第1644回 2014年ワールドカップ展望(1) 奇跡が2回続いたフランス
読者の皆様、あけましておめでとうございます。連載が始まって4回目のワールドカップイヤーを迎えることができました。3年前の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。本年もよろしくご愛読のほどお願いいたします。
■運を使い果たしたと思えたウクライナとのプレーオフ
いよいよワールドカップイヤーの2014年がやってきた。サッカーファンの皆様にとっては待ちに待った1年となるであろう。昨年11月にフランスがウクライナとのプレーオフで逆転勝ちして本大会出場を決め、12月初めに組み合わせ抽選会が行われてから、たくさんの読者の皆様からお便りをいただいた。今回から新春特集としてワールドカップを展望したい。 まず、フランスにとってはここまで2回の奇跡が続いたことである。まずはウクライナとのプレーオフ、キエフでの試合で0-2と完敗し、スタッド・ド・フランスでの試合は3-0と大逆転を演じたことである。多くのファンはフランスサッカーはこのウクライナとの第2戦ですべての運を使い果たし、組み合わせ抽選はかなり厳しい相手と同じグループに入ると覚悟したことであろう。
■厳しい組み合わせで敗退した1966年大会と1978年大会
これまでにフランスが厳しい組み合わせになったことと言えば、1966年大会のイングランド、ウルグアイ、メキシコ、1978年大会のアルゼンチン、イタリア、ハンガリーということが思い出される。いずれも開催国のグループに入り、イングランド大会はメキシコと引き分けただけで1分2敗の最下位、アルゼンチン大会は連敗してグループリーグ敗退が決まった後のハンガリー戦に勝利しただけの3位という結果に終わっている。
ただし、これらは本大会出場が16チームの時代のものであり、本大会出場が32チームとなった1998年大会以降は比較的恵まれた組み合わせ(1998年はデンマーク、サウジアラビア、南アフリカ、2002年はセネガル、ウルグアイ、デンマーク、2006年はスイス、トーゴ、韓国、2010年は南アフリカ、メキシコ、ウルグアイ)となっている。
■南米勢を避けたいポット1
しかし、今回は厳しい組み合わせになる可能性があった。1998年から2006年までの3大会ではフランスはシード国であるが、2010年は僅差でシードの座を逃し、今回はシード落ちしただけではなく、欧州からの出場国で最も低い位置におり、欧州のチームが各グループに2チーム入る可能性が高く、フランスと同じグループに欧州のチームが入った場合、確実にフランスより格上のチームとなる。
このように考えると、シード国に相当するポット1から南米勢と対戦することは避けたいところである。なぜならば、第4シードから第2シードに回る欧州勢と対戦する可能性が出てくるからである。例えばシード国であるポット1からブラジルあるいはアルゼンチン、シード国以外の欧州勢からポット2から回ってきたオランダあるいはイタリアと対戦するとなると、これはかなり厳しい組み合わせになる。そして、北中米カリブ海ならびにアジアからなるポット3から米国、日本というようなチームと対戦するとなると、グループリーグ突破はかなり高い目標となってしまう。
■ポット1はスイス、ポット2はエクアドル、ポット3はホンジュラス
ところが、実際にはシード国は南米勢ではなく、しかも欧州勢の中で一番力が劣るとみられるスイスが入る。ポット1がスイスというのは最高の札を引き当てたことになる。そしてポット2は南米ならびにアフリカ勢と対戦するわけであるが、今回もアフリカ勢はフランス語圏の国が3か国(コートジボワール、アルジェリア、カメルーン)、またそれ以外のガーナ、ナイジェリアと英語圏ではあるがフランスサッカーとなじみが深く、手の内を知られた相手が多い。南米勢も予選を3位で通過し、連続出場しているチリよりも、予選4位で2006年大会以来3回目の出場となるエクアドルとの対戦が望ましく、まさに最も組みしやすい相手との対戦となった。
そして北中米・カリブ海、アジアからなるポット3は米国以外はフランスよりも世界ランキングが劣るチームが並ぶ。ここは北中米・カリブ海予選3位のホンジュラスと対戦することになった。
スイス、エクアドル、ホンジュラスというグループEはフランスにとって2回目の奇跡となったのである。(続く)