ゴールを決めている。強さとうまさを兼ね備えたジニャックはこのフェロー諸島戦のゴールで信頼を勝ち取る。
続くルーマニア戦、セルビア戦でも先発メンバーとなり、オーストリア戦こそ交代出場であったが、それ以外の試合はすべて先発出場、結局第2ステージのアウエーのフェロー諸島戦からスタッド・ド・フランスでのプレーオフのアイルランド戦まで7試合すべてに出場している唯一の選手である。4月に代表にデビューしたギニャックは、これまでに10試合出場しているが、実にそのうち8試合はワールドカップ予選である。そして3ゴールを挙げているが、これらはすべてワールドカップ予選の試合でのゴールなのである。
このようにワールドカップに関しては対照的な2人が、後半戦以降のフランスの攻撃を支えたのである。(続く)