第1117回 ウルグアイと再戦、今回もドロー(3) 釜山、サンドニに続き3試合連続のスコアレスドロー
■2008年11月19日に行われたの唯一の親善試合
ケープタウンのグリーンポイント競技場でキックオフされるフランスにとってのワールドカップの初戦の相手はウルグアイである。第1回ワールドカップの開催国であり、優勝国である。フランスとウルグアイの対戦歴であるが、これまでに5回対戦している。そのうち、親善試合は1試合だけであり、1924年のパリオリンピック、1966年と2002年のワールドカップ、1985年のインターコンチネンタルカップ(欧州選手権と南米選手権の勝者の戦い)、というように真剣勝負での対戦ばかりである。
唯一の親善試合は、2008年11月19日にサンドニで行われ、本連載第909回から第912回で紹介している。現段階でこの試合を振り返ってみると、興味深いことがわかる。この試合は今回のワールドカップ予選が始まったばかりの段階で行われ、次星合間で日程的に余裕があったため、選手をテストする機会に恵まれた。スティーブ・マンダンダから正GKの座を奪ったウーゴ・ロリスがこの試合で代表にデビューしている。また、今回のワールドカップで代表復帰なるかと期待されたパトリック・ビエイラも同年2月のスペイン戦を最後に負傷のため代表チームから離れていたが、この試合で9か月ぶりに復帰し、キャプテンマークを巻いて先発出場している。そして、この試合の後半には30歳で代表に初めて招集されたスティーブ・サビダンも後半になって交代出場し、ロリスとともに代表デビューを飾っている。
■ウーゴ・ロリスのデビュー戦に先発出場したパトリック・ビエイラ
このように注目選手3人が出場したが、サビダンはその後代表に招集されることはなかった。ビエイラは前半で退き、その後は翌年6月のナイジェリアとの親善試合まで出場することがなかった。またロリスもナイジェリア戦の直後に行われたトルコ戦まで出場機会がなかった。しかし、ビエイラがナイジェリア戦が実質的に最後の代表ユニフォームとなったのに対し、ロリスはトルコ戦以降、代表のレギュラーに定着している。
このように考えると当時32歳のビエイラ、30歳のサビダン、21歳のロリスが同じ試合に出場していたと言うことは驚くべき事実であろう。そしてこの親善試合は激しい試合となったがスコアレスドローとなっている。そしてその試合を最後にフランスはスコアレスドローを経験していない。
■アブー・ディアビを左サイドに起用
それから1年半、ワールドカップ本大会でウルグアイと戦う。準備の3試合でメンバーを固定したフランスであったが、メンバーを入れ替える。中盤の左サイドをフローラン・マルーダではなくアブー・ディアビを起用する。ディアビーは準備試合では3試合とも途中から交代出場をしている。コスタリカ戦と中国戦ではマルーダに代わって出場、チュニジア戦ではヨアン・グルクフに代わって出場している。
ワールドカップ初戦のメンバーを紹介すると、GKはスティーブ・マンダンダ、DFは右サイドにバカリ・サーニャ、中央にウィリアム・ギャラスとエリック・アビダル、左サイドはパトリス・エブラ、MFは3人で中央にジェレミー・トゥーララン、右にグルクフ、左にディアビーが入る。FWは中央にニコラ・アネルカ、両翼は右にシドニー・ゴブー、左はフランク・リベリーである。2年前の親善試合に先発した選手は7人である。
■8年前とは逆に数的優位に立つもスコアレスドロー
試合はフランスが優勢に攻め、特にディアビー-リベリーの左サイドからの攻撃が有効である。6分には左サイドのクロスがゴブーにわたるがこの絶好のチャンスをゴブーは逃してしまう。フランスは攻め続けるが、得点に結びつけることはできず、前半が終了する。
後半に入ってもフランスが優勢である状況は変わらないが、1トップのアネルカの動きがさえない。一方のウルグアイもスペインリーグで2回の得点王に輝いたディエゴ・フォルランとオランダリーグの昨年の得点王のルイス・スアレスの2トップは大会屈指の2トップであるが、こちらもなかなかチャンスをつくることができず、時計の針は進む。選手交代はウルグアイが先手を取ったが、63分に投入したニコラス・ロデイロが18分後には退場処分となる。8年前の釜山での戦いではティエリー・アンリが退場したが、今度はフランスが数的優位に立った。
フランスはアンリ、マルーダ、アンドレ・ピエール・ジニャックを投入するが、守りを固めるウルグアイの守備をこじ開けることはできず、得点はならなかった。このカード3試合連続でスコアレスドローに終わったのである。(この項、終わり)