第1118回 メキシコに完敗、剣が峰に(1) ワールドカップでメキシコを得意とするフランス

■評価の分かれるウルグアイ戦のスコアレスドロー

 2002年のワールドカップ韓日大会、2年前の親善試合に続き、ウルグアイとの戦いは今回もスコアレスドローに終わった。フランス代表にとってスコアレスドローは前回の親善試合以来2年ぶりのことである。
 大会初戦のスコアレスドローについて評価が分かれるところである。かつてはワールドカップの初戦は消極的な戦いが多く、ロースコアのドローと相場が決まっていた。しかしそれは本大会の出場チームが実力の均衡した16チームだった時代のことである。現在は32チームに拡大し、勝ち点を稼ぐところで稼いでおかなくてはならない。第1戦でのブレーキは致命的であるという見方がある。試合そのものも優勢に進めており、相手が1人退場して数的優位に立ったにもかかわらず引き分けという結果に不満を持つファンは少なくない。
 一方、伝統的な価値観の持ち主は初戦のスコアレスドローに対してそう悲観的ではない。大会前にレキップ紙が各グループリーグの順位を予想したが、グループAをトップで通過するのはウルグアイ、2位がフランス、3位はメキシコ、4位が南アフリカというものであった。南米予選で5位に終わり、大陸間プレーオフを経由して出場してきたウルグアイよりもフランスの評価が低いところが、現在の代表チームの力を反映している。さらにフランスは準備試合の3試合で評価を下げている。下り坂のチームが本大会の初戦を引き分けに持ち込めば上々であると考えることもできる。

■北中米カリブ海の雄メキシコ

 いずれの考え方が正しいかは第2戦のメキシコ戦で答えが出る。メキシコは5大会連続14回目の出場であり、米国と並んで北中米カリブ海地区の本大会出場の常連国となった。北中米カリブ海予選では序盤につまずき、終盤は白星を重ねたが、米国に勝ち点で1及ばず2位に終わった。しかし、3位までが本大会出場、4位が南米予選5位チームとのプレーオフという条件を考えれば、楽々と関門をクリアしている。開催国の南アフリカは予選が免除されているが、ワールドカップ予選を兼ねたアフリカ選手権予選で敗退している。このように考えるとグループAの4チームの中で本大会までの道のりが順調だったのはメキシコだけである。

■本大会で自国開催のベスト8が最高

 メキシコは古豪と言われているが、所属している地域に恵まれており、本大会出場は当然だが本大会では勝てない、というイメージをお持ちの読者の方も少なくないであろう。確かに、初めてグループリーグを突破したのは1970年の自国開催の大会、これまでの最高成績が1970年と1986年の自国開催時のベスト8、そして過去4大会連続でグループリーグを突破しながら決勝トーナメント初戦で敗退しているという成績を見れば、その通りであろう。本連載の読者の皆様は昨年までのチャンピオンズリーグのリヨンの姿を連想される方も少なくないであろう。

■第1回大会の開幕戦以来2勝1分とフランスが優勢

 そしてメキシコに対してフランスは優越感を持ってきた。メキシコはフランスとともに記念すべき第1回大会の開幕戦に出場したチームである。1930年7月13日、ウルグアイの首都モンテビデオでの開幕戦でジュール・リメの母国の対戦相手になったのがメキシコだった。当時ペニャロールの本拠地であり、今は亡きポシトス競技場に集まった観衆はわずか1000人、しかし、サッカーの歴史の証人となった観客の前で、遠来のフランスは圧倒的に攻める。フランスは4-1とメキシコを一蹴して、ワールドカップの提唱国としてのメンツを保つ。ところがフランスはグループリーグでアルゼンチン、チリに連敗し、家路につくことになる。  フランスとメキシコは1954年のスイス大会でも同じグループリーグに入る。1954年6月19日にジュネーブで行われた試合でフランスは3-2と勝利するがフランスもメキシコもグループリーグを突破することはできなかった。
 フランスはこの大会が4回目の出場であったが、ここまでのワールドカップの戦績は3勝5敗である。3勝のうち2勝がメキシコ相手、そして残りの1勝は地元開催時のベルギー戦だったのである。
 そしてフランス史上最悪のワールドカップと言われる1966年イングランド大会でも両者は対戦したが、ドローに終わっており、ワールドカップの歴史の中でフランスはメキシコに2勝1分と相性がいいのである。(続く)

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