第1448回 新生フランスのワールドカップ予選始まる(3) アブー・ディアビの一撃でフィンランドに勝利
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ヘルシンキにたどり着けなかった60年間のオリンピック
ディディエ・デシャン監督率いる新しいフランス代表のワールドカップ初戦はヘルシンキでのフィンランド戦である。9月3日に23人のメンバーはクレールフォンテーヌに集結し、練習を開始する。試合前日となる6日に、朝食をとったあと、フランスチームは3時間のフライトでヘルシンキに移動する。到着後、デシャン監督は記者会見に臨み、夜は試合会場であるオリンピックスタジアムで選手たちは練習を行う。
今年はオリンピックイヤー、ロンドンでの熱気もまだ冷めない中でワールドカップ予選の開幕を迎えたが、60年前の1952年、このヘルシンキでオリンピックが開催されている。日本の皆様にとっては16年ぶりに復帰したオリンピックとして感慨もひとしおであろうが、ソ連が初出場、冷戦下で行われ、選手村も東側陣営と西側陣営に分かれ2つ設営され、平和の祭典はいびつな形で行われた。このヘルシンキオリンピックでのサッカー競技は広域にわたって行われた。1948年のロンドンオリンピックにおけるサッカー競技もロンドン以外の都市でも開催されたが、ポーツマス、ブライトンなどロンドンから近い南イングランドの都市で開催されたが、ヘルシンキオリンピックでは国全体で行われ、この流れが現在まで続いていると言えよう。フランスも参加したが、予備戦でラハティで東側陣営のポーランドと対戦する。先制したものの、1-2と逆転負け、開会式前に姿を消してしまった。この夏、初訪日したヤン・ゴンターがポーランドで活躍する現在からは考えられないであろう。
■新たに招集した選手を多く起用したディディエ・デシャン監督
そのような因縁のあるヘルシンキでの試合、注目の先発メンバーであるが、4-3-3システムとなった。GKはウーゴ・ロリス、DFは右にアントニー・レベイエール、中央にマプー・ヤンガ・エムビワとママドゥ・サコ、左はパトリス・エブラ、MFは3人、中央にオ・アントニオ・マブーバ、右にアブー・ディアビ、左はヨアン・カバイエ、FWも3人、中央にカリム・ベンゼマ、右に、ジェレミー・メネス、左にフランク・リベリーである。
この11人の先発メンバーのうち、ウルグアイ戦では招集されていなかったのが、レベイエール、カバイエ、ディアビ、メネスの4人である。前回の本連載で紹介したとおりデシャン監督は新たなメンバーを6人呼び寄せたが、そのうち4人を先発で起用したのである。このあたり、早速デシャン監督は自らのカラーを出してきたといえるであろう。そして所属チーム別ではメネスとサコの2人が選ばれたパリサンジェルマンが最多となった。
■守備を固めたフィンランドにてこずるフランス
フランスのキックオフで始まったこの試合、フランスは立ち上がりからフィンランドに対して攻勢をかける。それに対してフィンランドは引いて守り、スピードのあるカウンターで反撃するという展開になった。フランスはサイドからの攻撃を仕掛けるがなかなか前線に効果的な形でつながらない。そして14分にはフィンランドのエースのカスペア・ハマライネンにペナルティエリアの中でヤンガ・エムビワが接触し、地元ファンはペナルティを主張するが、ノーファウル。直後の15分にはカバイエがハマライネンの足を引っ掛ける形になり、イエローカードと穏やかではない時間帯になる。
■カリム・ベンゼマ、アブー・ディアビのスピードのあるドリブルから決勝点
このゆっくりとした悪い流れを断ち切ったのが21分のフランスのプレーである。最前線のベンゼマが下がってきてセンターサークル付近でボールを受ける。本来はストライカーのベンゼマであるが、そこからスピードに乗ったドリブルでフィンランドの守備陣を1人、2人と抜き去る。そしてオーバーラップしてベンゼマの前方を走っていたのがディアビである。ベンゼマは前方のディアビにパス、ディアビ―はベンゼマに勝るとも劣らぬスピードでフィンランドの守備陣を2人抜き、シュートを放ち、ゴールネットを揺らす。
この1点が決勝点となり、デシャン監督はタイトルマッチ初戦を1-0というスコアで勝利したのである。(続く)