第1601回 ワールドカップ予選でグルジア、ベラルーシと対戦(5) ベラルーシとゴメリで対戦
一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■対戦3試合目でようやくフランスが初勝利したベラルーシ
ワールドカップ予選でプレーオフ出場に回るグループ2位が濃厚なフランス、前回の本連載で紹介した通り、深刻な得点欠乏症に悩まされている。このままでいくと、スペインに次ぐグループ2位で迎えるであろうプレーオフに向けて心もとないものがある。
そして9月の連戦の2試合目の相手はベラルーシである。ベラルーシは初顔合わせとなった2010年9月3日にスタッド・ド・フランスで行われた2012年欧州選手権予選で0-1と敗れ、翌年6月3日にベラルーシのミンスクで行われた試合でも1-1のドロー。この時点でフランスが過去2戦以上対戦した国の中で唯一勝利したことのない国であった。しかし、昨年9月11日のスタッド・ド・フランスでのワールドカップ予選で3-1と快勝、ようやく初勝利をあげている。
■今回のワールドカップ予選では苦戦し最下位のベラルーシ
ベラルーシは今回のワールドカップ予選では苦戦し、グルジア、フランス、スペイン相手に3連敗し、4試合目となる昨年10月16日のホームのグルジア戦で初勝利をあげたが、今年になってからは6月に2試合行い、フィンランドにアウエーで敗れ、ホームで引き分け、1勝1分4敗の勝ち点4で最下位である。現在世界ランキングは73位、フランスがグルジアと引き分けた9月6日にはワールドカップ予選の試合はなく、世界ランキング135位のキルギスタンと親善試合を行い、3-1と勝利している。
フランスの世界ランキングは23位であり、自力がフランスが上であるのは明らかであるが、フランスのこのところの試合内容を見ると楽観視はできない。
■ベラルーシ第二の都市ゴメリ
そしてこの試合が行われるのは首都ミンスクではなく、ゴメリである。ゴメリにはFCゴメリというクラブがあり、ベラルーシリーグでは好成績を残している。FCゴメリは1999年以降、UEFAカップ、チャンピオンズリーグの予備戦、インタートトカップに出場しているが、本大会に出場したのは2002-03シーズンのUEFAカップだけであり、1回戦でドイツのシャルケ04に1-4、0-4と連敗している。そしてこれまでこれらの大会ではフランスのクラブとの対戦経験はない。すなわち、フランス代表はこの人口50万のベラルーシ第二の都市をフランスのトップレベルのチームとして初めて訪問したチームであろう。
■チェルノブイリ原発事故の影響を受けたゴメリ
ゴメリはベラルーシ第二の都市としてではなく、むしろ1986年のチェルノブイリの原発事故の被害を受けた都市としてご存じの読者の方が多いであろう。事故当時はソ連であったが、ソ連の解体に伴いウクライナになったチェルノブイリ、この原発事故の影響を大きく受けているのは北西にあるベラルーシであり、人口の2割が放射能の汚染地域に住んでいると言われている。その中でもチェルノブイリに近い南東部のゴメリ州は放射能汚染のひどい地域である。
放射能の影響についてもフランス側は十分に調査したうえで、試合前日の9日に現地入りする。グルジア戦は試合の前々日に現地入りしており、コンディション作りに若干の不安の残るスケジュールであるが、ピッチに立つ選手にすべては託された。
ベラルーシは第二次世界大戦ではドイツ軍とソ連軍の戦いの戦場として多くの死傷者を出した悲劇の地である。そして1986年のチェルノブイリの原発事故と思い歴史を背負った国である。そのような国だからこそ、代表チームに対する思いは強い。本連載第1148回でも紹介した通り、ベラルーシ代表の観客動員は平均3万人、欧州で代表チームの観客動員が多いのはイングランドやフランスなどの大国であるが、ベラルーシの代表チームの観客動員は中堅国の中では群を抜くと言えるであろう。通常は2年前にフランス代表も戦ったミンスクのディナモ競技場で試合を行うベラルーシ代表であるが、今回はゴメリでの試合である。ゴメリの中央競技場には満員の1万4000人の観客が集まったのである。(続く)