第1616回 プレーオフ見据えた10月の連戦(7) フィンランド代表から引退するティーヌ・タイニオ

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■過去7戦7勝と相性のいいフィンランドとの予選最終戦

 前回の本連載で紹介した通り、奇跡に向けてフランスのイレブンはフィンランド戦に全力を尽くすことになる。フランスはスタッド・ド・フランスにフィンランドを迎える。
 フィンランドは予選の順位こそ3位であり、3月22日にはアウエーでスペインと引き分けているが、フランスはフィンランドと過去7回戦い、フランスが7勝している。フランスが過去の対戦で全勝している国は少なくないが、7戦7勝が最高であり、続いてフェロー諸島戦の6戦6勝となっている。また直近の5試合はフランスが完封勝利しており、通算の得点は15点、一方失点は3点とフランスが圧倒している。また7試合のうち2試合が親善試合、5試合はワールドカップ予選であり、1962年チリ大会、1994年米国大会、そして今回の予選で対戦している。
 気になるのはチリ大会予選、米国大会予選でフランスはホーム、アウエーとも勝利しているが、本大会に出場できなかったということである。そしてフィンランドの世界ランキングは56位で4日前にフランスが6-0と大勝した豪州の53位よりも低い。6-0というような大差は無理かもしれないが、ベラルーシ戦の後半から息を吹き返したフランスが豪州戦についで快勝をしてくれるのではないかとファンは期待する。

■予選最終戦に臨むフランスの先発メンバー

 さて、このフィンランド戦の先発メンバーであるが、GKはウーゴ・ロリス、DFは右からマチュー・ドビュッシー、ローラン・コシエルニー、エリック・アビダル、パトリス・エブラ、守備的MFは右にポール・ポグバ、左にブレーズ・マツイディ、攻撃的MFは右にサミール・ナスリ、中央にマチュー・バルブエナ、左にフランク・リベリーと並び、FWは1トップでオリビエ・ジルーである。
 快勝した豪州戦の先発メンバーと比べると、右のストッパーにラファエル・バランに代えてコシエルニー、守備的MFでヨアン・グルクフに代えてマツイディ、攻撃的MFのロイック・レミーの代わりにバルブエナを入れて中央で起用し、ナスリが右サイドにシフトするだけで先発11人中8人は豪州戦でも先発している。予選最終戦であるが、今回の予選8試合すべてに出場している選手はロリス、リベリー、バルブエナの3人だけである。そしてやはり1トップはジルーを起用する。ジルーはベラルーシ戦、豪州戦についで3試合連続の先発出場である。この3試合に先発出場しているのは他にはロリス、アビダル、リベリーだけであり、ジルーに予選終盤の攻撃を託すディディエ・デシャン監督の思いは強いであろう。

■フィンランドサッカーの顔、ティーヌ・タイニオ

 一方のフィンランドはフランス国内で試合をするのは実に16年ぶりのことである。1996年のイングランドでの欧州選手権を控えたフランスはストラスブールにフィンランドと対戦している。その翌年に17歳のフィンランド人のサッカー選手がフランスにやってきた。それがこの試合でフィンランドの主将を務めるティーヌ・タイニオである。タイニオは16歳でフィンランドのハカとプロ契約、UEFAカップにも出場しており、若き才能に名将ギ・ルーが目をつけてオセールにやってきた。オセールでは最初の4年間は試合出場の機会が少なかったが、次第に出場機会も増え、2003年と2005年にはフランスカップ獲得メンバーになっている。オセールには8シーズン在籍し、2004-05シーズン終了後にイングランドのトットナム・ホットスパーに移籍し、その後、オランダのアヤックス・アムステルダム、さらには米国のレッドブル・ニューヨークでも活躍しているが、今季16年ぶりに母国に戻り、HJKヘルシンキに所属している。タイニオのキャリアの中でオセールでの8年間は非常に大きな意味を持つであろう。

■代表での最後の試合でついにフランスと対戦

 フィンランド代表にはオセール時代の1998年の初めに入り、これまで60試合に出場しており、ヤリ・リトマネンの後を継ぐフィンランドサッカーの顔となった。しかし、フランス戦に出場したことはなく、1998年6月5日にヘルシンキで行われた親善試合、昨年9月7日の予選と2回のチャンスがあったがいずれの試合にも出場していない。そして代表61試合目にして初めてフランス戦に出場するが、実はこのフランス戦を最後に代表から引退する。試合前の選手紹介ではひときわ大きな拍手で迎えられたのである。(続く)

このページのTOPへ