第1612回 プレーオフ見据えた10月の連戦(3) 18歳の新人、クルト・ズーマ
一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■サンテチエンヌの2人を追加招集
11月のプレーオフのための準備試合となった10月の連戦、結果を出すことよりも内容を求めたいディディエ・デシャン監督である。前々回の本連載では豪州戦、フィンランド戦に臨む23人のメンバーを紹介したが、その後負傷などにより離脱した選手と、新たに招集された選手がおり、総勢24人でこの2試合を乗り切り、11月決戦に挑むことになった。GKはミカエル・ランドローが外れ、ステファン・ルフィエが加わった。DFはバカリ・サーニャが離脱し、クルト・ズーマとロッド・ファンニが加わった。ルフィエとズーマはいずれもサンテチエンヌの選手である。ルフィエは代表出場1試合、ズーマは代表初招集である。
ルフィエが出場した1試合は南アフリカでのワールドカップ後に行われたノルウェーとの親善試合である。この時は南アフリカのワールドカップに出場した選手全員がメンバーから外れたためルフィエが出場した次第である。
■注目の若手ストッパー、クルト・ズーマ
またズーマは中央アフリカ人の両親を持つ18歳の選手であり、今年6月から7月にかけて行われたU-20ワールドカップの優勝メンバーである。中央アフリカがルーツというと日本の皆様は松本瑞樹を思い出されるであろう。アフリカの政情不安な国であり、ペルシャン通りの大使館には時として多くの中央アフリカ人が押し寄せる。リヨンで生を受けたズーマは14歳でサンテチエンヌの育成組織に入り、16歳でプロデビューする。この年代でプロになる天才少年というだけで珍しいが、ズーマが特異なのはストッパーという経験を必要とするポジションの選手であるということである。昨季はほぼ半分の18試合に出場、今季はさらなる期待がかかるが、10月末には19歳になる。19歳としてプレーオフという大一番に出場するためにも、この2試合での試運転は必要である。
■ベテランを外して戦う豪州
一方の豪州、日本の皆様はよくご存じの通り、ワールドカップ予選を勝ち抜き、来年のワールドカップに向けた準備を進めており、フランス戦の後に15日にはカナダとロンドン(イングランド)で対戦する。予選を戦っている時点からベテラン選手を多く含むチームであるが、今回のメンバーには40歳のマーク・シュウォーツァー、35歳のハリー・キューウェル、34歳のアーチー・トンプソンなどは入っていない。また、メンバーを発表してから2人の選手が負傷したが、補充は行わず、22人でフランス、カナダとの連戦に臨む。
■パルク・デ・プランスで6年ぶりのフランス代表の試合
そしてこの豪州戦はパルク・デ・プランスで行われる。1998年のワールドカップ開催に向けて同年1月にスタッド・ド・フランスが完成したが、それまではこのパルク・デ・プランスがフランスを代表するスタジアムであり、サッカーだけではなくラグビーでも代表チームが数多くの名勝負を繰り広げてきた。
1998年のワールドカップでこのパルク・デ・プランスは3位決定戦などが行われたが、フランスは試合をしていない。ワールドカップ後は代表の試合は1試合しか行われていない。フランス代表がワールドカップ後にただ1回だけここパルク・デ・プランスで試合をしたのは6年前の2007年9月12日の欧州選手権予選のスコットランド戦であり、1997年のイタリアとの親善試合以来10年ぶりの試合となった。この時はフランス国内でラグビーのワールドカップが開催されたため、スタッド・ド・フランスだけではなく国内の主要な競技場がラグビーの試合で使用されることになり、パルク・デ・プランスでの試合となった。ほぼ満員の4万人の観衆が見守る中フランスは一方的に攻めたものの、得点をあげることができず、逆に後半にロングパスから失点し、0-1と敗れている。フランスは1997年6月のイタリア戦では引き分けており、パルク・デ・プランスで最後に勝利したのは1997年4月2日のスウェーデン戦であり、パリのファンに16年半ぶりの勝利を見せることができるだろうか。(続く)