第1048回 2010年ワールドカップ展望 (1) 10月のFIFAランキングで第1シードを決定

 ワールドカップイヤーの年頭に当たり、読者の皆様の引き続きのご愛読をよろしくお願いいたします。

■短期決戦では重要なシード順

 いよいよ2010年がやってきた。政治経済の分野では方向性が定まらなかった2000年から2009年までの10年が過ぎ、2010年代がやってきた。そして今年は南アフリカでワールドカップが開催される。昨年11月にフランスがプレーオフを勝ち抜いて本大会出場を決め、12月の初旬に組み合わせが決定してから、たくさんの読者の皆さまからお便りをいただいた。新春特集として今回からこのワールドカップを展望してみたい。
 まずは、組み合わせ抽選から紹介しなければならない。今回の組み合わせ抽選会は12月4日に南アフリカのケープタウンで行われたが、その前のシード順の決定についてコメントしないわけにはいかないであろう。ワールドカップに限らず、組み合わせ抽選においてシード順は大きな影響をもたらす。特にワールドカップの場合、中立国において一回だけしか対戦しないリーグ戦、さらにチャンピオンズリーグなどのように試合と試合の間に所属クラブの試合があるわけではない。同じ4チームからなるグループリーグとはいえ、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグが6試合の成績で決まるのに対し、ワールドカップや欧州選手権のグループリーグは3試合の成績で決まってしまう。同じ相手と1回しか対戦しないため、最初の対戦で相手の実力を探るような余裕はない。したがって、どのチームと対戦するかが非常に重要になってくる。そしてなるべく上位のシードに入ることにより、強豪国との対戦を避けたいというのはどの国も同じであろう。

■FIFAランキング上位7チームを第1シードに

 組み合わせ抽選に先立ってシードが発表された。今回も出場32か国が4つのシードに分けられた。まず第1シードは開催国の南アフリカを含む上位8か国である。前回の2006年大会で主催者のFIFAは欧州並びに南米の伝統国を選んだが、今回はFIFAランキングの上位国を機械的に選んだのである。ランキング上位国を機械的に選ぶというと定性的な主観ではなく定量的な客観性に基づいてシードが決定されたかにみえるが、決してそうではない。

■最新の11月ではなく10月のランキングを利用

 最新の11月発表のランキングではなく、その1月前の10月発表のランキングが利用されていることが指摘できる。
 10月発表のランキングは1位ブラジル、2位スペイン、3位オランダ、4位イタリア、5位ドイツ、6位アルゼンチン、7位イングランド、8位クロアチア、9位フランスとなる。1位のブラジルから7位のイングランド、それに開催国の南アフリカを加えた8か国が第1シードとなった。
 一方、11月発表のランキングは1位スペイン、2位ブラジル、3位オランダ、4位イタリア、5位ポルトガル、6位ドイツ、7位フランス、8位アルゼンチン、9位イングランドとなる。第1シードに入る資格のある上位7チームの顔ぶれはアルゼンチンとイングランドが圏外となり、ポルトガルとフランスがランクインする。ポルトガル、フランスともプレーオフでの成績が反映されて順位をあげた形になっている。

■好都合だった10月のランキング

 10月のランキングを利用したためにフランスは第1シードから外れてしまったが、これはアンリの疑惑のハンドに対する主催者のささやかな抵抗といぶかしがる論調も多いが、10月のランキングを利用した方が主催者にとって都合がよかったのである。
 それはこの第1シードの大陸別の分布である。10月のランキングでは欧州5、南米2、アフリカ1となる。一方、11月のランキングを利用すると欧州6、南米1、アフリカ1となる。実は、この第1シードの決定が第2シード以下の決定に大きく影響しており、第2シードはアジア(5か国)ならびに北中米カリブ海(3か国)、第3シードは第1シード以外のアフリカ(5か国)と南米(3か国)、そして第4シードは第1シード以外の欧州(8か国)となり、第2シード以下を大陸別に分散させることが容易になる。もしも11月発表のランキングを使用すると、第2シードは問題ないが、第3シードが1チーム多くなり、第4シードが1チーム少なくなる。
 前回大会も第2シード以下は大陸別に分けたが、欧州のチームが1チーム、中南米カリブ海並びにアジアから形成される第4シードに回った。これがセルビア・モンテネグロであり、アルゼンチン、オランダ、コートジボワールと同じ組に入り、死のグループとなったことは記憶に新しい。このような事態を回避するためにも10月のランキングが好都合だったのである。(続く)

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