第1463回 スペイン戦、敵地で貴重なドロー(1) 日本戦の敗戦から立ち直れるか、フランス
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■シュート数では新体制で最多、能力不足が生んだ失点
日本との親善試合でまさかの敗戦となったフランス、スタッド・ド・フランスでの敗戦は2年前のベラルーシ戦以来のことでありショックは大きい。また試合内容的にもディディエ・デシャン監督となってからの4試合の中ではシュート数では一番圧倒していた試合である。シュート数と試合結果を参考までに紹介すると8月のウルグアイ戦は10-5(試合結果は0‐0)、9月のフィンランド戦は7-5(1-0)、ベラルーシ戦は13-7(3-1)であり、日本戦のシュート数はフランスの23本に対し、日本は6本、4試合の中では一番多くのシュートを放ちながらの無得点は情けない限りである。
そして失点は試合終盤のフランスのCKから生まれた。CKのこぼれ球を日本のストッパーに拾われそのままロングゲインを許す。さらに右サイドのクロスからの得点のシーンも数的不利になっていたわけではない。戦術の問題というよりは選手個人の能力の問題であるといってもよいであろう。
■チャンスをいかせなかった若手たち
また、この日本戦では出場した17人のうち9人は代表試合出場数が一桁と、代表での経験の少ない選手を多数起用したが、彼らがその力を見せることはできなかった。この試合で目立ったのは前半にシュートの嵐を浴びせたカリム・ベンゼマ、試合終盤に途中出場してきて、ドリブルで日本守備陣を混乱させたフランク・リベリー、左サイドからテンポのいい攻撃を仕掛けたマチュー・バルブエナといずれも代表経験を積んだ選手ばかりであった。この日、スタッド・ド・フランスでプレーした選手は「黒いイレブン」としてファンの記憶に残り、ディディエ・デシャン監督の書き込むメンバーリストからは外されることになるであろう。
■フランスらしさを発揮できないスペインとの戦い
そして次に待ち受けているのがアウエーでのスペイン戦である。2年前のワールドカップのチャンピオンにしてこの夏の欧州王者、世界最強チームであることは間違いない。そして今回の欧州選手権の際にも紹介したが、このところの親善試合でも連敗続きであり、欧州選手権の準々決勝で敗れ、現在3連敗中である。そしてフランスはボール支配率では優位に立ち、数多くのシュートを放って得点に結びつけるというパターンが基本である。日本戦もこのパターンであったが、ゴールネットを揺らした回数が相手が多かっただけである。そしてフランスよりも世界ランキングで上位のチームは10チーム以上あるが、ランキングが格上の相手であってもフランスはこのプレースタイルを貫いてきた。
しかし、そのプレースタイルが通用しないのがこのスペインである。スペインにはボール支配率で大きくフランスは劣り、ゲームを支配され、フランスはフランスらしくプレーをすることができない。最近のスペイン戦は2008年の親善試合は0-1、2010年の親善試合は0-2とスコアそのものはそれほど開いていないが、フランスらしい試合展開ができなかったということで、惨敗のイメージが強い。
■就任5試合目で正念場を迎えるディディエ・デシャン監督
したがって、デシャン監督にとっては就任5試合目で早くも正念場を迎えることになった。ここで思い出すのが1990年ワールドカップ予選である。シーズン第1戦のチェコスロバキアとの親善試合は引き分け、予選の第1戦ではノルウェーに勝利したものの、第2戦でキプロスと引き分け、辞任に追い込まれている。途中であまりにもチームの状態が思わしくないためにイングランドのアーセナルと異例の親善試合を行ったが、プレミアリーグ発足前のイングランドの単独クラブに敗れている。
今回のスペイン戦の結果によってはデシャン監督の立場が危うくなる可能性も否定できない。自らも現役時代にスペインと5回戦い、4勝1分と負けなしの新指揮官にとってマドリッドの対戦は負けられない1戦となったのである。(続く)