第1278回 2014年ワールドカップ予選組み合わせ(2) 王者スペイン、難敵ベラルーシのいるグループI
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■アジアに対する政治力を駆使することができないフランス
前回の本連載ではアジア地区のワールドカップ予選の開始が他大陸よりも1年早まったため、欧州を含む全大陸のワールドカップ予選の組み合わせ抽選会が前回よりも4か月早く行われたことを紹介した。昨年の秋以降、FIFAのランキングを着実にアップさせているフランスであるが、この予選抽選会のシード決定の算定根拠となる7月27日現在のランキングは世界15位、欧州内10位であり、9つの第1シードの椅子をつかむことができなかった。
従来のフランスであるならば、政治力を駆使してアジアのワールドカップ予選の時期の変更など難しいことではなかったであろう。しかし、現在のフランスとアジアの政治経済的な関係を考慮すれば難しい。現在のニコラ・サルコジ大統領は本年3月11日の東日本大震災後、最初に菅直人首相を訪問し、サルコジ-菅ラインは強固な結束を誇る。主要国の中で原子力発電への依存度の高い両国トップの強いつながりは今後の世界のエネルギー政策を左右する。
さらに事故直後に運転を再開した中国の新型新幹線もフランスの技術を多用しており、新幹線ビジネスをアジアで広げていきたいフランス財界の思惑も感じられる。
いずれにせよ、日程の変更はユーロアジアインスティチュートのジャック・グラブローの承認なしにはできるものではなく、グラブローとドミニク・ストロス・カーンの関係を考慮すればきわめて難しいことである。
■14年ぶりに第1シードから外れたフランス
そして、7月30日、ブラジルのリオデジャネイロで抽選会が行われた。第1シードから外れたフランスは第2シードの筆頭となる。フランスがワールドカップや欧州選手権の予選で第1シードに入ることができなかったのは2000年の欧州選手権予選以来14年ぶりのことである。この時は過去のワールドカップと欧州選手権の予選の成績でシード順をつけたが、フランスは直近の1998年のワールドカップ予選を戦っていないことからポイントを積み上げることができず、第1シードに入ることができなかったのであり、今回とは事情が違う。
■下位シードの中で避けたい国々
第1シードはスペイン、オランダ、ドイツ、イングランド、ポルトガル、イタリア、クロアチア、ノルウェー、ギリシャであり、この中の1チームと同じ組になる。第2シードはフランス以外にモンテネグロ、ロシア、スウェーデン、デンマーク、スロベニア、トルコ、セルビア、スロバキアであり、顔を合わせることはない。第3シードで避けたい相手はスイス、アイルランド、ベラルーシ、ウクライナなどは避けたい相手であり、第4シードにはブルガリア、ルーマニア、ポーランドなどの東欧勢やスコットランドなどの中堅国が名を連ねている。
■ロナウドの呪い、王者スペインと同じ組に
さて、抽選会であるが、元ブラジル代表のロナウドがくじを引いた。ロナウドと言えば、1998年にフランスで開催されたワールドカップは準決勝まで大活躍しながら、決勝戦は直前に体調を崩し、出場はしたものの満足な動きができず、フランスに優勝を譲ってしまう。大会MVPに選ばれながら不本意なワールドカップとなったはずである。そのロナウドの呪いか、フランスは非常に厳しい組に入ってしまった。欧州王者であり、世界王者であるスペインと同じグループIに入ってしまった。第3シードからはベラルーシ、現在戦っている欧州選手権予選でも同組であるが、フランスは1分1敗と分が悪い。フランスが2度以上対戦しながら1度も勝っていない唯一の国である。この両チーム相手には苦戦は免れないだろう。
第4シードからはグルジア、2008年ワールドカップ予選で戦い、2勝している。第5シードはフィンランド、これまで6戦士フランスが6戦全勝と相性のいい相手である。ただし、これまで2回ワールドカップ予選で同じ組に入っているが、1962年大会も1994年大会もフランスは本大会出場を逃している。
そして、グループIは唯一の5チームからなるグループである。第1シードのスペインは強敵であるが、本大会に直接出場するためには倒さなくてはならない相手である。第2シードとして臨んだ2000年欧州選手権予選でフランスは大苦戦し、最終戦で首位突破を決め、本大会では見事優勝した。さて、今回はどうなるであろうか。(この項、終わり)